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第58話:おっさん

前回のあらすじ!


魔剣の試し切りをしていたヒビキであったが、ライオスの仕込んだ火炎爆発ファイアエクスプロージョンの魔剣は至近距離で爆発を起こすのであった。もちろん、それに巻き込まれるヒビキ。そして、その爆発にはもう一人の人物が巻き込まれていた。

「こらてめぇジジイ! なんだあれは!?」

「失敗じゃったのう」

「じゃったのう……じゃねえぇぇぇえええ!!!」


 魔剣に込められた火炎爆発ファイアエクスプロージョンに巻き込まれた俺は意識を失っていたらしい。すぐにティナに回復魔法をかけてもらいなんとか回復する事ができた。若干まだ頭がフラフラしている最中にティナが回復魔法の料金の話をしてくるから費用はジジイに請求するように言っておく。

 ジジイが仕込んだ火炎爆発ファイアエクスプロージョンでも全く壊れることのなかったアモンの仕込み杖でジジイに斬りかかるが、それをムカつくほど華麗に避けるジジイ。どちらかというと俺のダメージが大きいために思うように剣が振れないというのが原因であるが、それにしたって最近はやたら近接戦闘のレベルが上がっている気がする。クソジジイめ、まだ進化するか。


「死ねぇぇぇぇえええ!!」

「ふははは、火炎爆発ファイアエクスプロージョン系統は魔剣にはむいておらんようじゃの」

「そのくらいは試しておけや、この野郎!」



 その後、ジジイが何故か一緒に巻き込まれた男を発見しており、俺の治療を終えたティナはついでに回復させようとした。費用はジジイ持ちで。ティナが治療キュアをかけるとすぐに男が意識を回復させる。


「ぎゃぁぁぁああああ! 気を付けろ! あれはカマイタチに違いな……ゴン! 痛ぁぁぁあああ!」


 だが、意識が戻った瞬間に起き上がった男と頭をぶつけてしまい、ティナもおっさんも悶絶している。あれは痛そうだ。


「痛いわね! この! 料金割り増しよ!」


 あ、そこはお金で解決するんだな……。ティナらしいと言えばらしい。


 しかし頭をかかえて悶絶する男を観察する。エコンの町で聞いてきたこの森の原住民のような格好をしているわけじゃなかった。火炎爆発ファイアエクスプロージョンでボロボロになっているが、普通の旅装である。だが、何故普通の格好のおっさんがここにいるのか? 顔はあんまり賢そうではない……。むしろ白髪交じりの髭の伸び具合から知性を感じ取るのは不可能だった。


「痛ててて……、いや、それどころじゃない! 気を付けろ! まだ近くにいるかもしれん!」


 おっさんが周囲を見渡してすぐに伏せだした。何かからの襲撃に怯えているかのようである。傍目に見るといきなり変な行動をしだした頭のおかしなおっさんにしか見えない。


「一体どうしたんじゃ?」


 財布から60ゼニーを取り出したジジイが聞いた。すぐにティナがそれを回収して数えている。


「あれはカマイタチだ! 風を操る恐ろしい魔物に違いない! ほら! 樹々がカマイタチの操る風で斬れてしまってる!」


 恐怖に慄くおっさんが俺が試し切りして作り上げた通路を指差して言う。


「他にも魔物がいるかもしれん! 俺は隠れてたはずなんだが、意識を失う前になにかの爆発に巻き込まれたんだ!」


 それも俺がかました火炎爆発ファイアエクスプロージョンの魔剣だな。うん。黙っておこう。


「おい、おっさん。ここにはもう何もいないぞ? とりあえず落ち着け」

「え? あ、ああ……意識を失っている間にいなくなったのか。 ふう、俺は運が良かったんだな……」


 60ゼニーを財布に入れたティナが何やらジト目で見てくるが無視だ。だいたいジジイの魔剣が全て悪い。俺も死にかけたし。


「それで、おっさんは誰なんだ? この辺の現地人には見えないが?」


 現地の人間は長髪を編み込んでいるそうだ。おっさんは短髪である。民族衣装も着ていない。



「俺か? 俺の名はエドガー。この近くの集落で薬師をやって……」

「「確保ぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!」」


 なんと、倒れていた人物は俺たちが探していた薬師だった。こうして森に入って早々に俺たちは目的の人物の捕獲に成功した。さあ帰ろう。


「待て待てぇ! いきなりなんだ!?」


「そんな事はどうでもいい。とりあえずエコンの町に帰るぞ。ローブもボロボロだし風呂に入ろう」

「あ、それは賛成ね。早く行きましょう。ライオス、転移テレポート唱えて」

「ワシを便利屋かなんかと思っとるな……」

「くおぉぉらぁぁぁ! 無視して話を進めるなぁぁぁ!」


 おっさんがうるさい。確保されたんだから大人しく連行されて欲しいものである。


「仕方ない。簡単に説明するから大人しくしろ。俺たちは薬の作成依頼をしに来た冒険者だ。運よくおっさんを見つけることができたから、これからエコンの町に帰って薬を作ってもらおうと思ってな」

「思ってなじゃないわい! なんで俺の意見を聞かずに話を進めるんだ!? 納得いかねば俺は薬を作ら…………いや、剣を向けるのはやめてくれませんかね? あの、まだ作らないとは言っていませんので、はい」


 俺の説得の甲斐があってか、快く了承していただけたようだ。それではこのままエコンの町に帰るとしようか。


「その前に、どの薬ですかね? 材料によっては作れないこともあるんで、はい。いや、本当に!」

「ああ、数か月前に出回った「エドガー薬」って汚い字で書いたラベルの貼ってあった秘薬だ」

「……ああ、あれでございますね。大変申し訳ありませんが材料がエコンの町にはないので……いや、本当ですって! だから剣をしまってくださ……痛いっ! 本当ですっ! この先の集落にいかないと! この森でしかとれない材料を使ってるからエコンの町では無理でっ! 痛いっ!」


 チクチクと仕込み杖で突いてみても同じ答えしか返ってこない。何回か試す。


「うーん、本当の事みたいだなあ」

「お前さんたまに容赦なくなるのう……」

「じゃあ、その集落とやらに行けば材料があるんだな?」

「ええ、それにその調合は私ではなくて娘にしかできませんから……だから剣をしまって下さっ! 痛いっ!」


 なんだよ、おっさんには調合できないのかよ。とりあえずはおっさんの娘がいるという集落へ案内させる事としよう。


「せっかく見つけたと思ったのに。まだこの森を進まなきゃならないのね。……で、その集落とやらはどっちなの?」


 ティナが言ったその言葉に、おっさんは目を合わせようとしない。


「えっと……その……」

「何よ?」



「私、ちょっと迷ってた最中だったわけでして……えへ」


 片目をつぶって笑うおっさんに多少殺意が芽生えたのは仕方ないだろうし、ティナに20ゼニー払ったから許してもらえると思う。


はーい、紬です! ごきげんよう!

投稿が遅くなって申し訳ござらんヌ。


そして、タイトル変更と第1~3話の改定も遅れに遅れまくっております。タイトル思い浮かばんヌ。


もうゆっくりでもいいよね。というか、無理。冬は忙しいの。オタスケー


紬でした。ごめんなさい。

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