第15話:再来
前回のあらすじ!
第1階層の地図はなんとか完成した! ギルドに戻って換金した一向であるが、2階ラウンジから争いの声が聞こえる。「おのれ貴様! 勝負だ!」 「なんじゃ、鬱陶しいのう」 明らかにどこかで聞いたことのあるジジイの声!
おいおい、こんなギルドのラウンジで揉め事を起こすなんて馬鹿な奴がいたのか。問題児だと認識されると誰からも声をかけられなくなるし、迷宮で出会った時も助けてもらえることもほとんどなくなる。百害あって一利なしなのである。
「あー、どこのバカだ?」
「鬱陶しいのう? なんじゃいきなり」
「貴様! 勝負だ! 勝負しろ!」
…………馬鹿の正体はジジイじゃねえか。知らない魔法使いにからまれている。何をやってるんだ?
「あわあわ、あっ! ヒビキさん、助けて!」
俺を見つけたミルトが駆け寄ってきた。本気を出したジジイに勝てる人類はいないから放っておけばいいよ。
「ミルトにふさわしいのはこの僕だ!」
…………ああ、なるほどね。それで回りの冒険者たちが止めに入ってないのか。面白そうだし、俺もとりあえず止めるのはやめておこう。
「なんじゃひよっこが、さてはお前さんモテたことないな?」
全然モテたことのないジジイがドヤ顔で言う。待て、ミルトの彼氏みたいに振る舞うのはやめろ。
「モテ……!? ひよっこだと? このコスタ=ウェリントンに向かってよくもそんな口が聞けるものだな!?」
相手はそこそこ有名な冒険者らしい。俺は知らないけど。
「めんどくさいからこっちに座ろうぜ」
「あ、僕はエールを」
「そんな、ライオスさんが!」
「いやいや、1人の女性を取り合って争う男たちを止めるなんて無粋な事、できるわけないじゃないか」
「ヒビキ、あなた言ってる事はそれなりですけど、顔に「面白そう」って書いてありますわよ?」
「あ、ばれた?」
すぐに運ばれてきたエールを飲みながら、ジジイと魔法使いのやり取りを眺める。さすがにジジイは流血沙汰のような馬鹿な真似はしないだろうが、止めに入る準備くらいはしといてやるか。
「無知なお前に教えてやる! 僕が巷でなんと呼ばれているか知っているのか?」
「知らんわい。弱い犬ほどよく吠えるのは知っとるがのう」
「このっ! よく聞け! このコスタ=ウェリントンは世間から「ゴダドールの再来」と呼ばれているのだ!」
ぶふぅ!!!!
「ちょっと、ヒビキ! 汚いでしょ!?」
口に含んだエールをおもいっきし吹いてしまった。腹が痛いが、ここで笑ってしまったら向こうに気づかれてしまって絡まれ…………ぶふふ。
「ひ、ヒビキ、ダメだよう…………ぶふふ」
ヨハンの腹もよじれている。あのジジイのなんとも言えない嫌そうな顔を見て、笑うなと言うほうが無理だ。だって、向こうでツアですら笑いをかみ殺してギルマス部屋に戻って行ったぞ? 部屋で思う存分笑うに違いない。
「おい、お前ら。何がそんなにおかしいんだ!?」
案の定、コスタに絡まれた俺たちはミルトのパーティーメンバーだということもすぐにばれて、事態は拗れに拗れた。
***
「そんで? 勝負の方法はおいておくとしても、勝ったらどうなるんだ?」
「そんな事は決まっている! 勝った方がミルトにふさわしいのだ!」
アホな事を謂っているけど、ミルトはどう思っているのだろうか? というよりも勝負しなきゃならんのか?
「あんな事を言ってるけど、どんな関係?」
完全に俺の後ろに隠れたミルトに聞く。すでに聞かなくてもだいたいの想像はつくけど。
「コスタは昔のパーティーメンバーなんですけど、何故か私に付きまとってくるんです! しつこい!」
めちゃ、嫌われている。
「君が発動させた愛の試練を乗り越えている最中に君をパーティーから追い出した馬鹿たちとはもう別れたんだ! もう一度僕とパーティーを組もう!」
「嫌です!」
2つ前のパーティーのメンバーにコスタはいたらしい。その時からミルトに付きまとっていたが、第2階層の罠に引っ掛かり、足を負傷した。回復役の僧侶では完全に治す事ができなかったために近くの都市の寺院まで治しに行ったとか。ミルトはその間にパーティーから抜けたようだ。その次のパーティーの時もコスタはミルトの所に現れたらしい。
「要はミルトが発動させた罠に巻き込まれたコスタの療養中に他のパーティーメンバーがミルトを解雇したって事か?」
「う、そういう事もありましたけど」
罠を発動させた事に関しては負い目があるらしい。だが、コスタはそうは思っていないみたいだぞ?
「しつこい男ね! うちのパーティーはすでに魔法使いは足りてるからお呼びではないわ!」
ちょっとティナ、挑発するのはやめなさい…………って、酔っぱらってる? なんでそういう話になるんだ?
「なんだと!? ではその魔法使いよりも僕の方が強いという事を証明できれば良いのか!?」
ちょっと待て。なんでそうなる? おかしいだろ?
「はあ、マジでへこむのう」
自分の再来と呼ばれている奴がこんな残念な奴だと知ってから、ジジイはテンションが低い。そして、逆にテンションが高いのが1人。
「ヒビキがあなたなんかに負けるわけないでしょう!?」
酒の入ったティナがコスタを挑発し続ける。もうやめて。
「表へ出たまえ!!」
ついにコスタの堪忍袋の緒が切れたらしい。プリプリと怒りながらギルドの外へ出ていった。
「おいジジイ」
「なんじゃい?」
「責任もって教育してこいや。ゴダドールの再来なんだろ?」
こうして変化を使って入れ替わったジジイがコスタの魔法を完封してしまったわけだが、そのやり方がエグすぎて見ていられなかった。だって、全部同じ魔法の威力倍増したやつで迎え撃つなんて、心を折りに行ったとしか思えない。
ブラックな上にちょっと特殊な職業の紬が通りますよ。
え? 仕事内容言うと特定されるかもしれんから言いませんよ。見つかったらメンドーだもん。ブラックとか言っちゃったし。
皆さん、お仕事頑張ってますか。それとも学業に勤しんでますかね。頑張る事は良いことですし、しっかり休むことも必要デスネーハハハ。
ちょっと仕事辞めたくなることがあるけど(週3くらいで)支えてくれる人もいて、なんとか頑張ってます。そして「ロブよろ」も皆さんのおかげで続けて書けてますよ! 感想ないとやめちゃ…………げふんげふん(´Д`)
最近の紬は仕事の事を話し出すとブラック紬に変わってしまうんでこのくらいにしときましょう。でわでわ