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第13話:物理系魔法と買い物

前回のあらすじ!


雷属性唯一にして最強破壊魔法「雷撃サンダー

杖が負荷に耐えられずに折れてしまうほどの威力である「物理炎フィジカルフレイム

様々な魔法が飛び交う中、第2階層の罠を突破した一向はとりあえずお約束で第4階層まで戻ることになってけれど、なんとか地上に脱出したのであった。

「ジジイは運動不足がたたって腰にきたために本日の迷宮探索は中止です。明日、再集合な」



 冒険者ギルドに集まった俺たちであったが、ジジイの腰が崩壊したために今日の本格的な探索は中止となった。


「運動不足とは、嘘おっしゃい! 昨日の戦闘でどこかを負傷したんでしょう!? 私に気を使わなくてもいいわ、すぐに治してあげるから! 1回20ゼニーで」


 ちょっと待って。ティナが当たり前のようにここにいるのは何故だろうか?


「いや、ティナは地上に出るまでのパーティーじゃなかったっけ?」

「そんな、あんな事までされて抜けられるわけないじゃないの!」


 あんな事というのはどんな事だ? それにギルドのど真ん中でそんなセリフを叫ぶというのはやめてほしんだが。ギルド内の冒険者たちがざわつくじゃねえか。昨日ティナを置き去りにした連中も気まずそうにこっち見てるんだぞ? あの後正式に謝罪はしてもらってけどさ。


「あー、サーベルマスティフの牙をあげた事を言ってるの?」

「当たり前です! あんな高価なものを何の見返りもなく!」


 ああ、それか。ヨハンはよく分かったな。一応はライオスのジジイがあげた形にはなったが、あれはパーティーの物という認識があったというわけか。だが、俺もジジイもヨハンも特に金には困っていない。ティナとミルトにあげるというのがもっとも良い選択肢だと思っていたけど、確かにあんな高価な物をポンと渡されると恐縮するかもしれん。だが、それとパーティーに残るというのは別な話のような……。


「次は尻尾も剥ぎ取りに行きましょう!」


 そっちか。このパーティーならば稼ぐことができると考えたわけね。はい。


 ティナの続投はまたジジイが帰ってきてから皆で相談するとして、今日は自由行動である。


「さてと、どうするかな」


 自由行動となれば、俺にはいきたいところがある。それは……。


「この杖はもう使えないから捨てよう」


 武器屋だ!




 ***




「で、なんでミルトも付いて来るんだ?」

「だって、私は特にやる事なくて暇なんですよ。プレゼントももらったし、当面は頑張って稼ぐ必要なんてありませんからね」


 俺が武器屋に行こうとしたらミルトが付いて来た。ヨハンはなにやらツアと打合せみたいなものがあると言ってたし、ティナはジジイの宿に押しかけて腰が治るまで回復魔法をかけるつもりらしい。1回20ゼニーで。


 サーベルマスティフの牙は換金していないらしい。代わりにオーガの角を換金していた。結構な額で売れたようで、ミルトの機嫌はすこぶる良い。いずれサーベルマスティフの牙も他の冒険者が狩って換金してしまって相場が崩れるまでに売りたいと言っている。ちなみにティナは即行で換金していた。


「まあ、いいけどよ」


 一人で行っても相談する相手もいなければ迷う事もあるかもしれない。ミルトと俺はルノワの町で数少ない武器屋へと歩いて行った。



「いらっしゃい」


 武器屋の店主はかなり無愛想だ。だが、サービスを求めているわけではない。問題は武器の質である。


「何か、お探しで?」

「ええ、杖を探して……ヒビキさん、そっちはハンマーのコーナーですよ?」

「え? いや、あの……」


 まずい。何も考えずにミルトと来てしまった。俺の物理フィジカルの原理を理解していないミルトにとって、俺が買いに来たのは杖だと思われてしまっている。どうしようか……。


「お兄さん、本当に魔法使い?」


 店主が俺の行動を不可解に思ったようだ。……これは使えるかもしれない。



「店主、俺がただの魔法使いじゃないと何故分かった?」

「……いや、どっちかっていうと戦士みたいな体格……」

「店主の言う通り、俺は一般的な魔法使いと違い特殊な魔法を主体として使っている」


 普通の魔法使いが初対面の店の店主にこんな話をするわけがないのだが、ミルトに嘘をつきとおすためにはこれしかない。


「それで、この前の戦闘でも魔力の他に特殊な力を流していた俺の杖が耐えきれなかったのだ」


 特殊でもなんでもないただの物理的な力なんだけど。


「は、はあ。そうですか」

「それでこれらのハンマーほどの耐久性のある杖というのは置いてないか? もしくはハンマーに杖の先端を取り付けるという事ができるのであれば最も良い。その場合は握りの部分を改良してくれたまえ」


 どちゃっと、きんちゃく袋を店主が頬杖ついていたカウンターの上に置く。中身が金であるのは商人であればすぐに分かるはずだ。


「は、はい、それはもううちの鍛冶職人であればなんでもござれでございますよ」


 金の力というのはすごい。おそらくはティナもこれに負けてしまったのだろう。だが、ある意味虚しさもあるものだ。


「ヒビキさん、なんかキャラが変わってません?」

「あ、おう。そうかもな」


 やばいやばい。変な魔法使いの役にのめりこみすぎた。とりあえず、ミルトに物理フィジカルの原理がバレるのは避けられたようだ。店主がカウンターの向こうからわざわざ回り込んでハンマーコーナーへと移動する。地味に速いところが逆に好感が持てない。


「ミルトにも何か買ってやろうか。あっちのアクセサリーコーナーから1個好きなのを選んでいいぞ」


 反対側にちょっとした付属品のコーナーがあった。魔道具の類は置いてないみたいだからそんなに高いものもない。あれだったらミルトへのプレゼント的に買ってあげても不自然ではないだろう。追い払うにはちょうどいい。


「えっ、本当ですか!? やったぁ!」


 嬉々としてアクセサリーコーナーへと行くミルト。その間に俺は店主と話がある。


「店主、できるだけ耐久力の高いハンマーにしてくれ」

「え? そんな魔法使いの方が持てないかもしれませんぜ?」

「大丈夫だ。耐久力が重要なんだ」


 ゴダドールの迷宮で手に入れたギガントハンマーを売らずに持っておくべきだった。あれが繰り出す物理フィジカル系魔法は最強に違いない。


「でしたら、このオリハルコンハンマー4600ゼニーとかいかがでしょう? 戦士の方でも持つのが大変なくらいですが、耐久力なら一級品です」

「よし、ではこれの先端に…・・・ああ、これでいいや。握りの部分を広げて杖っぽく、あ、ハンマーの握りの部分は残すんだ。これ重要。で、先端にこれをつけてくれ」

「え、こんなしょぼい魔石でいいんですか?」


 そりゃ、フレイムしか習得してない魔法使いに高価な魔石はもったいない。


「おう、これでいい」

「わ、分かりました。明日の朝までにはなんとか」

「では、朝に冒険者ギルドへ届けてくれ」

「かしこまりました」


 ハンマーの料金を払ってミルトの方へと行く。予算も特にオーバーしなかった。今後金がなくなったらヨハンかジジイにせびるとしよう。



「おーい、俺はもう決まったぞ?」

「あ、ヒビキさん、ちょっと相談に乗って下さいよ」

「ん? いいけど」


 俺はこの言葉を後から後悔せざるを得なかった。その後、ミルトは女の子特有の買い物を始めてしまい、俺はそれにつき合わされて1日中ルノワの町を荷物を持ちながら歩き回ることになったのである。




「あ、次はあの店に行きましょう!」

「……おう」


ネタ切れ!

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