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第七十四話 1ベリーも譲らない

 紫色の靄がかかった場所に私たちはゆらゆらしながら立っている。なんだか見覚えのある場所。いつも私たちが集まる、変な場所。でも今日はいつもと違うところが一つある。

 

「……えっと、お久しぶりです?」

「いつも会っているでしょ。鏡は見てる?」

「ええ、見てますよ。目やにがついていたら嫌ですし。大統領だからおめかししないと。大統領の恥は国家の恥ですよね」

「じゃあ、お久しぶりじゃないでしょ。折角だし言い直したら?」

「えっと、おはようございます?」

「おはよう」


 なぜか偉そうな過激派の私に説教され、仕方なく言い直す穏健派の私。大統領としての威厳は向こうの私の方がある気がする。なんだか納得いかないけど訳知りな感じなので仕方ない。ほら、私は所詮この世界からすると余所者だからね。でも常識があるのは私だからね。

 

「えっと、あそこにいる私はどうなってるんです?」


 私が指さすと、過激派の私も目をそちらに向ける。妙に可愛らしい装飾のベッドで、享楽派の私がすやすやと寝ている。すぴーすぴーと鼻息を立てているようだ。寝顔は特に苦しそうではなく、何やら楽しい夢でも見ているようだ。

 

「力を使いすぎて寝てるんじゃない? 知らないけど。私たちが止めたのに、無理をするからああなるんだよ」

「なるほど。やけに飛ばしてるなぁと思ったんですよ。全然止められませんでしたし」

「ブルーローズ州は私のお庭だから仕方ないよ。大事なお家もあるし。約束も破られたし相当ムカついたんじゃない?」

「…………」


 ベッドに近づいて、眠っている私の頬をツンツンしてみる。起きるそぶりはさっぱりない。相変わらず、すやすやと快眠している。起こすのがなんだか申し訳なく思うほどだ。でもこのまま寝てるままで良いとは思えないので、体を全力でゆすってみる。頬を抓ってみる。鼻をつまんでみる。瞼を強引に開けてみる。それでも私は起きなかった。

 

「これ、どうしたら起きるんですか?」

「さぁ、知らない。気が向いたらその内起きるだろうし、気が向かなかったら永遠に起きないんじゃない」

「えー」


 それじゃあまるで子供の遠足だ。遊ぶだけ遊んで、帰ってきたら眠いから不機嫌になる。そしてさっさとご飯も食べずに寝てしまう。


「ほら、私たちもそうだけど、子供は理不尽で残酷で気まぐれでしょう。またお家が危なくなったら、起きて死ぬほど暴れるだろうけど。今は疲れてるからさっぱり起きる気がないんでしょ。本当に知らないけど」

「私は子供じゃないですし。でも、このままだと色々とまずいんじゃないですか。だって」


 まだまだやることはあるんだから起きてもらわないとまずい。私が一人欠けたらどうなるか分からない。消えてはないけど、寝ているというのはまずい状態だと思う。ほら、三人だからバランスがとれていたのかもしれないし。一人欠けたら、どうなるのか。何かが変わっちゃうかもしれない。そうしたらどうなるんだろう。分からない。


「何も変わらない」

「え?」

「私は変わらない。私たちは、絶対に、何も、変わらない。だから、やるべきことは一つも変わらない。私は暴走したけど、そのおかげで、名前を深く刻むことができた。だから、何も問題はない。でしょ?」

「……そうですね」

「じゃあ、また、頑張ろう。まだまだやることは沢山ある。だから、私は頑張らないとね」


 そう言ってから、優しく微笑んでくる私。過激思考のくせに妙に優しいのが違和感がある。本当に大丈夫なのかは分からない。けれど私が言うんだから大丈夫なんだろう。これ以上は考えない方が良いに違いない。だって、私が言ってるんだから、気にしないのが一番だ。さぁ、起きて仕事にとりかかろう。時間は有限だからね。

 

 



 ストラスパール州、ストラスパール市の庁舎。オセール街道で大勝利を収めた私たちは、そのままの勢いでこの州都に一気に押し寄せた。プルメニアはほぼ留守番用の兵しか残してなかったみたいで、争うことなく入ることができた。市に入ったときは、それはもう大歓迎で、物語の英雄になったみたいで凄かったし楽しかった。というか、私たちの勝利を知った市民の皆さんが決起して、プルメニア兵に襲い掛かったからね。かなり厳しく弾圧してたみたいだから、一人たりとも降伏が許されることもなく、全員殺したって。その中にはさっさと降伏した州知事と市長さんも混ざってたとか。命を惜しんで敵に媚を売ってたら、同胞の憎しみを買う結果に。うーん、戦争って本当に怖いね。

 でも殺しちゃったから、後任をなんとかしなくちゃいけない。本当は選挙しなくちゃいけないけど、その時間がない。適当な人に臨時でお任せしないと。うん、困ったときのサンドラ頼みで相談の手紙を出そう。とりあえず全部片付いたら総選挙でもやろうか。国民議会と州知事、市長を選択する大型選挙だ。ほら、議員を大量に粛清したから今は定員割れしてるんだよね。でも選挙は準備も大変だろうし、お金もかかる。やっぱりサンドラに相談しなくちゃいけない。まだグルーテスを殺したことを怒ってるとは思うんだけど、最近は以前のように話せるときもある。やっぱり学生時代の友達は大事だね!

 偉そうに腕を組んでうんうんと頷いていると、書類を持った文官さんたちが話しかけてくる。今はアルストロさんたち難民大隊の士官、私付きの文官さん、あとはガンツェル中将たちが頭をひねって今後の方針を決めている最中だよ。

 

「ストラスパール州についてはほぼ取り返したと言って良いかと思います。各市に駐屯していた敵兵は、西ドリエンテからの増援部隊との合流を図っているようです」

「なるほど。じゃあ、それとの戦いになりますかね」

「おそらく。現在、市民から義勇兵を急ぎで募っております。先の勝利のおかげで皆戦意旺盛ですので、こちらも一万人程度までは増強できると思います。敵がどの程度の兵力でこちらに押し寄せるかは未知数ですが」

「ブルートから聞き出した情報によると、西ドリエンテにはヨッベン元帥率いる第三師団が残っており、その数は一万人とのこと。ただ、連中は皇帝の命に忠実に従い、今回の侵攻には加わりませんでした。それを考慮すると、対峙はしても本格的な戦いになるとは思えません」

「尋問したブルートの言葉が正しければ、まず間違いなく停戦の交渉を望んでくると思います。近い内に使者が来るはずです」

「その交渉は私がやるんですよね?」

「はい、ラファエロ外務大臣は首都で職務に当たっておりますので。……講和条件をどうなさるかは、閣下次第です」


 最後に発言した生真面目そうな文官さんが、こちらの顔色を窺うように視線を向けてくる。あー、この人は確か文官代表のクロムとかいう名前だったっけ。あの戦い以降、かなりビビりがちだけど仕事は真面目にやってくれる。若くて中々優秀な人なので今後も頑張ってほしい。というか、難民大隊の人以外は全員恐れの感情が見て取れるし。特にガンツェル中将はあからさますぎて面白い。からかい甲斐がある。よし、この戦いが終わったら旧ストラスパール所属の兵は、難民大隊にとりこんじゃおう。特に中将は見張ってないと、まーた逃げそうだし。……で、講和条件だっけ。さて、どうしようかな。

 

「向こうが約束を破ったんだから、こっちが吹っ掛けても良いですよね?」

「……それは、確かに仰る通りなのですが。プルメニアと停戦、そして相互不可侵協定を再締結することは、我らにとっても利益があります。向こうはそれを見越して足元を見てくるでしょう。たとえば、更に兵を増派し本格的な戦を再開する、等の脅しをかけてくることも考えられます」

「――は?」

「閣下のお怒りはとてもよく分かります。そして皇帝ルドルフと考えが異なるではないか、とお考えになるかもしれません。ですが、宰相ボルトスは生粋の反ローゼリアの人間。それを考えますと、すんなりと相互不可侵の再締結を持ち出してくるとは考えにくいです。……今回の戦では、極めて異例なことに捕虜がおりません。賠償金交渉については特に厳しいかと」


 クロムさんが厳しい表情で考えを述べてくれた。なるほどなるほど、『ローゼリアが死ぬほど気に食わないから結んだ協定を無視して攻め込んだ。でもうっかり全滅しちゃったから、皇帝の言う通りに停戦して相互不可侵をまた結んでもいいよ。でもでも賠償金とかは1ベリーも支払わないよ。だってお前の国まだ四方囲まれてるし、ずっとウチの相手している余裕ないじゃん。嫌ならウチはまだ戦ってもいいんだよなー、で、どうする?』みたいな感じかな。うん、予想してるだけで腸が死ぬほど煮えくり返ってきた。

 

「アルストロさんはどう思います? クロムさんと同意見ですか?」

「いえ、閣下が望まれる条件を申し渡せば良いかと! 我々難民大隊は閣下のお言葉をいつでもどこでもどのようなことでも完全に支持いたします!」

「あ、はい、分かりました。じゃあガンツェル中将はどう思います?」

「わ、私のような愚直な軍人には、政治のことは解りかねますな。は、はははは」

「相変わらずずるいですね、中将は。ま、いいです。後で考えをまとめて紙に書いておきますから。プルメニアの使者が来たら、交渉の場で決めた条件を伝えます」


 そう言うと、クロムさんたちが眉を顰める。

 

「お待ちください閣下。我々には予めお伝えいただかないと。条件について細かな検討が必要かと思いますが」

「全然大丈夫ですよ。ほら、私は大統領ですし。私は国民の代表ですから、何も問題ないんですよ。じゃあアルストロさん、ガンツェル中将」

「はっ!」

「な、なんでしょうか」

「これから三日以内に使者がこなかったら、西ドリエンテ州に攻め込みますから。義勇兵の編成と、進軍準備をお願いしますね」

「承知しました!」

「か、閣下! お待ちください!」


 二つ返事のアルストロさん、言葉を失うガンツェル中将。文官さんたちが口々に再考を求めてくるが、聞く耳持たない。外交は舐められたら終わりだって、誰かが言ってた気がするし。"私"が何をするか分からないと思わせたいし、実際何をしちゃうか分からない。という訳でやっぱり問題なし!

 

 

 ――そして二日後。プルメニア帝国から正式に使者がやってきた。西部方面軍の参謀のファルケン少佐だって。クロムさんに負けず劣らず真面目そう。そして目つきが鋭いから凄い頭がキレそう。流石は参謀だね。今の私の参謀って誰なんだろう。アルストロさんはアレだから、真面目なクロムさんかな? 

 

「ルドルフ陛下は、貴国との停戦、そして相互不可侵協定の再締結を望んでおられます。今回は一部の人間による暴走が引き起こした事態。そのことについて、陛下は正式に謝罪の意を表されました」

「分かりました。私は謝罪を受け入れます」

「ありがとうございます。それでは、講和の条件と捕虜の引き渡しについてですが――」

「じゃあ、私も停戦と協定再締結の条件をお伝えしますね」


 ファルケン少佐の言葉を遮り、私の考えをまとめた用紙をクロムさんに手渡し、それをファルケン少佐に渡してもらう。クロムさんたちのも用意したから皆でちゃんと条件を確認しようね。用紙を渡されたファルケン少佐、そしてクロムさんたち文官、ガンツェル中将の顔が引き攣る。アルストロさんはうんうんと満足そうに頷いている。

 

「な、なんでしょうか、これは」

「なんでしょうかもなにも、こちらが要求する条件ですよ。皇帝の謝罪は受け入れましたが、1ベリーたりとも譲歩する気はありません。よろしくお願いしますね」


 私の考えたストラスパール講和条約は以下の通り。

 1.両国は直ちに戦闘行為を停止し、大輪暦607年までの相互不可侵協定を再締結する。

 2.プルメニア帝国皇帝ルドルフは、ローゼリア国民に対して心からの謝罪を表明すること。

 3.今後プルメニア帝国が協定を破った場合、プルメニア帝国皇帝ルドルフは死をもって償うこと。

 4.プルメニア帝国は旧ローゼリア王国との講和条約で得た賠償金5千万ベリーを、ローゼリア国民に返還すること。

 5.プルメニア帝国はローゼリア共和国に対し、賠償金1億ベリーを支払うこと。

 6.プルメニア帝国はストラスパール州から完全に撤兵すること。また、西ドリエンテ州、東ドリエンテ州をローゼリア共和国に割譲すること。

 7.講和条約締結後1年間は東西ドリエンテ州住民の自由な移動を認める。1年経過後は同州居住民は全てローゼリア国民と見做す。

 

 まともな人がみたら噴飯、もしくは憤慨するに違いない条件の数々である。賠償金をたくさん頂戴、さらに西だけじゃなくて東ドリエンテも寄越せという強欲さ。うちのクロムさんたちも、おいおい、といった表情だし。でも外交は強くあたってからが勝負だからね。そもそも勝ったんだからここは引くところじゃない。完全に舐められて、ふざけた条約を結ばされたのが前の講和条約だしね。私の共和国は王国とは違うんです。なにしろ頭のおかしい人が多いからね!

 

「ふざけないでいただきたい! これでは我らの降伏を前提としたような条件ではないかッ!」

「嫌なら別にいいですよ。本当は許したくないみたいなんで。侵攻の首謀者がボルトス宰相だとしても、それを任命したのはいったい誰なんですかって話です。私はきっちり任命責任を問いますよ」


 自分のことは棚に上げて他人の任命責任は厳しく問う。だんだん立派な政治家になってきた気がする。この調子で頑張ろう!

 

「……このような条件、呑めるはずがない。しかし本当によろしいのですか? ここで決裂して戦争が続けば、貴国は更に不利になる。そうなれば、苦しむのはローゼリア国民ですが」

「あはは、いきなり攻めてきた国の人にとやかく言われたくありません。それより、捕虜でしたっけ? 残念ですけど一人もいないのであきらめてください」

「それは、いったい、どういうことでしょうか」

「約二万人くらいですか、正確な数は知りませんけど、全員殺しました。オセール街道で薔薇の養分になってますよ。講和条約がなったら、遺品や遺骨を回収してもらおうと思ってたんですけど」

「ぜ、全員、殺したと仰られるのですか? ど、どうやって」

「それは秘密ですよ。でも、本当です。どこを探してもいないものはいないんで、どうしようもありません。どうしても知りたいなら、頑張ってあの戦いの目撃者を探してみたらいいと思いますよ」

「…………」

「あ、そうそう、ルドルフ皇帝にお土産があったんです。講和条約の条件を伝える時に、一緒に持っていってくれますか」


 私が手をあげると、親衛隊が木箱を二つもって現れる。箱の底が赤錆びた色で汚らしい。そして、ファルケン少佐のテーブルの前に無造作に置き、箱を四方に開く。

 

「こ、これは!?」

「マグヌス中将とブルート中将です。その死に顔を皇帝に見せてあげてください。きっと良いお返事を貰えると思いますよ」

「……な、なんということを」


 顔を歪めたファルケン少佐が口を手で覆っている。ブルート中将はともかく、マグヌス中将の死に顔は私から見てもエグいからね。子供は無邪気で残酷だから仕方ないとはいえ、針パンは頭がおかしいと思うよ。私の仕業とはいえ、ニコニコしながら針をパンにぶっ刺してたから超怖かった。うっかり誰かが見てたら夢に出ちゃうね。夢に出ちゃうといえば、"私"が寝る前に、皇帝ルドルフさんと宰相ボルトスさんのところに遊びにいったみたいだよ。宰相ボルトスさんは容赦なしの針千本で、まぁご愁傷さまといった感じになりました。皇帝ルドルフさんは交渉しだいということで、執行猶予をつけてあげたみたい。でも脅しはしっかりかけたみたいで、反射するもの全部に幻覚で映りこんであげたらしい。たとえば、鏡とか、窓ガラスとか、宝石とか、顔を洗う時の水とかだね。視界の端に白髪の血まみれ呪い人形が常に映り込んで、だんだんと近くに来るんだって。超怖い。もう当分は目を瞑ったまま、布団から出られないんじゃないかな。

 

「じゃあ、今回の交渉はこれで終わりでいいですね? 1週間待って使者が来なければ、こちらの提案を拒否したと見做します。凄い怖くて恐ろしい不幸が皇帝ルドルフさんに襲い掛かるので楽しみにしていてください。――と、しっかりお伝えください」

「お、お待ちください。じょ、条件の折衝をもう少しだけさせていただきたい! き、貴国とて王党派、リリーア、カサブランカ、ヘザーランドに対処しなければならないはず! このような非常識な条件を吹っ掛けるのではなく、両国の利益のためにも正当な交渉をお願いしたいッ!」

「嫌です。最初に約束を破ったのはそっちで、私たちは勝ちました。約束を破ってむざむざと負けたくせに、何を偉そうなことを言っているんですか」

「しかし、こんな非常識な条件、陛下や宰相が呑むはずがないでしょう!」

「さっきから非常識非常識と失礼ですね。こうして交渉の場についてあげただけ、私は極めて常識的な穏健派です。他の私ならもうそっちの帝都まで全力で攻め込んでます。いいからさっさと皇帝に確認に行ってきてください。貴方の仕事はそれだけです。それでは、ごきげんよう」


 親衛隊の皆さんがファルケン少佐を強引に追い出し、交渉が打ち切られる。さて、これからまた忙しくなる。義勇兵の皆さんを再編して、西ドリエンテに向けての進軍用意だ。もし向こうが条件を蹴ってきたら、西ドリエンテに攻め込む姿勢を見せるだけでしばらく待機。ストラスパール州はしっかり取り返したので、私としては問題なし。そして多分、ルドルフ皇帝に超恐ろしい不幸が襲い掛かるので、それを待ってから進撃だ。相手の混乱を突くから有利な戦いが出来そうな気がする。不幸が何かは知らないけど、多分碌でもないことだよ。

 で、もし向こうが条件を吞んだなら万々歳の大勝利だ。相互不可侵協定再締結に多額の賠償金と大量の物資獲得、更にストラスパール州奪還に念願のドリエンテ州を丸々と分捕っちゃうおまけ付き。私は、鼻高々の超ドヤ顔で首都ベルに凱旋しちゃうというわけ。大統領直々に出張っての大勝利だから、国民の皆さんの士気も上がってしまうに違いない。立派な絵画に描かれて、後世の教科書に載っちゃうレベルだよ。首都凱旋のときは馬車に乗って皆に手を振っちゃおうかな。なんだか楽しそう。

 ちなみに過激派の私はなんとなく戦いたそうだけど疲れそうだし、私としては後者になると嬉しいな。まぁ、何にせよ1週間後だ。そのころにはカリア市攻略に向かったクローネ率いる第一軍団の結果も出ていると思う。皆、一生懸命頑張ってるかな?

 

 

 

 ――『ローゼリア国民新聞』より抜粋。

 プルメニア帝国皇帝ルドルフがストラスパール講和条約を承諾、ローゼリア共和国大勝利!

 今回の講和条約締結により、ローゼリア共和国は東西ドリエンテ州の獲得、多額の賠償金を獲得することに成功した。

 オセール街道の戦いでミツバ大統領率いるローゼリア軍に大敗したプルメニア軍は、西ドリエンテまでむざむざと撤退に追い込まれた。更にミツバ大統領が攻勢の意志を見せると、恐れをなしたプルメニア帝国皇帝ルドルフが停戦交渉をもちかけてきた。怒りに燃える我が国の強硬かつ正当な条件提示に対し、皇帝ルドルフは閣僚や将官から反発を受けるも、強く講和条約の妥結を指示したという。

 国内のミツバ大統領を支持する声は日に日に高まりつつあるが、今回の劣勢を覆しての大勝により、その地位は更に確固たるものとなったと言えよう。

 

 

 ――プルメニア帝国発表。

 我が国はローゼリア共和国と大輪暦607年までの相互不可侵協定を締結する。この協定を遵守することを、皇帝ルドルフは命をもって誓うと、プルメニア全国民に対し表明する。

 帝国宰相ボルトスが不慮の事故により死亡した。後任の宰相にはギルベルト、空席だった参謀総長にはエルンストが就任する。

現在大輪暦587年11月 ミツバ13歳、クローネ20歳、サンドラ20歳 です。

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