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第三十一話 戦争ごっこ

 今日はいよいよ冬期休暇前の一大イベントの日。いわゆる期末試験である。普通の学校のように士官学校でもやるそうなのだ。学生諸君は1月から12月までの頑張りの成果を教官殿へと披露するわけだ。で、私は6月入学なので半年もの遅れがある。一緒の試験というのは不公平な気もするけどそれも人生なので仕方がない。でもそこそこ頑張ったし、まぁまぁの成績は修められるだろう。だといいなという希望的観測。そしてこれが終われば待ちに待った冬期休暇、来年からは私たちには後輩ができてしまう。先輩になる感覚なんて微塵もないのが悲しいところだ。学生生活に馴染んだ感覚もそんなにないし。進級というと4月の桜のイメージが私にはあるが、この世界は1月が区切りだから仕方ない。かなりの違和感があるけど我慢しよう。郷に入れば郷に従えである。私は空気が読める女なのであった。


「第一組目、開始!」


 そんなこんなで実技試験のはじまりだ。面倒くさいのか歩兵科と合同である。教官たちが校庭の至る所に立ち、学生の短距離走、持久走、隊列行進、隊列突撃の結果を審査していく。騎兵科と魔術科は多分こんな泥臭いことはやってないと思う。だって、暇そうな貴族様たちがニヤニヤしながらこっちを眺めたり指をさしたりしている。あれは絶対に馬鹿にしていると思う。こういうところで恨みを買うと、いつか背後から撃ち殺されそうなものだけど。まぁ前線に出るのは私たち替えの利く下級兵だけか。


「高みの見物とは良い御身分さ。暇なら馬小屋で馬糞でも掃除してろってんだよね。連中はこんな泥臭い実技試験はないんだよ」

「ずるいですね」

「それが身分の差って奴だね。嫌なら変えるしかないさ」

「じゃあ前向きに検討します。人類皆平等思考ですね」

「はは、チビも偉大なるサンドラ教の仲間入りかな? あ、これいる?」

「遠慮なくいただきます」

「まぁ美味しくないけど、気分はまぎれるからね」


 栄養補給兼、口寂しさを紛らわすために塩飴を舐めているクローネ。差し出してくれたので、私はありがたく受け取る。うん、しょっぱくて美味しくない。夏にはいいけど、冬は寒いのでまだ汗もでていないし。ちなみに飴玉の摂取については自由が認められている。ニコレイナス所長が、体力と気力の維持に良いと太鼓判を押したからだ。でも残念なことにまずい。美味しいものなんて市民には回ってこない。それが現実である。悲しいね。私やクローネが純粋な市民かというと微妙だけど。


「そういえばチビは知ってるかな?」

「何がですか?」

「あそこで馬鹿面晒してる連中が、私たちの未来の指揮官様。隊を率いるのにどの兵科を学んだかなんて関係ないってことさ。軽く絶望できるよね」

「歩兵科とか砲兵科とか関係なくです?」

「大砲のことは砲兵に聞くのが一番と思うだろ? でもこの国で一番大事なのは身分なんだよ。その後に軍歴やらコネがついてくるかな!」

「……士気がビックリするほど低下しました。お気遣いいただきありがとうございます」

「あはは大事な試験前に悪かったね! って、言ってる私の気力も十分下がったよ。どうしてくれるんだ」


 ジト目のクローネ。不可抗力というやつである。


「私は全然知らないですよ。でも遺憾の意ぐらいなら表明してもいいです」

「難しい言葉遣いを知ってるんだね。じゃあ私もついでに表明しておこう」

「お前たち、馬鹿なことを言ってないで体力を温存しろ。どれだけ走らされるか聞いていなかったのか? 終了時間すら未定だというのに」


 サンドラが心底呆れている。後ろに並ぶ歩兵科の見知らぬ学生諸君も同じ表情。私たちは空気が読めていなかった。空気の読める女は返上しよう。


「遺憾の意どころか怒られましたよ」

「はは、確かに。まぁそうやって呆れていればいいのさ。私に余裕があるのは自信があるからだしね。とはいえ私がうっかり負けたらチビが謝ることにしようか」

「私も巻き添えにして喧嘩を売らないでください」


 私はクローネの腰をつつく。本当は脇腹を狙いたいのだが、小さいので仕方ない。そのクローネは私の頭に手を置いて、真剣な表情でつぶやく。


「戦いが始まれば身分や階級なんて関係ない。銃弾は容赦してくれないからね。殺して生き残って勝ち続ければいいだけ。実力と運がない奴は淘汰されていくんだ。席が空いたら身分は後からついてくる。私は自分の実力と幸運を信じ続けるだけさ」

「凄い自信ですね」

「信じるのはタダだからね。馬鹿にされて笑われるのには慣れてるし、駄目なら死ぬだけのことってね。……きっとチビも偉くなる。どんな状況でも最後の最後まで立ってそうだし」

「褒められているのか良く分かりませんね」


 そこで教官の笛の音。体力試験のスタートだ。最初は短距離走を10本。体力測定は制服、ブーツ、背負い鞄と長銃装備で行われる。全力で走ったらそれはもう息が切れるに違いない。なにしろ、ニコ所長の傑作品である参式長銃はとても重い。そのまま鈍器になるくらいに重い。でも魔薬粉を一々込めなくていいのは素晴らしい。ただし突撃するときは困ったことになりそうだ。というか現在進行形で困っています。移動力マイナス2の呪いだ。


「戦場の重みを感じますね」

「うん。私たちにもようやく責任感ってやつが出てきたのかな?」

「いえ、絶対にこの銃と荷物のせいです」


 ピッ、ピッという笛の合図で各期の学生がどんどん送り出されていく。そして次が私たちの番。なんだか戦争っぽいなと思った。それと同時に大事なことに思い至った。


「思ったんですけど、これって短距離走ですけど持久力も試されてますよね。こんな感覚で何本も走らされたら体力の消耗が激しいです」

「チビは鋭いね。でもちゃんとした持久走も用意されてるから何も心配はいらないよ」

「いやその心配は全然してないですけれど」


 溜息を吐いた後に笛の合図。20期砲兵科学生が横一線でスタート。真っ先に躍り出たのはやっぱりクローネ。背丈に相応しい歩幅を活かしてどんどん走って進んでいく。私も頑張るが、やはり短距離は駄目だ。得意のスタミナが活かせない。でもなかなかいい感じでゴールを示す白線まで到着。私は多分10位前後だろう。クローネは最後まで1位を守りサンドラは少し遅れて到着だ。着順を事務官たちが記録している。一息つく間もなく、そのまま隊列の最後尾に整列させられる。すでに別組の笛が鳴り始めている。

 そして、規定本数が終わった。流石に皆汗だらだらだ。クローネは10連続1位。私は最後だけ2位だったけど平均は10位前後。個人的には小柄なりに健闘したと思う。サンドラも気合で私の後ろにへばりついていたと思うので、成績は同程度だ。なんだか凄まじい気迫を感じたから間違いない。そして休憩時間などなく持久走へと突入。今度は教官殿と一緒に走れというもの。前と後ろに校旗を持った複数の教官たち。その間に全学生が強制的に挟まれる。これは脱落形式だから、最後までその間にいられれば合格点。隊列からはぐれてしまえば戦死認定で失格である。どれだけの時間走るか分からないから、ペース配分も糞もない。疲れた後にこれは普通はかなり厳しい。


「はぁ、はぁ。流石に結構減ってきたね」

「そうですね」

「はぁっ、はあっ!」

「私も結構しんどくなってるけど、チビは余裕そうだね」

「体力は無尽蔵なんです。凄いでしょう」

「凄い凄い。後は体が大きければ完璧な兵士だね」

「それは望み薄なのが悲しいですね」

「はぁっ、はぁっ」


 歩兵科砲兵科全学生のうち、2時間くらいで3割が脱落。多分短距離走で全力出し切ってしまった人たち。脱落者は校庭の中央に集められて、説教タイム。というか良い成績残さなくても、卒業さえできるなら別にお説教でもいいような。なんだかそっちの方が頭が良いような気もしてきた。


「うーん」

「練習で本気を出せない連中が、実戦で出せるわけがない。要領よくやるべき時と場合はよく考えないとね」

「……良く私の考えてることが分かりましたね」

「私はカードが強いんだ」

「私も結構強いですよ」

「それは知ってるけどね。今のは仕草で読んだのさ」

「はあっ、はあっ」


 無駄口をたたいている私とクローネ。サンドラはもう死にそうな形相だった。でも足はまだ動いている。凄い。私とクローネは目を合わせると、また黙って走り始めた。彼女を見習って、少しは真面目にやりましょうということである。私はずっと真面目だったのだけど。

――そして2時間後。持久走終了。残っていたのは全体の2割程度か。私は余裕綽綽、クローネもまだまだいけるぞという感じ。サンドラは地面に片膝をついて鬼の形相。他の学生も、ぐったりとしている。ついでに脱落組もなぜか干からびてる。実は、中央に集められて説教後は、腕立て腹筋を交互に延々と行わされていたようだ。くたばれば水バケツと鉄拳制裁。ここは士官学校、世の中そんなに甘くなかった。


「続いて隊列行進を行う! 歩兵科は戦列を作れ! 指揮官役は最後まで残った連中、歩兵役は脱落した軟弱者どもだ!! 急げよ!! 最低でも5人は従えろ!! それ以上でも全く構わん!!」

「砲兵科は一人が砲兵士官! 残り3名を脱落者どもから引っ張って来い! こちらは歩兵科砲兵科問わん!! なによりも大砲の稼働が優先される! 撃って守って移動しろ! 大砲だけでなく器具と弾薬を忘れるなよ!! 撃てなければ糞の役にも立たん!」

「急げ急げ急げッ!! 敵は待ってくれないぞ!! 早く動け早く動けッ!」


 凄く曖昧で喧しい命令が四方からビシバシ飛んできた。どうしたら良いものかと悩んでいるうちに、クローネが一番に動き出す。サンドラも続いていく。これはあれだ。今から4人仲良し組を作ってねーというあれ。やばい。どうしよう。私は友達がクローネとサンドラしかいないので、凄く困る。自分の同級の男子とも話したことがない。それをよそ様の期から集めて仲良し組を作るなんて。難易度が高すぎる。でもぼっちは目立つので、私も脱落者が集まるところに向かうとしよう。


「急げ急げ!! これは敵の奇襲後の隊列再編も意識している! 立て直しが早ければ早いほど反撃の態勢が整えられるぞ!! ぼーっとつっ立ってないで、迅速かつ冷静に的確に動け!!」


 教官のひたすら続く罵声と怒声、打ち鳴らされる両手と無意味に吹き鳴らされる笛。困惑する学生のざわざわとした声でそれはもう非常に混沌としてる。これをさらに悪化させれば実戦での大混乱ということになるのだろうか。実際に敵襲を受けて、銃弾やら砲弾が飛び交って、指揮官の声が届かなければ焦るのは当然だ。

 それでも歩兵の戦列は徐々にだが出来上がってきている。なんとなく集まればそれっぽく見えるというのもある。クローネは3人さっさと選抜し、大砲弾薬を移動させて持ち場についた。砲兵科では全組で一番。続いて男子学生組が続き、サンドラも揃ったようだ。やばい、このままではビリどころか、仲間はずれで大砲と私だけになってしまう。慌てて視線を走らせると、数名と目が合った。相手は心底嫌そうな顔だが、もう気にしていられない。見覚えのある顔も混じっているし、ここは強制徴兵だ。


「貴方と貴方と貴方を緊急事態のため私の隊に徴兵します。文句は受け付けないのでとっととついてきてください」

「じょ、冗談じゃない。なんでこの俺が呪い人形なんかのっ――ぐえっ」


 脱落した軟弱者のくせに煩いので、みぞおちに拳で一撃。一応加減したつもりだが意外と威力が出てしまったらしい。くずおれそうになったので、その髪を掴んで支えてあげた。


「上官への反逆は許しませんのでそのつもりで。名前は知りませんが顔は覚えたので逃げたら銃殺します」

「ひ、ひいっ」

「貴方は器具を。そっちの貴方は弾薬を持ってください。あー、なんでしたっけ。……ポルトガルケーキ君は大砲を私と押しますよ」

「俺の名前は、ポルトクックだ! お、お前の下なんか死んでも嫌」

「じゃあ今死んでください。では遺言をどうぞ」


 手持ちの長銃を片手でポルトガル君の顔面に向ける。超絶至近距離なので外れる心配はない。これは脅しだけど弾は込められていたっけか。うーんよく覚えていない。少しだけ疲れているからか、穏健思考が薄れてきている。もう逆らう奴は敵味方関係なく全員死ねばいいんじゃないかな的な意識がふつふつと湧いてくる。穏健派な私としてはここはどっちでもいいかなーという感じで今の思考は小康状態。どっちに転ぶでしょうか!


「や、やめてくれ! 分かったからその目と表情で銃を向けるのはやめてくれ!」

「ならさっさと大砲を押してください。私たちがビリなんて嫌ですし。目立ちますし」

「もう十分目立ってるだろうが! というか、た、弾、入ってないよな、それ。な?」

「さぁ?」

「さぁ、じゃない! 本当に誰か助けてくれ!」


 喚くポルトガル君のケツに蹴りを入れて、一緒に全力で押し始める。で、持ち場に到着したのが、この4人で私と大砲だけというのはどういうわけだろう。ポルトガル君は臀部を負傷したのかひたすら気にしていたし、弾薬と器具持ちの2人も全くお話にならない。


「というかもう全部私だけで良くないですかね。上手くやれば弾込めも効率よくできそうですし」

「ぜぇ、ぜぇ、も、もう無理」

「け、ケツが」

「…………」


 ムカついたので到着後に四つん這いでくたばっている全員のケツへ蹴りを入れておいた。鉄拳だと痕が残るから可哀想である。私は穏健思考で平和主義で優しいのである。


「よし、隊を作れなかった愚鈍な指揮官と間抜けな兵はそこで戦死! 持ち場に着けた連中は、進め!」


 即席で結成された士官学校混成旅団の行進が始まった。先頭は校旗を持った教官たち。いつの間にか事務官が軍楽隊を結成し、太鼓と笛を奏でている。そのテンポに合わせて行進する。なんだか楽しくなってきた。砲兵は戦列の外の側面と後方配備だから、歩幅を合わせることを考えなくていい。のんびり大砲を押しながら、鼻歌を歌う。そういえば歌詞もあったっけ。この行進歌は『赤きバラよ永遠に』だ。ローゼリアを治めるローゼリアス王家のためならば、命も惜しまず戦うぞ、敵は自らの過ちを地獄で永遠に悔やむがいい、などという決意表明と戦意高揚の歌。でも誰も楽しそうに歌っていない。そんな気持ちもないし、何より疲れているからだろう。口だけ適当に開けて歌ったフリだけだ。だから私が高らかに歌ってあげた。私はやっぱり空気が読めるのである。加点対象になるという考えもちょっとあった。周囲からの怯えたような視線がアレだったのはアレである。


「全隊、止まれッ!!」

「これより隊列突撃を敢行する! 目標は校庭西側、プルメニア国旗群!! 歩兵諸君はあそこまで突撃し憎むべき敵旗をなぎ倒せ!!」

「砲兵諸君は突撃を敢行する歩兵支援を行う!! 空砲を装填し5回射撃せよ!! その後は長銃を持って各自で突撃を行え!!」


 まさに総力戦だ。砲兵まで突撃させるのはなんだか玉砕寸前の負け戦っぽいけどそれで大丈夫なのかは秘密である。普通は敵歩兵戦列が怯んだところに、騎兵投入が定跡らしいけど。なにせ砲兵を普通に突撃させたら肝心の大砲が置き去りである。弾を撃ち尽くした想定かもしれない。弾のない大砲なんてただの鉄屑だし。


「突撃用意!! 全歩兵隊は銃剣を着剣せよ!!」

「我らのローゼリア! 偉大なるローゼリア王のために! 突撃開始!!」

『我らのローゼリアのために、偉大なるローゼリア王のために!』


 そんなに揃ってない合唱とともに、自称の突撃が開始された。皆疲れているからゾンビの群れみたい。足がもつれてぶっ倒れた歩兵もいる。さらに将棋倒し。実戦だったら、敵陣に到達する前にこのまま壊滅しそうである。

 のんびり眺めている暇もないので、私たちも支援射撃を行う。隊員3名は疲労が激しいので私が段取りよく手取り足取りで強引に進めさせていく。絶対に一人の方が早いが指揮力を見られているから仕方がない。これが指揮かは神のみぞ知る。

 砲身掃除、魔粉薬を詰め込んで空砲用の弾薬装填。呪紙棒で着火、発射。弾はでないが、破裂音だけはする。それを冷静に観察している事務官たち。手際の良さ、指揮の的確さをチェックしているようだ。意外と細かく見ているんだなと感心する。と、そんなこんなで5発撃ち終わった。先を行く歩兵戦列は乱れまくって滅茶苦茶である。実戦もきっとこんな感じだろうなぁと思いつつ、私は銃剣をつけるように指示を出す。クローネ班は一歩先に突撃開始、その後をサンドラ班が続く。ちんたらやっているポルトガル君のケツを蹴飛ばして、代わりに銃剣を着けてやり強引に立ち上がらせる。


「ほら、さっさとしないと置いてけぼりですよ。そんなに戦死したいんですか?」

「わ、分かったから尻を蹴らないでくれ。あ、あなが、い、痛い」

「でも痕は残らないから平気です」

「そ、そういう問題じゃ」

「さぁ行きましょう。ミツバ班、突撃開始!」


 よろよろする3人の後を私が遅れて進む。遅れ次第蹴飛ばすことにした。本当は先頭を行きたいが、兵を最後まで引き連れていくのも士官の役目らしい。逃げだしたら銃殺か刺殺だ。そう教えられたので確実に実践していこう。

 前方を見れば、プルメニア国旗を最初になぎ倒した歩兵隊が万歳している。本当に勝ったみたいな光景で楽しそうだ。遅れて到着した学生たちも、つられて皆で万歳三唱。意外と単純な人たちである。

 遅れて砲兵科も目的地に到着。私たちは残念ながら砲兵科では真ん中ぐらいの着順だった。ビリにならなかっただけ良しとしよう。1位はクローネ、2位がサンドラの指揮力の高い二人であった。女子力では負けないようにしたいが、多分リア充のクローネには勝てない。男子にも女子にもモテてしまうからだ。残念。


「ポルトガル君、大丈夫ですか?」


 なんとなく劣等感を抱いてしまった私。それをごまかすために、げーげー吐いているポルトガルケーキ君の背中を優しくなでてあげようとした。そうしたらうげっという悲鳴とともに、吐しゃ物に顔面が突っ込み悲惨なことに。私はそっぽを向いて何もなかったことにした。周囲の視線が悪魔を見るようだったのもきっと気のせいである。

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