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防御特化と支援役。

カナデは一人で二層の端にたどり着く。

カナデはギルドメンバーと共闘する時には支援魔法にMPを割くものの、一人で戦う時の為に多少の攻撃魔法も身につけている。

また、運次第とはいえ【神界書庫アカシックレコード】で攻撃面に厚みを出すことも出来なくはなかった。


そのため一人でも問題なく行動することが出来た。


「今日はスキルの引きがいいしね」

カナデの言うように、今日は【神界書庫アカシックレコード】で強力な魔法スキルを引くことが出来ていた。


カナデは砂に埋もれていた石畳の表面が見えるように掘り起こす。

図書館で手に入れた情報からこの場所を割り出すことが出来た。


「よっ…と」

カナデがその石畳に触れると石畳はすうっと消えていき、その奥に地下へと続く階段が現れた。

カナデは階段を下りていく。

幅の狭い階段を下りきると、そこにはひどく古びた扉が一つあるだけだった。


カナデが扉を開けると、そこに広がっていたのは図書館だった。

そこは第二回イベントでカナデが唯一攻略した浮遊島の図書館と酷似していた。


「さてと、僕の予想通りならここの奥に……あった」

古びた長机に散らばる真っ白いパズルのピース。

ミルクパズルだ。

カナデはそれをかき集めて纏める。

はめ込むための枠が置かれており、その枠部分には文字が書かれていた。

神々の試練と。

浮遊島で【神界書庫アカシックレコード】を手に入れた時と同じ内容だ。


「今回は…三千か。前回よりだいぶ少ないなぁ」

カナデは椅子に座るとピースを広げ、ざっと確認して端から一つずつ繋げていく。


「んー……ここはこう。ここは…こう」

カナデは真っ白いピースを次々にはめ込んでいく。

まるで答えを知っているかのように。

そうして三十分程パズルをした所で背もたれに体を預けて手を止めた。


「はぁ………疲れるなぁ。頭痛くなりそうだ…」

カナデは覚えることに特化した力。

つまり高い、いや高すぎる記憶力を持っている。

普通ならぱっと見た時に同じに見えてしまうピースが、確認を終えたカナデには全くの別物に見えるのだ。

そして、そのピースがどのピースと繋がるのかも当然はっきりと分かる。

繋がる部分の形、そのピースを置いておいた場所。


全て、覚えているのだ。


ただ、カナデにとってここまでの情報は覚えておくことは出来ても極限まで集中しないと引き出すことが出来ないのだ。

そして、それが可能な時間は十分程度である。


元々記憶力に優れているカナデだが、通常時ではこのパズルはクリア出来ない。

今はおとなしく休む必要がある。


「残ってる本は取り出せるようになってないし……んー、僕以外でここに来る人がいたら困るしなぁ」

前回と違う点は時間加速下にないということである。

完成させるにはまだ時間がかかりそうだが、ここで寝泊まりする訳にもいかなかった。


「ギリギリ間に合いそうだけど…駄目そうならもう一度来よう」

三十分と少し休むとカナデはまたパズルに取り組み始めた。


そうして休憩と集中を何度も繰り返すうちにピースはどんどんと埋まっていく。

そして、ついにカナデは最後のピースをはめ込むに至った。


次の瞬間。白く染まった枠の中が輝きを放ち、中心からルービックキューブが現れゆっくりと回転しながら宙に浮かんでいた。


「さて……」

カナデがそれを手に取ると、それは幾筋もの光となってカナデのポケットに吸い込まれていった。


「おー……これを持ってたら一体化するんだ」

カナデは改めて自身の装備を確認する。

すると、ルービックキューブに新たなスキルが追加されていた。


【魔導書庫】

MPを使用する魔法とスキルを【魔導書】として専用の【本棚】に保管出来る。

保管された魔法やスキルは【魔導書】を使用するまで使用出来ない。

【魔導書】の作成には消費MPの二倍を必要とする。


「なるほど……帰ったら使って…いや、今日は止めておこう……疲れたし」

カナデは階段を上りつつ、読んだ本のことを思い出す。


「後一つ…二層には無い。三層…?それとも…一層?いや、まだ無いのかな?」

残り一つも必ず手に入れると、こればかりはやる気を出すカナデだった。






カナデがこのスキルを手にしたことは現実世界の運営にも伝わった。

運営の注意はまず【楓の木】に、そして次に第一回イベントと第二回イベントでの成功者に向けられている。


「カナデが【俺達の悪ふざけその二十】をクリアしたぞ!?」


「仕方ねぇ、あいつは浮遊島のもやってるからな……」


「【楓の木】に悪ふざけを突破した奴が固まってるな」

クロムとサリーはユニークシリーズ。

カナデは図書館系統。

新入りのユイとマイはSTR上昇スキル。


メイプルは色々だ。

メイプルのスキルはほぼ全て悪ふざけである。


「ふむ……他には?」


「第一回イベントの十位以内は軒並みその辺りに手をつけてる。メイプルがその最たるものだ……後は、そいつらの近くにいた数名。新規参入のプレイヤーは思ったように動いてくれてる」


「イベントの内容によっては上位二十人くらいを上手く隔離しなくてはならないか?」


「ああ、かもな」

そう言ったのを最後に彼らは再びモニターを眺め始めた。




第一回イベント

1位ペイン

2位ドレッド

3位メイプル

4位?

5位?

6位カスミ

7位?

8位?

9位クロム

10位?

まだ結構残ってますね…

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