防御特化とゲーム外。
今日は時間が無さ過ぎたため短めの閑話を挟みます。
読まなくてもストーリーには影響が無いので読み飛ばしても大丈夫ですが……
結構情報が入ってるかも?
これは少しだけ時を遡っての現実世界。
ゲームを運営する者達が不具合が出ないようにそれぞれイベントを管理している部屋でのこと。
「ああぁあぁあああ!!【銀翼】がやられた!」
一人の男が叫ぶ。
その声に部屋にいた全員が反応する。
「は?【銀翼】?あいつはプレイヤーが倒せるような設定じゃないだろ?」
「ああ、殺傷能力の高いスキルを詰め込んだし、HPを高く、MPを高く、ステータスを高く。俺達の悪意の塊だ」
「誰だ?誰にやられた?」
「今映像を出す……」
男が機械をいじると一つのモニターに映像が流れる。
白く輝く翼の怪鳥。
相対するは黒の鎧の少女と、青の衣の少女の二人組だ。
「メイプル!?マジか!?おいおい、流石に【銀翼】は無理なはずだろ!?」
「機動力が足りない筈だ!【地竜】相手なら分かるが……」
ありえない、ありえないという言葉が飛び交う中で戦闘が始まった。
「礫は…まぁそうだろうな」
「相変わらず狂った防御力だ」
部屋の中の全員が、イベントを管理しつつもその画面をチラチラと見る。
しばらくして問題のシーンが流れる。
「こいつが問題だ!この青コートがメイプルの機動力になっている!」
画面には【カバームーブ】で高速移動するメイプルが映っている。
それは流石に想定外だったようだ。
全員で食い入るように画面を見る。
「……そいつは【サリー】AGI重視で、スキル構成は広く浅く。強力なスキルは【蜃気楼】と【大海】だけだ」
一人の男がサリーの情報を調べて提供する。
「まぁ、普通か。いや、メイプルと比べれば何だって普通だ」
「確かにな」
そう言って苦笑いを溢す全員の前で。
サリーの異常性が姿を現す。
「……前言撤回だ。こいつもヤバイ。もしかするとメイプルよりもヤバイ」
「予知系スキルは持ってないんだろ!?」
「あ、ああ。持ってない」
映像ではサリーが人間とは思えない回避能力で銀翼の攻撃を躱していた。
まるで本当に予知しているかのようなその動きにあちこちから驚きの声が上がる。
「どうやって躱してんだ?」
「礫が止まっててもあの間を潜るのはきついぞ、おい」
そして、部屋にいる全員が呆然とその戦いの一部始終を見届ける。
そこで一人がハッとしたように声を上げる。
「やべぇ!【幻獣の卵】が持ってかれるってことか!?」
「中身はどうなる!?」
「狐と亀だ。まぁ…まだましなほうだ」
「鳥と狼は?」
「【海皇】の所だ。あいつらは彼処からしか出ない様にしてある…まぁ、あれは大丈夫だろ…」
そう言うと疲れ切ったように椅子の背もたれにもたれかかる。
「あー……ありえねーあれで弱体化後とかありえねー」
「おい、手の空いてる奴はメダルスキルにチェック入れ直せ!変な使い方が出来そうなスキルがあるか再確認だ!」
「「了解です!」」
「………もう、あいつらがラスボスでいいかもしれん……」
「ああ…かもな」
その声には疲れが色濃く出ていた。
この出来事をメイプルとサリーが知ることは無い。