防御特化と初ログイン。
楓はNewWorld Onlineの初期設定をメモを片手に終えていく。メモのお陰で設定はスイスイと進んでいく。
「ふーっ…これでいいかな…」
そしていよいよ電脳世界へとダイブすることになる。久しぶりの感覚。目を閉じて、次に開いたときは、そこは既にゲームの世界。と言っても、まだ少し設定が残っているためいきなり町の中という訳にもいかない。
「まずは…名前かあ。うーん、カエデっていうのも本名そのままでアレだし…どうしようかな…」
楓はしばらく悩んだ末にメイプルと名前を入れて決定を押す。空中に浮かぶパネルが映し出す内容を変える。次はどうやら初期装備を決める必要があるようである。
「大剣に…片手剣…メイス…杖…うーん…あんまり動き回るの得意じゃ無いんだけどな…それに、攻撃とか受けたく無いし…じゃあやっぱり杖で魔法使いかなぁ」
そうやって幾つかある装備を見ていた楓だったが、ピンときた装備があり目を留める。
「大盾と短刀?攻撃力は低いけど…防御力はナンバーワンかあ…えっ!防御力を上げればダメージって無くなるの⁉︎」
説明文を読んだ楓はこれに決めたと大盾と短刀を初期装備に選ぶ。
ちなみに、防御力を上げて攻撃が無効化出来るのはほんの序盤だけで、それなら火力を上げた方がいいとゲーム内では評価が下されており、また、短刀というのも使い勝手が悪く評価を下げていた。
つまるところ不人気装備だという訳である。
そもそも、わざわざゲーム内で攻撃を受けることを前提とした装備を使いたがる人が少ないというのもあった。さらに、大盾は無理でも盾なら片手剣や、メイスを選んだプレイヤーも装備することが出来る。
取り回しの良さからそれらを選ぶ人の方が圧倒的に多いのだ。
「次はステータスポイントか…これは防御力に全部っと」
俗に言う極振りである。これをすると大盾ならただでさえ低い攻撃がさらに悲しいことになる上、素早さの数値にも振っていないため現実の速度と同じになってしまう。
果たして突進してくる動物相手に勝てる女子高生が現実世界にどれだけいるのだろうか。
ただ、当の本人はそんなことを考えてはいなかった。
「あー…身長は弄れないのか…もっと背を高くしたかったのに…」
楓の身長は145センチあるかないかといったところである。
細身で、可愛らしいその容姿と体躯から学校では密かに好かれているのだが、そんなことは楓の知る由もないことである。身長はコンプレックスでもあるが、現実の体と身長、体重を変えると上手くプレイ出来ないため仕方ないことだった。
「じゃあ、これでオッケーかな。よし!」
楓の体が光に包まれる。
そして、次に目を開けた時。
そこは活気あふれる城下町の広場だった。