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防御特化とダンジョン攻略。

ランキング…これ、やばない?



戦闘シーンの修正。

「ダンジョン探索かあ〜私もやっと冒険に出るって感じだね!」

なけなしの三千ゴールドをはたいて念のためにとポーションを買う。

HPはたったの40なので最下級のポーションでも十分に間に合う。

それに巨大蜂の指輪に加えて【瞑想】もあるのだ。

準備を整えてダンジョンへと向かう。目指すは情報掲示板に書いてあった【毒竜の迷宮】だ。


「【毒耐性中】があるから大丈夫!」

いざダンジョンへと意気込んで町から飛び出した。









森とは逆方向へとてくてく歩く。ここがゲームの外で楓が大盾と短刀を持っていなければ遠足に行く小学生にしか見えない。

道中で何度かモンスターに襲われたがノーダメージのため倒すことも無くスルーする。

この辺のモンスターは森のモンスターよりも頭がいいようで攻撃が通らないと理解すると去っていった。

目撃者が誰もいなかったため楓の異常な防御力が露見することは無かった。

楓がそうして歩いていくと次第に周りの木々が枯れて風景が寂れていくのに気が付いた。

地面にはぽこぽこと音を立てる沼が幾つも発見できた。

そうして歩くことさらに十分。

地面が一部隆起してぽっかりと口を開けているのが見えた。


「あれがそうかな?」

楓が中へと入っていく中は思っていたよりも高い天井で大盾もちゃんと構えることが出来た。

奥へと進んでいくと毒々しい色のスライムや蜥蜴が壁や地面を這って突撃してくる。


「えいっ!やっ!」

スライムに刃を突き立てるがその半透明の体の中を漂うように動き回る核を捉えることが出来ずダメージに繋がらない。しかし、スライムの体当たりもまた、ダメージに繋がらない。


「むぅ……かくなる上は。喰らえ!大盾プレーース!」

大盾ごと前に倒れこんでスライムの体全体を押し潰す。スキルでも何でもないため威力など期待出来ず、敵地で倒れ込むという隙だらけの攻撃である。

しかし、攻撃も毒液も全てノーダメージで受け切れる楓にとっては関係のないことであった。

盾攻撃はダメージなど殆どないがスライムの核を潰すのには十分だった様だ。


「よーし!もっと奥へ行こーっ!」

スライムの対処法も分かったことで楓はずんずん奥へと進む。因みに楓は蜥蜴を倒すのは諦めた。AGIが足りず攻撃する前にスルスルと逃げられて当たらなかったからである。

もう何度目だろうか、盾を持って地面に倒れ込む。その時。


『スキル【シールドアタック】を取得しました』

楓は早速そのスキルの説明を読む。名前から大体の内容は掴めていたが念のためだ。


【シールドアタック】

盾で攻撃する。威力はSTR依存。ノックバック効果小。

取得条件

盾での攻撃でモンスターに十五回止めを刺すこと。


「あんまり使えないかな…でもノックバックは強そう!」

奥へ奥へと進む中、紫色の見るからに毒っぽい霧を噴射する花があったり、毒を吐き出す

魚が毒沼を泳いでいたりした。

それを掻い潜ってついに辿り着いた最深部。

目の前には楓の背丈の三倍はある大きな扉。

両開きのその扉を力を込めて開ける。

ギギギと油の切れた嫌な音を発しながら扉が開ききり中の部屋の全貌が明らかになる。

あっちこっちに毒沼があり、薄く紫がかった気体で満たされている。

楓がその部屋に恐る恐る入ったと同時。

後ろの扉が勢いよく閉まった。


「ひゃん!?」

その短い悲鳴をかき消すように毒沼から所々体の溶けた竜が姿を現した。


「こ、これが毒竜!?」

楓の動揺もお構い無しに吹き付けられた濃い紫のブレス。

楓自身はほぼ無傷だったが、その装備はそうはいかなかった。


「お、大盾と短刀が……」

腐食しボロボロと崩れ落ちていくそれらはもう装備としての役割を持たないだろう。幸いにもグローブの下に着けていた指輪だけは無事だった。

そしてこの瞬間。

楓のVITは大盾の【VIT 28】を【絶対防御】と【大物喰ジャイアントキリングらい】の効果で四倍した値分。つまり112下がる。

それによって、毒竜が吐き出すブレスのダメージがさらに通るようになる。

一発受ける度に3ダメージ。楓の体力は一発目のブレスで1減っている。

つまりこのままではあと十三発で確殺されてしまう。


「ふぅ……集中!【瞑想】!」

楓は目を閉じて集中力を高める。

今回はダメージで体に痛みが走る中での【瞑想】になる。【瞑想】は集中力を高め続けなければその効果を成さないのだ。

リングと【瞑想】そしてなけなしのお金で買い込んだポーション。全て使って、狙うはさらに上の【毒耐性】それが唯一の勝機。

【瞑想】をしている間は痛みも、恐怖も薄れていく。まるで楓の体が溶けていくかのように何も感じなくなっていくのだ。

そうやって耐え続け、HPが残り二割を切った辺りでポーションを飲む。

これを繰り返す。

回復量は追いついていない。ポーションが無くなるか、耐性を手にするか。

どっちが早いかだ。




暫く耐えると頭の中に声が響く。


『スキル【毒耐性中】が【毒耐性大】に進化しました』

念願のその声に、しかし楓は喜べなかった。

未だ皮膚を焼く痛みは残っている。

まだ耐性が足りないのだ。

これ以上成長するかも分からない耐性スキルだが、楓はそれに賭けるしかなかった。











最後のポーションも空き瓶となった頃。


「はは……やった……」

楓の頭の中に響き渡ったのは【毒無効】というスキルの取得通知だった。

今なら降り注ぐブレスすら心地いい。

しかし、休んでばかりいられないのだ。体力の回復と共に楓は考える。


そう。武器を壊されてしまった今。どうやってこの竜を倒せばいいのだろうかということだ。竜の攻撃はノーダメージ。楓の攻撃もノーダメージだ。

埒があかない。

しかも、死ぬか倒すかしなければこの部屋から出られないのだ。これは開発者すら予想していなかった事態だろう。


「うぐぐ…まあ、色々試してみよう!明日も休みだしね!」

そう、幸いなことに明日はまだ学校は休みなのだ。じっくり時間をかけることが出来る。

あーでもないこーでもないと色々と考えて試した楓はついにとある行動に出た。


「竜のお肉、ボロボロで柔らかそうだし…【毒無効】なら食べられるかも!」

毒のブレスを浴びながら毒竜の体へと近づいていく。

そして。楓は両手を合わせて。


「……いただきます」

その背中に齧りついた。

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