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侍女会議

 王城の会議室に入ると、私はドアの近くの空いているはじの席に座った。

 まだほとんど他の侍女は来ていない。

 私はホッと息を吐いた。

 平民である私が、他の侍女より遅く来たら何を言われるかわからない。


 侍女会議は、だいたい王族主催のお茶会についてだ。

 お茶会を主催する王族の侍女達が中心に、各離宮から五名ずつの侍女が手伝いに入る形だ。


 今回はユリア様のお茶会なので、私達の王女宮が主導して行われる。

 これまでユリア様は、王妃殿下と一緒にお茶会の主催をされていたが、十二歳になったので初めて自分で主催されることになった。


 対象は六歳の貴族の子供達だ。

 貴族の子供達は、六歳になると貴族名鑑に名前が載ることになる。

 そのお祝いのお茶会をユリア様は任されたのだ。


 お祝いのお茶会では、青い薔薇を茶会室の会場を華やかに飾りつけ、帰りにはその青い薔薇をもらって帰るのが楽しみの大きな一つだ。

 青い薔薇の花言葉は、『奇跡』『夢叶う』だ。

 無事に六歳を迎えることができた喜びと、これから先の人生への希望を込められて青い薔薇を贈られるのだそうだ。


 青い薔薇は、海のような青空のような、とても綺麗な薔薇だと聞く。

 この青い薔薇は、白い薔薇に特殊な染料を根から吸わせて青く染めて作るらしい。

 青い薔薇は、六歳のお茶会でしか手に入らない特別な薔薇なので、子供達はみんな楽しみにしているのだそうだ。


 少しすると、他の離宮の侍女達も集まって来た。

 王女宮の侍女二十五人に加えて、他の離宮から五名ずつ二十五人の侍女達が加わった。


「それでは始めてちょうだい」

 侍女長のマーバリー様が、ユリア様の専属侍女であるアルマ様を見た。

 アルマ様が返事をして、前に進み出た。


「みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます」

 アルマ様がキビキビと挨拶された。

「今回のお茶会は、王女殿下主催の六歳のお祝いのお茶会となります。六歳になられた貴族の御令息、御令嬢四十五名をご招待する予定です」

 アルマ様が、老眼鏡をかけて資料を読み上げる。

 結構な人数だ。


「王女殿下がお決めになったお茶会のテーマは森の動物達です。先日、侍女試験でセシリアさんが披露なさったラテアートをお気に召され、そちらをメインにしたいそうです」


 ロザリー様が、一瞬不快そうにチラと私を見た。

 みんなが私に注目し、思わず息を呑んだ。

 まさか私のラテアートがメイン!?

 マーバリー様がなるほどと頷いた。


「そう、わかりました。アルマは、中心となって進めてください」

「かしこまりました」

 アルマ様が、返事をした。


「アルマの補助はロザリー、お願いします。その間は、セシリアの指導侍女はしなくていいです」

「かしこまりました」

 ロザリーは、ニヤリと笑って答えた。

 これは何か仕掛けてきそうだ。私は気持ちを引き締めた。


「セシリア一人でラテアートを四十五人分作ることは難しいでしょう。セシリア、王女宮の侍女達にラテアートを習得させてください」

「はい。かしこまりました」

 私はマーバリー様に声をかけられ、その場に立ち上がり返事をした。


 責任重大なことになってしまった……。

 会議室の空気が、不快げにピリピリしている。

 私以外はみんな貴族だ。平民に習うのが嫌なのだろう。

 その後は担当を指示されて、解散となった。


 私は、ラテアートに必要な物や、会場に飾る青い花を注文する責任者にもなってしまった。

 私の下につくことになった、侍女のミッズリー男爵三姉妹は明らかに不服そうな表情で会議室から足早に出て行った。

 大丈夫だろうか……。

お読みくださり、ありがとうございます。

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