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その後の話 後編 

 ひと月半後に正式に侍女になることが決まった私は、引き継ぎや侍女の準備にバタバタとした日々を送っていた。

 アーリヤさんのお部屋にも、バルドさんとお礼にお邪魔した。よいご近所さんだ。


 キャサリン様も大分メイドの仕事ができるようになってきた。

 きっと最短で侍女試験を受けられるだろう。


 そんなある日、私はエリザベート王太子妃殿下に呼び出された。




「セシリア、会うのが遅くなって悪かったね」

 エリザベート王太子妃殿下の応接室に入ると、ドュークリフ様とマーバリー先生もいた。

 私は促されてソファに座った。

「まずは、侍女試験合格おめでとう」

「ありがとうございます」


「その後の話をしておこうと思ってね。ドュークリフ」

 あの後、ラウンドア様は自分が助かりたいがために知っていることは全て証言したそうだ。

 誘拐や妨害に関わっていた貴族至上主義の貴族家がわんさか出てきた。


 それらを一気に消すのはさすがにまずいので、取り引きの材料にしたり、今のうちに消しておいた方がいい貴族家を吟味したりとドュークリフ様は大変そうだった。

 やっと、一段落したのだろう。


「はい。まずはセシリアに感謝を。平民である二人が、侍女試験と文官試験に挑んで見事に合格した。おかげで平民への学費援助金は、今後も続けられることになったよ」

「よかったです」

 一次試験でお会いしたシュリガンさんも、受かったようだ。


「ドマネス伯爵夫人だけど、王城の礼儀作法の講師を辞退してきたよ。もう、彼女を雇う貴族家はないだろうね。ドマネス伯爵も社交界からは弾かれているようだ。ドマネス伯爵家は貴族至上主義の重鎮の一人だけど、しばらくは大人しくするしかないね」

 ドュークリフ様の目の下にはくっきりと隈ができているが、とてもいい笑顔だ。


「それから彼女の取り巻きのリンプドリー伯爵夫人とオックス子爵夫人の家にも厳重注意がいった。彼女達の家は中立だったけど、どうやら彼女達とその夫達が勝手に王太后に擦り寄っていたようだね。厳重注意を受けて、前当主達はすごい剣幕で怒ったそうだよ。彼らは当主の座を追われて、弟夫婦や親戚が当主になった。セシリアのおかげで助かったよ」


「いえ」

 あの一言から、ここまでの大事になるとは思わなかったが、貴族至上主義が増えるのを潰せてよかった。


「セシリアの侍女試験の護衛だけど、本当は別の騎士が昇格試験としてセシリアにつくはずだったんだ。でも、新しく第二騎士団の団長になったレイモンドが強引にニルス・ラウンドアを捩じ込んだんだ」

 なるほど。だから、あんなひどい護衛がついたのか……。

 レイモンド・カルサンス様は、キャサリン様を婚約破棄された方だ。そんな方とキャサリン様は、結婚しなくてよかったのかもしれない。


「ニルス・ラウンドアは、鞭打ちの刑の後、その身分を平民に落とされたよ。もちろん、第二騎士団はクビになった。まあ、当たり前だよね。本人はレイモンド達が守ってくれると思っていたみたいだけど、知らんぷりだったらしいよ」

 あれほど平民を蔑んでいたラウンドア様が、自らも平民となるなんて皮肉なものだ。


「ラウンドア子爵については、当主を長男に譲らせて現状維持だ。全てニルスが独断でやったことだと息子を切り捨てた。あの一家はうっかり悪巧みをポロッと言ったり、行き当たりばったりの悪巧みをしてみたり、尻尾を出しやすい家だから、そのまま残して役に立ってもらおう」


 エリザベート王太子妃殿下もいい笑顔だ。

 ラウンドア子爵家の、今後のご活躍に期待だ。

 他にもひっそりと当主が交代になった貴族至上主義の貴族家を聞いた。


「レイモンドは半年の謹慎と減給処分となったよ。本当だったら、レイモンドは降格処分にしたかったけど、王太后がこちらの処分に口を出さない代わりにレイモンドを守ったんだ。孫思いの王太后のおかげで、大分貴族至上主義を削ぐことができたよ。あ、レイモンドの減給処分した分のお金は、セシリアに慰謝料で渡すね」


 お二人の笑顔は輝くばかりだ。

 慰謝料はありがたく受け取って、ルパート商会の損害の補填に使ってもらおう。


「侍女長は、来月いっぱいで退職することになったよ。おかげで、侍女の人事権がこちらの手に入った」

 では、新しい侍女長はもしかして……。


「新しい侍女長はここにいるマーバリー・マイヤー伯爵夫人だよ」

 想像した通りだった。

「エリザベート様に口説き落とされてしまいました。セシリアさん、これからよろしく頼みますね」

「はい!よろしくお願いします」

これにて、第3章終わりです。

引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。


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