第八話 ビッグフット戦
『タクヤのターン:戦う、槍で突く!!』
「行くぞっ! 止めは俺が刺す!!」
タクヤは装備していた銀の槍を構える。そしてビッグフットを目掛けてドラコと一緒に突進していった!!
「おうら!!」
更に、槍の射程圏内に入った瞬間、ビッグフットをその槍で深々と貫いた。
「ごふ……!!」
『ヒット! ビッグフットHP:19/893』
タクヤはビッグフットを倒し損ねた。
「あり……?」
「タクヤ! てめ、任せろとか言ってたじゃねーか!? 何だその体たらくは!!」
ケンジはタクヤに檄を飛ばす。それを、
「スッ」
「!?」
タクヤは左手で制して言った。
「まあ待て。まだ味方のターンは終了してないぜ!!」
「!? それって……」
『ダイスライムのターン:戦う、体当たり』
「ぬもももも……ぬっ!!」
ダイスライムは、ビッグフットに対して体当たりをぶつけていった。
そして――、
『ヒット! スライム、HP:0/893、ビッグフットは倒れた』
「! ――」
腑に落ちないケンジに対し、タクヤは明るく言い放った。
「な! ノーダメージ、1ターンキルで行けたろ、ケンジ?」
「う……るっせぇ! 自分の力で倒しやがれ。この能無しが!」
「う……そのあだ名は止めてくれ、それは俺に効く……止めてくれ……」
タクヤは土下座しながらか弱い声で言った。それに対してケンジはフーと、ため息をつき、呆れた様子でそっと口を開いた。
「はいはい、悔しかったらもっと活躍しやがれっての。……今回のプレイングはどうするつもりなんだ? レアモンスターは、ここではスモールフットと……何だ、この空欄は? よく分かんねぇのが1体いる」
「じゃあ今日は、『その空欄埋めるまで帰れないEスポーツ』的な!」
「わーったわーった。そのうるさいのは止めてくれな」
「ぬももも」
ダイスライムも、ケンジに続く形で小言を言っていた。それを察したタクヤは疎外感を隠し切れず、涙目で口を開く。
「ダイスライムぅー、お前まで俺をそんな感じで接するのかー(涙)」
「お前がうるさいからだろ」
「! ……」
タクヤの脳内を、ケンジの声がこだまし始めた。
(お前がうるさいからだろ。お前が五月蠅いからだろ。オマエガウルサイカラダロ)
「――、……」
タクヤの身体から、魂が抜けてしまった。
――、
雪山、真っ白に雪が積もった山道を、ケンジ、ダイスライム、タクヤ……? の順でゆっくりと進む。
「くっ……(雪が強くなってきた)」
「ぬもっ」
「ほげぇー」
タクヤは未だ魂が抜けている様だった。
「ん? スライム! タクヤ!」
ケンジが何かを見つけ、パーティに呼びかけた。
「洞窟がある、ひとまずあそこで暖をとろう」
――、
雪山の洞窟内、ケンジの持っていたランタンが、暗闇を照らし、少しばかりの温もりを周囲に与えていた。
「……」
「ぬもぉ……」
「ほげぇー」
二人と1匹は、数分間ランタンに当たっていたが、痺れを切らしたケンジが、強い口調でタクヤに言葉を当てた。
「おい!! タクヤ! 何時までくたばっているつもりだ!?」
「ぬももっ!」
ダイスライムも、ケンジに同調してタクヤに鳴き声を投げ掛ける。
「ほげぇー」
「!!」
相変わらずの様子のタクヤに対し、ケンジは遂に胸倉を掴んで荒々しく言う。
「お前が! ここに来たいといって来たんだぞ!! このパーティを! 引っ張っていくのは、お前じゃないのか!!?」
その言葉は、タクヤの心の中でこだました。
(このパーティを引っ張っていくのは、お前じゃないのか!? このパーティをひっぱっていくのは、おまえじゃないのか!? コノパーティヲヒッパッテイクノハ、オマエジャナイノカ!?)
「ギン!!」
タクヤの両目に、再び生気が宿った。
「まっ、まぁ? このパーティのリーダーは、俺だしぃ? 俺がしっかりしてなきゃ、このパーティ全員ダメになっちまうからなぁ」
「(リーダーとまでは言っていないが)漸くお目覚めか。ったく、世話の焼ける」
「っハハ、それほどでも……!! ケンジ、後ろ!!」
「!? 何だ!!」
ケンジが振り向く。と、そこには――。
『ヒバゴンが現れた』