第五話 行け! モンスター○○
「何ぃぃ――!? 倒したのにここに保存されている形で居るなんて、流石令和以降のゲームだぁ……」
「何軽くメタ発言してんだ、タクヤ?」
「あ、ああスマン。ケンジそうか、俺が倒してきたモンスター達がねぇ……ん! 確か俺のパーティは……!」
「? どうしたタクヤ」
「ケンジ! スライム系のモンスターが居る場所はどこだ!? ちょっとそこに用がある!!」
「? こっちだけど……」
ケンジは牧場に入ってから左手にある養豚場の様な場所に、タクヤを案内した。
「ん? あ……、アレは!!」
「ふっふっふー」
思わず、我が目を疑うケンジに対し、タクヤは自慢気に腕を組んでいた。
「『レアスライム』じゃねーかぁああ!!?」
驚きのあまり大声で叫ぶケンジ、それに対してタクヤは更に有頂天になって自慢話を始めた。
「どうよ? ケンジ。まぁ、俺クラスになるとストーリー序盤で、レアモンスターに遭遇して図鑑埋めも滞りなくおこなえてるって言うかぁー?」
「装備アイテムコンプできてないヤツがどの口叩いて……」
「ギクゥッ! ま……、まあ装備アイテムは、これからかなー、なーんて……っは!! ケンジ、その反応を見た限りでは、レアスライム、倒せてなかったりするんじゃないかなー?」
「るせっ、経験値が高いモンスターだけエンカウントしてきたからな。スライムなんて雑魚系統のモンスターとはエンカウントしない様にしてきただけだ」
「っは!!(の、ノーダメージ……セルジュとはまた違った最強プレーヤーと、会ってしまったのか……?)」
タクヤは優位に立ったつもりが、反転攻勢され、勝ち目が無さそうな状況にショックを受けていた。
「ゴーレム系はどうだ、タクヤ? 序盤のレベル上げに最適だったから、それなら俺はコンプしてるぞ!」
「はて? どーだったかな。色んな敵と戦ってきたから覚えてねーわ」
「それなら、見る方が早い! な。こっちだ」
「あでで、強引な……」
ケンジはいつもの様子でタクヤの腕を引っ張って進んでいく。
――、
「ここだ!」
「おっ! タケヒコが苦戦していたヤツらだ!」
「べくしっ! 何だ?」
タケヒコ(タカヒロ)は自宅でコタツに入りながらくしゃみをしていた。
「あー、ゴーレム、ミニゴーレム、メガゴーレム、ギガゴーレム、全部そろってるかぁ……(畜生! 何かでここ、牧場でもマウント取りたい……!)」
しれっととんでもない願望を抱いているケンジだったが、モンスターコンプは、タクヤに引けを取っているようで……。
「ばばネコは!?」
「毒蛇は!?」
「サルは!?」
「毒サソリ!」
「……!」
「……」
数分後、ケンジは疲弊しきった表情で、牧場の柵に背中をあずけてへたっていた。
「おれの……もってるもんすたーは……ぜんぶたくやがもっていて……おれの……もんすたーは……」
「ハイハイ、10日でクリアするから図鑑埋めも進んでないんだろ、ケンジ? あっ、そういや図鑑があって、牧場まであるのは何でだ? 集めるだけなら図鑑だけで良いだろうに」
「あ、ああ。タクヤ。ストーリーを終盤まで進めると、ここ、牧場からモンスターを連れて行って、パーティに加えることができるんだ」
「何だとー!? 激アツじゃん!」
「モンスターが力尽きたら、牧場からも消えちまうがな」
「! お、おう気を付けないとな。じゃあ、スライム系でも連れてってみるか、楽しそう」
「クソほど役に立たないけどな」
「言うなよぉ(泣)」
「まぁ好きにしろよ」
「それじゃあ……」
『ダイスライムが仲間に加わった!』
――、
二人は手始めに、第一のマップ、草原にて、ダイスライムの強さを確かめるコトとした。
草原――、見渡す限りに碧く育った草が、広大に広がっていた。
「綺麗だねぇ。まさに大自然といった感じが……」
「フン、雑魚が出てくるだけのマップだろ」
「そう言うなよケンジー……ん?」
タクヤとケンジが会話をしているとガサガサと、背丈の高い草むらから何かが飛び出してきた。
「ぬらぁ……」
『スライムが現れた!!』