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第四話 牧場

「ここだ」


「!?」


始まりの村の、東にある施設、牧場――、


ケンジはそこにタクヤを連れてきた。


「牧場の方は、モンスター集まってないから、俺のヤツは見せないでおこう。お前の牧場の状態を見せろ!」


「ちょっと待てケンジ!」


「!?」


明朗に話すケンジに、タクヤは右手を向けて待ったをかけた。


「どうした、タクヤ?」


「ケンジ……一つ言っておかなければならないコトがある……」


「なんだ、タクヤ?」


「俺の実家の村には!!」


「!」




「牧場など無い!!!!」




「……」


「……」




「……は?」


「実家の村に無い牧場が、何で存在してんだよー!!」


タクヤは目に軽く涙を浮かべながら、大声でケンジに訴えかけた。


「そんなこと、俺に言ったって……」


「ちょっと待ってろ! セーブしてっと、確かめに行ってやる!!」


「あっ……、ちょっ……まっ」


「プツン」


タクヤはゲームの電源を切り、そそくさと家の外に出た。


冬の田舎とあってか、雪がちらほら舞い降りている。


「ずずっ、もっと厚着して来れば良かったか……? まー、ソッコーでこの疑問を解決してやる!」


鼻をすすりながら、タクヤは駆け足で実家の村の東の方角へ息を切らしていった。




数分後――、


「な!? ここは……?」


タクヤが辿り着いた場所、そこは『牧場建設予定地』という標識が立ててある、広々とした更地だった。


「まさか……完成して……いないけど。これは……!」


タクヤは何か思い付き、実家へとUターンで走り始めた。




――、


タクヤはガラガラと、実家の扉を開けた。続いて、息を上げながら母に話し掛ける。


「ハッハッ……かーさん!」


「あら、タクヤ。血相変えて家飛び出していったと思えば、もう帰ってきたのね」


「そーなんだけど……、ハッハッ……この近くに、牧場が建設される噂、知ってるのか!?」


タクヤの母は、両目を右斜め上に向け、右手の人差し指で顎をそっと触りながら少し考え事をした後、口を開いた。


「ああ、確かこの実家を舞台としたゲームの……? 村? とかに牧場があって、ゲームの評判に便乗して実際の村でも牧場を作ろうとか言う話が、あったとか無かったとか……?」


「大分曖昧だな。まあいい。フー、大体分かったぜ! じゃあ、俺は明日も休みだから、ゲームしてくる!」


「まぁ! 最近してないと思ってたら、またハマってしまったのね。ほどほどにしなさいよ」


「うぃー(笑)」


タクヤは自室がある二階に上がり、再びVRゴーグルを装着し、ゲームの電源を押した。


「OPは飛ばす!」


タクヤは大急ぎで、ケンジのいる場所へと降り立った。


「遅い……!」


「わりーわりー、でもケンジ、現実世界では15分くらいだったぜ?」


「こちとら体感時間50分くらいなんだよ! そういう仕様、分かってんだろ!?」


「そういやそうだった! 悪い、ケンジ! ところで、現実世界でもあったぞ、牧場!!」


「何!? 在ったって、元々存在しているんじゃなかったのか?」


「厳密に言うと、何かゲームの人気に便乗して近い将来に造るらしい」


「なんだそりゃ(もうヤダこの国……)」


ケンジが頭を抱えていると、タクヤはハツラツとした様子で、ケンジに話し掛けてきた。


「話を戻そう、ケンジ! この牧場には何が居るんだ?」


「あ……、ああ。タクヤ、ここにはプレイング内で倒したモンスター達が一種類につき1匹、存在しているんだ」

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