前へ次へ
38/40

第三十八話 あと三話

始まりがあれば、終わりがある。


それは出会いがあれば別れがある様な、この世の理である。


俺実の外伝を、ダラダラと続けてきたわけだが、知人に


『終わりが見えない』


『いつまででもできるでしょ?』


と言われ、私こといぶさんは俺実ほんへを百十七話で終えたコトに対する英断を思い出し、外伝も終わりを迎えさせようという……






「うるせぇぇええ!! メタ発言すんなぁあああ!!!!」






タクヤが吠え、いぶさんを撤退させた。


タクヤ、ケンジ、シャナ、ダイスライムを主要メンバーとするパーティは、急だがモンスター達を倒しまくり、とりあえずモンスター図鑑の方は完成まであと一息と、いうくらい『The battle begins on the farm』をクリアしていた。ステージ『草原』で、タクヤ達は心地良い風を浴びながら座り、談話している。


「いやー、それにしてもシャナ、始めの頃を思うと成長したなー」


「ほ、本当ですか!? タクヤさん。……け、ケンジさんは……?」


「そうだよシャナ。な、ケンジ?」


「フン。まぁ、雑魚を一人で倒せるくらいにはなったな」


ケンジはシャナに向けて素っ気無い言葉を口にしたが――、


(け、ケンジさんが……褒めてくれた……?)




「ほわーん」




シャナは夢心地の様子だった。タクヤは、マズい、ケンジに振るんじゃなかったと、顔を引きつらして、次の言葉を探す。


「そ、そうだ! モンスター図鑑、ストーリークリア後のモンスターも含めて、ほぼ埋めきったんじゃないか? 『牧場』に入れていられるモンスターも増えたから……」


タクヤ、ケンジ、シャナは顔を見合わせる。そして次に視線を送った先は――、




「ぬらぁっ!」




ダイスライムだった。


「もっと上級のモンスターもいるな、ケンジ?」


「ああ、スライム系よりはゴーレム系の方が耐久力もあるし、毒サソリ系は味方にすればこれほど頼りになる者はいない」


「ルシファ……は大ボスだから仲間にはできないんでしたっけ?」


「ぬぬらぁっ……」


パーティの四人目(四匹目?)の枠を話し合うプレイヤー三人に対し、ダイスライムは不安しか抱けなかった。


「でもまぁ……」


「ぬぬ……」




「なんやかんや、連れ回してレベル上がってるダイスライムで、四人目はいいかな?」


「まぁそうだな、タクヤ」


「ですね!」




「ぬらぁっ!!」


ダイスライムは三人の言葉を聞き、ぱぁっと明るい表情を見せた。




――、


「あと、一体で完成だな。ケンジ」


「ああ、確か最後のモンスターは『ぽっくりさん』、キツネの幽霊の様なモンスターだ。夜にならないと出て来ない。コレを使うぞ」


ケンジはタクヤに言葉を返すと、時間を操る『カギ』を手にした。


「万象の理よ、我が意のままに……!! 時よ、夜へと進め!!」


ぐわんと、辺りの空間が歪み、時が動き出した。




――、


「おっ! 夜になった」


タクヤが意識を取り戻した時には、辺りは既に夜になっていた。


「出てこい! ぽっくりさん!!」


タクヤが意気揚々と辺りを見渡していると、ハーと溜め息をつきながらケンジが口を開いた。


「タクヤ、残念なお知らせだ」


「え!?」


「ぽっくりさんとのエンカウント率は3%くらい。そう簡単にはお目にかかれないと、攻略サイトに書いてあったぞ」




「えええええええええええ!? 草むらとかに、100回くらい入って、3回くらいしか出て来ないの!?」




「うるさいぞ、タクヤ。……その通りだ」


「仕方ねぇ、手当たり次第探すぞ!」




3分後――、


「出てこい! ぽっくりさん!!」




更に5分後――、


「出てこいー、ぽっくりさん」




更に10分後――、


「……」




更に……






「あ゛―――何であと一体に限ってこんなに出て来ないんだよー!!」






「タクヤ、ゲームとは得てしてそういうモノだ」


「もう知らん! 4、5分寝る!!」


「聞いてるのか、タクヤ?」


「ぐがぁぁああ、ぐがぁぁああ」


タクヤはしびれを切らして、ふて寝を決め込んだ。


この状況をポジティヴにとらえてしまった者が――、


(ケンジさんと、二人(と一匹)っきり……)


シャナだった。フーと、溜め息交じりのケンジに、果敢にもシャナは話し掛けた。


「け……、ケンジさん」


「ん?」


「ケンジさんってどんな女性がタイプなのでしょうか!?」


「んー? よく分からん」


「芸能人で言うと……?」


「? テレビ置いてないから、知らんな」


「で……では、今……す……好きなひ……」








「サバの味噌煮!!」








『!?』




タクヤが急に食べ物の名前を口にし、飛び起きた。


「ん? かーさん……? あ! 今『The battle begins on the farm』してんだった!!」


「……!」


「?」


シャナは赤面し、ケンジはその真意を分からずにいた。

前へ次へ目次