第二十七話 水の都の異変
「湧き水の場で、異変が起きている……」
「!」
「!?」
「なっ!?」
((なんだってー!))
カノンの一言にパーティの三人は気持ちを一つに揃えて驚いた。続けてタクヤはカノンに問う。
「じっ……じゃあカノンさん、ドロンコドロドンがまた出たってコトなのか……なのですか?」
「よく聞け、人間……。湧き水の場の源泉が、凍結しておるのじゃ」
「なっ!?」
「まぁ、季節的に冬だからと、済ませてしまえばそれまでじゃが、あの源泉は、冬に凍結するという事例が無い。何か化け物によって凍結させられたという線が高いのじゃ……」
「化け物……!」
(俺らの言う、モンスターな)
たじろぐタクヤに、ひそひそ声でケンジが一声掛けていた。
「人間、以前とは顔ぶれが違うが、主らが言ったように有事には駆け付け、問題解決に尽力すると、いうのは変わらないじゃろうな?」
「えぇ……? そんなコト言ったってぇぇ……」
「ハイ!!」
「!?」
カノンが発破をかけてきたため、タクヤは引き気味に構えていた。
瞬間――、
シャナが突如として声を大にして話し出した。
「マリン族の女王様!! 私達は今回の問題を解決し、水の都に平穏をもたらす為に(偶然)ここに来ました! 必ずや湧き水の場が何故凍結したのか、原因を突き止め、理解し、解決して参ります!! ねっ、ケンジさん?」
「ほう……」
シャナの物言いに感化されたカノンは、顎に手をやり、少々期待を寄せた様な表情を浮かべていた。
「なーんでだ、シャナとやら? 面倒事は勘弁だぜ? ストーリークリアしたんだからここはスルーでも全然良いんだよ。それと誰だ? 有事には駆け付けると言ったやつは?」
「ぶえっくしょん!!」
現実世界――、
タカヒロがノノと居酒屋で食事を摂っていた。
「タカヒロ君!? 風邪!!? 寒かったらあったまる鍋頼もうよ?」
「ああ、ノノカ。大丈夫だ、問題ない(俺は何故くしゃみを……?)」
ゲーム内――、
「あっアイツだ! タケヒコ(タカヒロ)ぉー、言い出しっぺが何でこの場に居ないんだぁー!!」
「なんだタクヤ? 心当たりがあるのか?」
「ああ、ケンジ。俺の元パーティに、堅物が居たんだよー、今頃何やってんだぁー、アイツ。まさかノノとデートを!?」
『ぶえっくしょん!!』
現実世界――、
タカヒロとノノが、今度は二人同時に盛大なくしゃみをしていた。
「またー、タカヒロ君ー」
「ノノだって……今日はうどんでも食べて、帰るか?」
「……そうしましょうか」
小一時間後、二人のデートは終焉を迎える。
ゲーム内――、
(ねっ、ねっ、ケンジさん。タクヤさんも、ねっ?)
(うー、引くに引けなくなってきた……)
シャナが珍しく積極的になっているのに対して、タクヤは次第にマリン族を助けようという気持ちに……
「おい」
「!」
なりそうな瞬間――、
ケンジがタクヤにずいっと顔を近付けてきた。
「俺は反対だぜ。マリン族助けたって、ストーリークリア後は大して報酬が割に合わない」
「え……? ケンジ……さん……?」
シャナの目には薄っすらと光り輝く雫が……。それはカノンの館、建物内の光と色に反射してより輝き、美しさと儚ささえ孕んでいた。しびれを切らしたタクヤは頭を掻きながら言う。
「あー、もう!! 分かったよ、シャナ! ケンジも! ほら、湧き水の場に行くぞ!」
「ケッ、わーったよ!」
(……シャナ、コイツのどこに惚れたんだろ……?)
タクヤの疑問は尽きない。そこでカノンはニヤリと笑い、声を掛けてきた。
「今回も、片が付いたら報酬をやろう」
「何!? 今回も!!?」
『報酬』という言葉に食いつき、ガッツいていくタクヤだったが、ケンジに首根っこを掴まれ、くぎを刺された。
「報酬は、割に合わねーつったろ?」
「はっ!?(マジで割に合わないの!!?)」
――、
「では、頼んだぞ」
カノンの声を最後に、タクヤ達は館を後にした。水の都の水位が上がっていた為、移動手段はほぼ手漕ぎの舟によるモノとなった。通りは以前よりも人出は少なく、静かに佇む宮殿の様な建物と、水面に反射するそれが特徴的だった。
「着いたぞ」
「!」
船頭の一声に顔を上げてみると、その場所の中心にある湧水がほとんど凍っているのと、そこに居る白い狐が目に入ってきた。
「コーン!!」