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第二十六話 水の都、再び

(回想)


グラビアアイドルの水着ポスターを前に、ケンジ、シャナの二人は絶句していた。


「コレは……流石に引きます。タクヤさん」


「ズーン……」


シャナの率直な意見に、タクヤは意気消沈した。続いてケンジが口を開く。


「俺にはこんなの、分かんねぇけど、何か嬉しいのか? こんなモン飾ってて」


(っは! ケンジはもしや、都市伝説の絶食系男子!?)


タクヤが思いを巡らせていると、シャナからちょっとしたフォローが入った。


「でも……まぁ、大抵の男の人はこういうコトに興味、ありますよね……? タクヤさんの部屋にこういう風に存在してますが、け……ケンジさんの部屋には無いってコト……(ケンジさんの部屋は……?)」


シャナの妄想は膨れ上がる。




(シャナ、脳内妄想)


「ホントに入っていいんですか?」


「ああ、入れよ。シャナとやら」


シャナはケンジの部屋(脳内妄想の)窓から外を見る。


「わー……高ーい。流石十階建てですね。夜景がきれい……」


「シャナとやら、お前の笑顔の方が、キレイだぜ?」


(シャナ、脳内妄想終了)




「ほわーん」


「っは! みなまで言わずともシャナの脳内がお花畑モードなのが分かる!!」


タクヤは一人、叫んでいた。その横からケンジが横槍を入れる。


「『麻衣―Mai』お前の性癖が分かったぜ? でかいのがいいんだろ」


タクヤは実家の自室にでかでかと貼ってあるグラビアアイドルのポスターを目にし、何も言えなかった。


(確かにでかいのが好きけどここで、簡単にYESとは言えない……!)


「他には大して見たいものもねぇな……。よし、ここを出るぞ! おやっさん、宿泊料の払い戻しはいらん、じゃあな!!」


頭を抱えるタクヤと、頭の中お花畑のシャナを引っ張って玄関まで行き、大男に一声かけたケンジは三人でタクヤの実家を後にした。


(回想終了)




現在、水の都にて――、


「ほら、タクヤ! お前の言った通り、見栄えのある水の都に着いたぞ。シャキッとしろ!!」


「ああ、麻衣―Mai……オーマイガー……」


「つまんねーコト言ってんなよ、タクヤ! ん? シャナとやら、なんでそんなに顔が赤いんだ……?」


「あっあのっ! ……何でも、ありません……」


「なんだそりゃ? ふざけてんのか……?」


「そっ、そんなつもりでは……」


三人は、騒がしく水の都を歩いていた。


「……! ――」


タクヤは歩いているうちに、水の都の冬特有の“変化”に気付いた。


「都の水位が……高い……?」




「気付いたかタクヤ……」




ケンジが不意にタクヤに話し掛けてきた。


「冬の水の都は、異常潮位現象が起きている所為で、街中の水位が高くなっているんだぜ? そっちの宮殿を見てみろ。水面にも宮殿が映って、結構なもんじゃねぇか」


「! ……」


ケンジの指さす方向へ、タクヤは目をやった。すると、水の都にある宮殿が、水面に反射して映り、線対称にその姿を現していた。


「……すげっ」


タクヤは思わずその光景に目を奪われた。そこでケンジは一言漏らした。


「でも、変だな」


「!?」


「カノンの館があるんだが……ここから見るだけでも、その建物を囲う水の量が減っている様な……」


「ケンジ!!」


「!?」


「カノンの館、行くぞ!!」


タクヤは走り出した。続いてケンジもタクヤの後を追う。


「はいはい……行ってやるよ」


「待ってくださーい」


シャナは二人に遅れをとって、走り出した。




――、


カノンの館にて――、


「うっわ! 前来た時とは比べ物にならないくらい冷えてるな。流石冬!」


「この中は日が当たらないからな」


「ケンジさんの言う通り、建物内の水の量、減ってます……よね?」


最深部の部屋へ続く通路を、タクヤ、ケンジ、シャナは会話しながら進んでいく。


数分もしないうちに、マリン族女王・カノンが居る部屋に辿り着いた。


タクヤは何の気なしにカノンに声を掛けた。


「カノンさーん! 久しぶり」


「おい、タクヤ!」


「?」


「マリン族の女王に対して、俺でもそんな態度はとれねぇぞ。もっと気を配ってだな……」




「人間……」




「!!」


ケンジがタクヤにくぎを刺そうとしていた、瞬間――、カノンがこちらに向かって話し掛けてきた。


「湧き水の場で、異変が起きている……」

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