第二十五話 タクヤの恋の終わり
「シャナとやら! こっちだ、二階に来い!!」
「え? あっ……ハイ!」
ケンジはシャナを呼ぶ。シャナが二階に上がる前に、ジリ……とケンジに対しタクヤとドラコは間合いを詰める。ここでタクヤが啖呵を切って声高に言った。
「ケンジ! この部屋に入りたければ俺を倒してからにしろ!!」
「キュゥー、キュゥー!」
ドラコもケンジを威嚇していた。それに対し、ケンジは顎に手を当てて成る程なと、思いを巡らせた後口を開いた。
「そこまでするなら、その部屋を隠したい、何かがあるんだな? よし! その勝負、乗ってやる!!」
『ケンジが現れた!』
(タクヤ視点)
『タクヤが現れた!』
(ケンジ視点)
『ケンジのターン:戦う――、斬り付ける!』
「てりゃあああああ!!」
ケンジは、(室内にもかかわらず)装備していた剣を振り上げ、タクヤを縦に真一文字に斬り付けた。
『ヒット! タクヤ、HP:150/279』
「ぐっ! 流石の速さだな、ケンジ……。だが、そのダメージ量じゃあ、2ターンキルもできないぞ! 今度はこっちからだ!!」
『タクヤのターン:戦う――、槍で突く!』
ドラコに乗ったタクヤは、狭い屋内でもちょっとだけ浮遊してケンジに近付き、装備していた槍で、ケンジを貫いた。
『ヒット! ケンジ、HP:149/301』
「よーし!! 次受け切ってカウンターで勝利じゃ! ここ数日で、レベルアップしたからな! ケンジはレベルが高いからレベルアップできないもんねー(笑)」
タクヤがノリノリになって上機嫌に話していたが、それを恐る恐る壁に隠れて見つめる者が――。
「何が起きていているのでしょうか……?」
シャナだった。
(仲間……割れ……? タクヤさんが傷付くのはあんまり良くないけど、ケンジさんが負けるところは見たくない……止めないと……でも……)
『タクヤ:Lv46』
『ケンジ:Lv50』
『シャナ:Lv28』
(私じゃ足元にも及ばない……(泣))
シャナが悲観に浸る一方で、ケンジは俯き、下を向いていた。そのケンジの様子を見て、タクヤは更に挑発する。
「どうした、ケンジ? 怖くて声も出せないのか? この前のリベンジじゃ!」
「…………」
相変わらずケンジは黙ったままだったが、スッと右手に持っていた剣を掲げた。
「光の剣……」
ケンジの装備していた剣はカッと輝き、その光はタクヤを襲った。
『ケンジのターン:戦う――、光魔法!』
「ええええええええええ!?」
タクヤは完全に虚を突かれた。
『ヒット! 効果は抜群だ! タクヤ、HP:0/279、タクヤは倒れた』
「ぐえー、目の前が真っ赤になるー」
「キュー」
タクヤとドラコは、その場にうずくまってしまった。
「闇属性のタクヤには、光魔法が効くからな」
呟いたケンジはお構いなしに、
「よーし、部屋入るぞー」
タクヤの部屋に入って行った。
「タクヤさん!」
「!?」
その時声を上けたのはシャナだった。
「一応、復活の薬草を……」
『シャナは復活の薬草を使った! タクヤ、HP:209/279、タクヤは復活した!』
「っは! はぁー、はぁー。あの野郎躊躇なく殺しやがって……」
ケンジに倒されたショックで、タクヤは復活した後も、肩で息をしていた。その様子を目にしたシャナは、タクヤを覗き込み、言った。
「大丈夫……ですか……?」
「あっ、ああ! シャナ、サンキュな!(やったー! その辺の石ころ同様の扱いじゃないみたいだー)タクヤが胸をなでおろした、その時――、
「おーい! シャナとやら!! 部屋に来てみろ! 変なポスターが貼ってあるぞ!!!」
「あっ……ハイ! ケンジさん……」
(あっ。終わった……)
タクヤはショックで再び倒れそうになる。シャナは小走りでタクヤの自室に入って行った。そしてシャナは部屋に入るなり、すぐに小さな悲鳴を上げた。
「きゃっ! ……何……コレ」
『麻衣―Mai』
そこにはグラビアアイドルの水着ポスターが、でかでかと存在感を出し、君臨していた。
(オーマイガー)
麻衣だけに……。