第二十四話 タクヤの執念
「うっわ! 中も殆ど田舎って感じだな」
ドタドタとケンジがタクヤの実家の母屋に入って行った。
「1泊一人あたり20コインになるよ」
どーんと、玄関には大男が立ち塞がっていた。ケンジはハイハイと、バッグからコインを取り出そうとする。しかし、不意に何かを思い出して、口を開いた。
「あっ、アンタどっかで見たコトあると思ったけど、ゼトがこの家に火を放つのを阻止するときに出てくるオッサンかぁー。懐かしいなー。最初の積みポイントだったな」
ホレと、ケンジは三人分の60コインを手渡した。ケンジに続き、シャナも母屋に入ってきた。
「何でしょうか……ここに来ると落ち着きます……ね。そうだ、ケンジさんはココを何回利用したことがあるのでしょうか?」
「あぁ? 今回が初めてだよ」
シャナの問いに、面倒くさそうにケンジが答えた。キョトンとしたシャナが更に問う。
「え……!? 何故……?」
「敵倒して薬草貰う方が、経験値稼ぎにもなるし効率良いだろうが! そんなコトも分からねぇのか……?」
「あっ……、ハイ。すいません」
「俺の実家の中でも罵声浴びせるのは止めてくれ、ケンジ……」
遅れてタクヤも、母屋に入って行った。
――、
「じゃあタクヤ、風呂とトイレ以外の間取りを案内してくれ。おもてなしとかはいらねえからな、ウザいから」
「(クッソ……、ケンジめ。コイツの毒っ気はいつになったら収まるんだ?)あー、ハイハイじゃあ、キッチンと俺が飯食うところから――」
ケンジに催促され、タクヤは実家の母屋を案内し始めた。
キッチンにて――、
「うっわぁ。ふっるい炊飯器だな。いつの時代だよ? おっ、レンジも古いな!」
ケンジは言いたい放題だった。おいおいと、たじろいで言葉を失ったタクヤだったが、シャナの反応は……。
(タクヤさんのお家の電化製品が古いって感じるってコトは……ケンジさんのお家は最新式のものになっているのかしら……!? ケンジさんの……お家……? ……――!)
妄想モード突入だった。
「今ので!?」
タクヤがツッコミを入れるが、シャナはほわーんと、自分の世界に入っていた。腑に落ちないタクヤだったが次に食事を摂る部屋に、二人を案内した。
「うわっ! 畳! 初めて見た!!」
「畳の部屋ってやっぱり落ち着きますよね……」
(二人とも都会っ子なんかな? へへっ、畳が見れて満足そうだ)
ケンジとシャナの二人が畳に好印象だった為、タクヤは少し、こころがほっこりした。
ここでケンジが話を切り出す。
「他はどんな部屋がるんだ?」
「ギクゥ!」
タクヤはその発言に動揺の色を隠せなかった。しかし悟られない様に、作り笑顔で話し始める。
「後は、かーさんとオヤジの寝室と、姉ちゃんの部屋かな?」
「へー、姉ちゃんねぇ。てか、姉居たんだな。それはそうと、お前の部屋はどうなってんだよ?」
「え? えーと……それは……」
「気になりますね」
ずいっと、珍しくシャナが身を乗り出してケンジと同調した。
(しゃ……シャナまで……!?)
(同じ意見なら……、気が合うって思ってくれるかな……?)
それは淡く儚い下心から来るモノだった。
「決まり――、だな。タクヤが教えてくれねーなら、自分達で見つけ出すまでだ。シャナとやら! 一階を探索しろ! 俺は二階に行く!!」
「は……ハイ!!(役割を与えてくれた……! 信用してもらってる……?)」
ケンジからの思わぬ指示に、シャナは夢心地になっていた。
(見つかるのは……時間の問題か……。ならば!!)
タクヤは急に全力で走り出した! 二階へ向かって――。
「!?」
「なっ!? 何だ?」
その様子にシャナとケンジは只々驚くしかなかった。ドタドタと大きな音を立ててタクヤが走り、辿り着いた場所は――、
『たくやの部屋』
堂々と名札の掛けてある自室の前だった。
「こーなったら、このドアの前から、何としても離れん!! 入り口を塞いでやればこっちのもんだ! それと、ヒュー」
タクヤは口笛を吹き、ガラガラと二階部分の窓を開けた。天空からタクヤのパートナーのドラゴン、ドラコが窓から入ってきた。
「キュゥゥン!!」
「おーし、ドラコ。どーどー。二人で(1人と1匹?)、このドアを死守するぞ!」
「キュゥー、キュゥー!」
「見つけたぞ!」
「!?」
意気揚々としていたタクヤとドラコの前に現れたのは、ケンジだった。