第二十一話 あばたもえくぼ
『コウモリン達が現れた!!』
暗闇の洞窟を探索中、パーティは次なる敵に遭遇した。敵は洞窟の天井に止まっていた。
「ほら、シャナとやら。それぐらいの雑魚は、お前一人でも倒せるだろ? さっさと倒せ」
「ケンジぃ、そんな言い方はねーだろ? シャナ、気にせず……」
タクヤの声は、シャナには届いておらず……。
(ケンジさんが、私一人でも倒せるって期待を……応えないと……!)
「♪」
セルジュは一人、全てを把握していた。
「行きます!! ハァァアア!!」
シャナはペガサスに乗り、洞窟の天井まで飛んで行った。
そして――、
「やぁぁああ!!」
装備していた鉄の槍でコウモリンを一突きした。
『ヒット! コウモリン1、HP:0/85、コウモリン1は倒れた』
「おお!」
「♪」
ペガサスと共に地上に降り立ったシャナは、パーティの方を振り向き、晴れやかな明るい声で言った。
「わ、私……やりました!!」
「ナイスぅ!」
「いいね♪」
タクヤとセルジュはシャナを祝福し、迎え入れた。
が――、
「何だ!? そんな雑魚倒した程度で現を抜かしやがって! まだもう1体居るぞ!!」
ケンジは決まってシャナに冷たく接した。それに対し、シャナは――、
(また、冷たくされた――。でもこれは、期待の裏返し? 期待に応えるよう、もっと頑張らなくちゃ!)
軽く頭の中お花畑で、ポジティヴシンキング!! タクヤははぁーと、ため息をつきながらケンジに言った。
「お前なー。シャナが頑張ってんだからちょっとは応援してやろうぜ?」
「フン……俺には関係ない」
「あ、お前まさか、敵が洞窟の天井に居るから、斬撃が届かなくてもう1体倒せって言ってんの? 図星だろ」
「なっ!? そんなコトは……!」
「ハイハイ、わーったよ。それなら、シャナと同じく空を飛べる、このドラゴンマスター、タクヤ様がもう1体を倒してきまーっす、てな!」
タクヤは乗っていたドラゴンで洞窟内を飛び、コウモリン2に狙いを定めた。タクヤの射程圏内に入る。
その時――、
「光の剣……」
ケンジの装備していた剣はカッと輝き、その光はコウモリン2を襲った。
『ヒット! コウモリン2、HP:0/86、コウモリン2は倒れた』
「な……!?」
呆気にとられたタクヤをよそに、ケンジは言う。
「別に剣が届かなくても、こんな雑魚は倒せるんだよ……!」
「俺、飛んだだけかよ!?(俺がドラコで飛んだ意味って一体……)」
「キュー……」
タクヤは乗っていたドラゴン(ドラコ)と共にゆっくりと地面に降り立ち、愕然としていた。
『コウモリン達を倒した! パーティは経験値をもらった! シャナLvアップ24→25』
「やったねー、シャナちゃん♪ ……? シャナちゃん?」
「……」
ここでセルジュが明るくシャナに話し掛けたが、シャナの耳には届いていないようで――。
(強い……光の剣……遠隔攻撃で一撃……。それに……)
シャナは上目遣いでケンジを見つめた。シャナ‘s eyeにはケンジがいつになく輝いて見えており――、
(カッコイイ……)
(おやおや♪ これは……)
セルジュはニヤニヤと、シャナの様子を観察していた。
その時タクヤは――、
(くー、シャナにカッコイイとこ見せようと思ってたのに……! シャ……、シャナ!?)
「ほわーん」
シャナがケンジを愛おしそうに見ているのが目に入ってきた。
(こ……、これは……まさか……)
タクヤ、失恋の危機!!
(ハハ……まさか、まさか、な)
暗闇の洞窟の探索は続くが――、
(タクヤさん……あのっ……一ついいですか?)
「!」
シャナがひそひそ声でタクヤに話し掛けた。
(単刀直入に聞きます。ケンジさんに気に入られるには、どうしたら良いでしょうか?)
「はぅあ!!」
「え? タクヤさん!?」
「どうしたぁ!?」
タクヤの断末魔に、ケンジが反応した。
「あー、ちゃー♪」
『タクヤ、HP:0 /273、タクヤは倒れた』
男タクヤ、失恋確定!!!!