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第十八話 ペガサス

前回、松本達と神殿を攻略したタクヤとケンジは、翌日始まりの村に集っていた。村にはちらほらと雪が舞い落ちている。


「前回は大変だったな、ケンジ」


「ああ。お前の所為でな、タクヤ」


「まぁ、そう言うなよぉー、それにしても……」


「ああ……」


((アイツら、強すぎだろ!!))


二人が心を揃えて、強い思いを切に思った瞬間――、カッと二人の目前が光り輝き出した。


「まさか!!」


「またアイツらか!?」


タクヤとケンジの脳裏を、松本とイブキの姿が過る。しかし――、


「シュゥ――ン」


光が消えるとそこに、角があり翼の生えた白馬、ペガサスに乗った少女が現れた。


「あ……、」


「アイツらじゃ、ない……?」


「アイツら?」


少女は、タクヤとケンジに対して、ハテナ顔で首を傾げた。


少女の外見は――、


髪は水色の少しだけ長めのボブ、木製の甲冑を身に纏い、短い丈のスカートを履いている。手には槍を持ち、ペガサスの機動力とその装備から繰り出される、高い攻撃範囲が強みだと、一目で分かった。思わずタクヤはその少女に話し掛けた。


「お前……名は……?」


「わ……私は……。さ……シャナと言います……」


「おい、お前」


「!」


今度はケンジが声を掛けた。


「その、うじうじした態度、どうにかできないのか? 鬱陶しいぞ」


「! ……」


シャナはケンジの辛辣な一言を聞いて、目に薄っすらと光を放っていた。そう、目から涙がこみ上げていたのだ。咄嗟にタクヤがケンジに釘を刺す。


「おまっ! おい!! それは言い過ぎだろ、ケンジ! シャナ……ちゃん? 気にすんなよ。コイツちょっとキツい性格だからさ」


「いえ、私がいけないんです。弱くて、引っ込み思案だから……」




「ヒーン!!」




シャナがタクヤに答えた瞬間、彼女が乗っていたペガサスが騒ぎ出した。


「こっ、コラ……暴れないで……」


(……扱い辛ぇ)


タクヤも少々、鬱陶しさを感じてしまっていた。


次いで、カッと三人の目前が光り輝き出した。


「!」


「おっ!」


「今度こそアイツらか!?」


その光に反応する、シャナ、タクヤ、ケンジ。


光が消えるとそこには――、


「やっほー♪」


セルジュが現れた。すってーんと、タクヤだけがずっこけた。


「……」


「?」


少々、動揺するケンジとシャナを横目に、セルジュは淡々と話し始める。


「タクヤぁ♪ 今回も私が遅れて登場だね」


「あ……、アナタは誰でしょうか……?」


シャナが勇気を振り絞って、セルジュに問う。


「私の名はセルジュ、司祭やってまーす♪ そう言うキミは誰なんだい?」


「わ……私は……。さ……シャナと言います……それで、この二方は……?」




「あ!」


「!」




目を見合わせるタクヤとケンジ、そう言えばと、二人がまだシャナに自己紹介をしていなかったコトに気付く。慌てて二人はシャナに自己紹介をする。




「俺はタクヤ。ドラゴンマスターやってるんだ」


「お……、俺はケンジ。役職は魔剣士……」




努めて明るく振る舞うタクヤに対して、ケンジはめんどくさそうに言うだけだった。


「よ……よろしくお願いします……!」




――、


「シャナはストーリークリアしたのか?」


「ここにオンラインで居るってコトはそうゆーコトだろ?」


「うんうん♪」


タクヤ、ケンジ、セルジュが口々に言うと、シャナは思わず下を向いて黙ってしまった。


「うん?」


「……た、……私は……パーティに恵まれて……なんとか……」


息を吹きかければ消えてしまいそうなくらい弱い声で言うシャナに、他の三人は目を細めて、耳に手を当ててその発言を聞こうとしていた。


「じゃ……、じゃあさ、現実世界では何してんの?」


タクヤが気を利かせて次の質問をすると、シャナは更に下を向いてか細い声で言うのだった。


「い……言えま……せん……」




((言えんのんかい!?))




タクヤとケンジは心を一つに、突っ込むのだった。


「成る程、シャナちゃんは私に似ているね」


「どこが……でしょうか……」




「『パーソナルスペースに土足で上がってくんな』




的なところが♪」


「はぅあ!!(私って、そんな人に思われていたの……?)」




『シャナ、HP:0/126、シャナは倒れた』




「あらー♪」


「ああ! シャナがぁぁああ!!」


「……(打たれ弱すぎだろ)」




三人、思うところがあるが、ひとまず!




シャナは力尽きた。



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