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第十七話 そしてこのタクヤである

「それじゃあアタイ、真ん中のを開ける!」


「キィー……」


3つ並んだ、真ん中にある宝箱をイブキが開ける――、


カッと、辺りは光に包まれた。数秒経ち、光が消えたその時、宝箱の中身が明らかとなった。


『500コインを手に入れた!!』


「やったー! これでお風呂入れる!!」


(このゲームにも風呂が……てか、ゲームで風呂に入りたいのか?)


イブキの発言に疑問しかないタクヤだった。




「次は俺の番だな。じゃあ俺は向かって右の宝箱を」


ケンジはどうやら、開ける宝箱を決めた様だった。


「キィー……」


『銀の盾を手に入れた!』


「ちっ、ダダ被りの外れか。まぁ、これ売ってコインにしようぜ? タクヤ」


「あっ……ああ、そうだな」


タクヤのパーティはもう既に銀の盾を手に入れていた様で……。




「最後は俺だな」




松本は、最後に残った向かって左の宝箱を開ける様だ。


「キィー……」


『750コインを手に入れた!』




「な!?」


「!」


「おっ」




松本が最高金額を叩き出したので、タクヤ、ケンジ、イブキはそれに反応した。


「『余り物には福がある』っとな」


「ヘイ! マツモトキ〇シ」


「俺は松本だ。何だイブキ?」


「今は一緒になってるけど、この後二手に分かれたら、この1250コインはアタイらのだよな?」


「そうだ、そのハズだ。イブキ。……ケンジにタクヤ、その予定で良いな?」


「ああ。構わない」


「あ……、ああ。それで良い(チックショー! ただでさえお宝貰えるの1人:2人で不利なのに、引きもわりィー!!)」


あくまで冷静なケンジと、頭と口が統合していないタクヤだった。




パーティ四人は、ずんずんと神殿を攻略していく――、


『イブキのターン:スキル――、元〇玉』


「オッラーン!! 元〇玉ぁー!!!!」


「ゴォォォー!!」


『松本のターン:戦う――、ボディーブローで沈める』


「ドッ!!」


「グォォォオオ!!」


『ギガゴーレム達を倒した』




『イブキのターン――』


「オッラーン!!」


「ゴォォォー!!」


『松本のターン――』


「ゴッ!!」


「グォォォオオ!!」


『……』




次の部屋の扉の前にてタクヤとケンジがひそひそ声で会話を交わしていた。


「なっ……、なあケンジ」


「あっ……、ああ。タクヤ」






((コイツら最強じゃね?))






ふと、松本が振り返り、言う。


「次の部屋で最後、か……。タクヤとケンジ、これまでのマップの構造上、宝箱とセーブポイントがあるだけだと思うが、進んで良いか?」


「あっ、ああ。構わない」


タクヤは答え、ケンジはコクリと頷いた。


「じゃあ、進むぞ……!」


「ゴゴゴゴゴ」




『最後の部屋の扉が開いた!』




そこには――、




「どーん!」




いつも通り、宝箱が3つあった。


「タクヤ……」


「ああ、ケンジ……」


ケンジとタクヤの二人は目を見合わせる。


そして――、




「うわぁーん! 宝箱開けたーい! 宝物欲しーい!!」




タクヤが仰向けになり駄々をこね始めた。


「……」


「……何だコイツ……、馬鹿か?」


ケンジは無言になり、松本は一言漏らした。


「何だオッラーン!! アタイより歳取ってる男がするような対応か!?」


イブキは闘争本能をむき出しにしていた。




「うわぁーん! 宝箱開けたーい! 宝物欲しーい!!」




「ッチ! コイツ……」


「待て、イブキ」


タクヤに向かって行こうとしていたイブキを、松本の右腕が止めに入った。


「どうしたマツ〇ンサンバ? アタイを止めようってのかい? いい度胸だ」


「俺は松本だ。イブキ、パーティ内では決闘は禁止だ。ここは穏便に済まそう」




「うわぁーん! 宝箱開けたーい! 宝物欲しーい!!」




「……仕方ない。アタイが大人になってやろう……」


そして――、


『タクヤは650コインを手に入れた!』


「よっしゃー! 無いと気になるコイン達! そして有るに越したこたぁねーぜ!!」


水を得た魚の様に元気になるタクヤだったが、連合パーティの三人の反応は冷ややかだった。




「フー、やれやれ」


「……」


「フぃー、これで満足かえ? 小坊主」




ケンジ、松本、イブキはウンザリとした様子を身体全体で示していた。




「とりあえず、神殿周回! 完了!!」




『おー……』


タクヤと三人の温度差は、台風でも発生しそうなほど開いていた。

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