第十六話 ダンチ(断然違う)の攻撃力
『イブキのターン:スキル――、かめは〇波』
「食らいやがれ――!! オッラーン!!」
『ヒット! クリティカル!! ギガゴーレム1、HP:0/150、ギガゴーレム1は倒れた!』
「ちょっと待て――!!」
ここでタクヤがツッコミを入れる。
「かめは〇波って何だよ、かめは〇波って……作品違うだろ、オイ」
「倒したんだからいーじゃん☆」
「イブキちゃん……(とんでもないヤツを仲間にしてしまった……?)」
(漸く気付いたか、タクヤ……しかしもう遅いぞ……)
そっと想うケンジは、臨戦態勢に入る。
「素早さステータスは、松本ってヤツよりも俺が上のようだな……行くぞ!!」
『ケンジのターン:戦う――、光の剣』
ここでタクヤが声を上げる。
「ケンジ! 斬撃系統はゴーレム系には効かないぞ!! 以前タケヒコがそれで苦戦している!」
「ぶえっくしゅん」
その頃タカヒロ(ゲーム内ではタケヒコ)は現実世界の自宅で盛大なくしゃみをしていた。
「? ……。風邪か?」
舞台は再びゲーム内に――、
「分かっている、タクヤ!! だからこそ光の剣を使うんだ!」
ケンジは光の剣を頭上に構える。すると剣はカッと輝き、その光はギガゴーレムを襲った。
『ヒット! クリティカル!! ギガゴーレム2、HP:0/152、ギガゴーレム2は倒れた!』
「お……、おお!」
「分かったかタクヤ、この剣は斬撃だけが取り柄じゃない。クリティカル要らなかったかもな(と、いうコトにしておこう……)」
ケンジは少々、見栄を張りながらもギガゴーレムを圧倒した。
「タクヤとやらよりも、俺の方が速い様だな。なら、行かせてもらう……」
『松本のターン:戦う――、右ストレートで分からせる』
「憤怒ぁああっ!!」
「ゴッ!!」
『ヒット! クリティカル!! 効果は抜群だ! ギガゴーレム3、HP:0/151、ギガゴーレム3は倒れた! ギガゴーレム達を倒した! 経験値と復活の薬草×2を手に入れた!!』
「! ……(レベルを上げて、物理で殴る……だと?)」
「! ……(俺、最近出番無くね?)」
ケンジとタクヤはそれぞれ思いを巡らせた。双方、違った側面で戦況を見ていたが、双方、胸中穏やかではなかった。
――、
タクヤ達パーティ四人は、3つの宝箱の前に鎮座している。
「じゃあ、じゃんけんだな……」
タクヤは宝箱の中身の所有権をじゃんけんで決めようとしていた。
「全部アタイのモンだ! オッラーン!!」
「まあ待て、イブキ。敵が3体居た。宝箱が3つ。これは戦って倒したヤツがもらうべきだろう」
「松本が言っていることが正しい。何も言えないな、タクヤ。俺らで1つずつ貰うわ」
「じゃ……じゃんけんだよー!! ケンジぃ! 俺の素早さステータスが高かったら倒せてたっつーの(泣)!」
「タクヤ……」
「!」
「それも含めて、実力だ」
「ゴーン」
ケンジの一言は、タクヤの胸に深く突き刺さった。
それを目の当たりにしたイブキは、意気揚々と魔法を使おうと目論む。
「おっ、ホストプレイヤーのタッくんが死にそうだ。アタイの回復魔法が必要か?」
「MPの無駄遣いだ、イブキ。こんな役立たずに回復魔法を使ってやるまでも無い」
「ズキューン!!」
松本の一声も、タクヤの胸に深く突き刺さった。
『タクヤ、HP:0 /273、タクヤは倒れた』
「おっ、アタイの出番か?」
「イブキとやら、お前に借りを作るまでも無い。あーもう! このヘタレが!」
『ケンジは復活の薬草を使った! タクヤ、HP:204 /273、タクヤは復活した!』
復活したてのタクヤはケンジに礼を言う。
「け……、ケンジ悪いな……。仕方ない、宝箱はお前らのモンだ。俺は退くぜ」
「トーゼン!」
「わっぷわぷ」
「当たり前だな」
ケンジ、イブキ、松本はそれぞれタクヤに返した。と、ここでイブキが左手を上げ、叫ぶように口を開いた。
「ハイハーイ、宝箱開ける順番も、ゴーレム倒した順にしなイカ!?」
「(語尾が安定しない奴だな……)だ、そうだ。俺は構わないが、どうする? 松本とやら」
「ケンジと言ったな、俺も相違ない。余り物に福があると、いうコトもあるしな」
「そうか……分かった」
ケンジと松本は、口約束を穏便に済ませた様子だった。