第十四話 遂に現れた、奴ら
前回からの続き――。
雪山のモンスター図鑑を完成させたタクヤは、次は突拍子もなく展示場の装備アイテムを集めたいと言い始め、クエストを受ける離れで武器を買いまくった。
当然、金欠になり、次なる冒険はどうしようかと、ケンジとタクヤは始まりの村タクヤの実家の母屋の前で腕を組み、会議をおこなっていた。
「全く……。少しは考えて金を使いやがれ」
「へへっ、わりーわりー」
「さて……次はどこでコイン集めするかだが……シンプルに、神殿が良いか? 宝箱が多く出現するから――」
ケンジが次の言葉を発する直前、二人の目前がぱぁーっと光り出した。
「! 何だ!?」
「恐らくオンラインのプレイヤーだ、タクヤ」
光が消え、そこに現れたのは――、
「俺は松本だ!」
「アタイも居るぜ!」
何と、松本とイブキだった。
説明しよう! 松本とは常に学ラン、マスク着用、黒髪短髪、身長185cm、体重100㎏、金持ちで少し不幸な漢、いや、男である。
更に説明しよう! イブキとは女? とおぼしき生命体で中性的な容姿をしており、妖精である。お風呂が大好き。
「何だ! テメェ!!」
「物凄いデカい奴と、物凄い小さい奴が出てきたな」
ケンジは感情的に、タクヤは冷静に出てきた二人に反応していた。
「あ? あぁぁああん!? アタイが小さいだとぉぉおお!? こなクソぉぉおお!!」
「黙れな」
闘志をむき出しにするイブキに対し、松本はそれをクレーン車の様に持ち上げ自分の肩に乗せた。
(コイツら……何者だ……? )
ケンジは徐に、現れた二人のステータスを確認するコトとした。
『松本、松本:Lv56、HP:564/564 (ころし)』
「なっ!? デカい方はレベルもHPも俺より上だと!!?(てか、役職と名前が松本って何だ?)くっ、小さい方はどうだ……?」
『妖精、イブキ:Lv……、HP:3/3』
「HP、3だと? アハハハハハ!! コイツぁ傑作だな!」
イブキのHPを確認したケンジは、声高にイブキを馬鹿にしていた。
直後――、
「待たれ」
「!?」
イブキがケンジを右手で制止させ、言った。
「旅の者よ、よーくステータスを見るのじゃ」
「何が言いてぇ!? まぁ見てやるか」
ケンジはイブキのステータスを凝視した。
「『妖精、イブキ:Lv……100!?』レベルがMAXだと!!? っは! 他のステータスは……? 『守り』と『魔力』、『魔防』と『素早さ』がMAX!! どうなってやがる!?」
「落ち着けケンジ、デカい方は謎だが、小さい方は見たところ引きニート並にゲーマーと見受けられる。発売日から今日までゲーム三昧だったんだろう。ステータスが高いのは、恐らくその為だ」
「あ……ああ、タクヤ。悪い」
タクヤの一声で、ケンジは冷静さを取り戻した。
「それにしても――、」
「ああ、ケンジ」
((めちゃくちゃバランスの悪い二人だな))
「松五郎! アタイ、これから宝探ししたい!」
『!!!』
タクヤとケンジは、イブキの一声に反応した。
「俺は松本だ。そうかイブキ、神殿にでも行くか?」
『!!?』
タクヤとケンジは、更に松本の一声に反応した。
「! ……」
その二人に気付いた松本が、二人の方へと近付いて行った。そして二人に話し掛ける。
「何だ? お 前 ら も 神 殿 に 行 く の か ?」
(あ……、圧が……)
ケンジは松本の全身から溢れ出る圧に圧倒された。
一方でタクヤは――、
「あっ、そうなんスよ。俺らも神殿に行こうかって話してたところで……松本さん? でしたっけ。俺、タクヤって言います。コイツはケンジ……」
(なっ!? タクヤはこの圧に動じないのか……? 俺がビビっているのか……!? この俺が……!!)
ケンジはナチュラルに明るく接するタクヤを目の当たりにして、激しく動揺していた。
「ケンジ!」
「!」
タクヤがケンジに呼び掛ける。
「俺ら、松本さん達と一緒に、神殿行くコトになったから!」
「なっ!? タクヤ! 勝手に決めん……」
「それじゃあ、行くぞー」
「待てタクヤ! 俺を置いて行くなぁー!!」
かくして、タクヤ、ケンジ、松本にイブキは、パーティを組み、神殿へと赴くコトとなった。