第十三話 瞬殺
「フルフレイム!」
ノノはとある洞窟の中、バトル外でフルフレイムを使った。その辺にあった枯れ木を集め、それに炎を付けたのだ。メラメラと揺らぎながら燃える炎。パーティは焚き火を囲う様に炎を囲い、小休止をとった。
「あったけぇ……」
「ですね」
「うんうん♪」
「……」
タクヤ、ノノ、セルジュは口々に言うが、ケンジは一人、だんまりだった。その様子に気付いたタクヤが、ケンジに声をかけた。
「ん? どうした、ケンジ? あったかくないのか? ノノ、もっと火力を上げ――」
「そんなことはどうでもいい!!」
『!?』
ケンジが不意に、怒鳴るように大声を出したので、パーティは静まり返った。
「な……? 何だよケンジ」
「いいかタクヤ、それにお前ら! モンスター図鑑を埋めると言ってはいても、こんなところで道草食って……、そんなので図鑑を完成させられると思っているのか!?」
ケンジは現状に不満を持っていたらしく、パーティに一喝を入れた。
「思っているのかと、言われましても……」
ノノは一言漏らし、視線をタクヤの方へ向けた。そのタクヤは、向けられた視線を逸らす様にセルジュに視線をやった。
「あー、そーだなー。図鑑は完成させる予定だけど……だなぁ……」
「大丈夫だよ♪」
「!」
「!!」
「!?」
声を上げたのはセルジュだった。セルジュは前髪をクルクルと回しながら続ける。
「タクヤは、とっても運が良いんだ♪ ここで足踏みするのも、何かに繋がる……ハズだよ♪」
「ハズだと!? そんな曖昧な言葉、信用できるか!!」
「ま……まぁそんなに怒るなよぉー、ケンジぃー」
タクヤがケンジをなだめていると、タクヤの背後に薄っすらとモンスターの影が――、
「! タクヤ、後――」
「スパッ!」
『スモールフットを倒した!』
「え、何?」
(速い♪)
セルジュがタクヤに声を掛けようとした、まさにその一瞬だった。
ケンジは装備していた光の剣で、スモールフットを一刀両断したのだった。
「コォォ……」
断末魔を上げたスモールフットはフィールド上から消えていった。ケンジは光の剣を右肩に担ぎ、言うのだった。
「ステータス差における1ターンキルだ。もちろん、知っているだろうけどな」
その設定を忘れかけていたタクヤはセルジュに同意を求める。
「知ってるよ……なぁ? セルジュ」
「うん♪ でも、言った通りになったね」
「!?」
「『タクヤは、とっても運が良いんだ』ってね」
「! ――」
ケンジは極まりの悪い思いをして、口を閉じてしまった。セルジュとケンジのやり取りを見ていたタクヤは、空気を変えようと、明るく話し始めた。
「まー、いーじゃねーか! スモールフット? も晴れて図鑑入りだ」
「ですね! 早速検索しましょう」
ノノはモンスター図鑑を開き、スモールフットの項目を確認した。
『スモールフット:名前のまんま、ビッグフットというUMAが小さくなった様なモンスター。その小ささと相まって、影が薄い……』
「……」
ノノはそっと図鑑を閉じた。
「きょ……今日はこのくらいにしておきますか? 雪山の、タクヤ君の図鑑埋め終わったコトですし……」
「晩ご飯の時間も近いしね♪」
「――だ、そうだ。タクヤ、どうする?」
ノノ、セルジュ、ケンジが口々に言う中、タクヤは暫く俯いた後、口を開いた。
「ノノ、セルジュ……。今回は、本当にありがとうな……」
「!」
「♪」
タクヤの意外な言葉に、ノノとセルジュはピクリと反応する。
「前回、ストーリークリアまでって言っておきながら、また協力してくれて……ホントにありがとう……」
「まーたセンチ・タクヤ君が登場ですか?」
「!?」
ノノが口を大きく開きながら言う。
「タクヤ君はぁ……そうですね。『俺の招集に従い、これからも手となり足となって働きやがれー!!』って感じで居ればいいんですよ。柄にもない」
「そうそう♪」
セルジュも口を挟む。すると、タクヤは小声で答えた。
「あ……ありがとう(俺って弱くなってる?)あ! ケンジ。お前もいつも……、今日も……ありがとうな」
ケンジは両手を軽く上げ、手のひらを見せた。
「俺も、タクヤの強引さにつられてゲームしてる感じだ。でも、トロ臭い様ならパーティを抜けさせてもらうぜ?」
「あ……ああ!」
タクヤが元気を振り絞って声を上げたところで、今回のプレイングは終わるコトとなった。