第十二話 解雇
「コイツらが……、強い?」
ケンジは開いた口が塞がらないと、いう感じだった。続いてセルジュが口を開く。
「そう♪ ノノちゃんはフルフレイムに、ライジングサンダーといった大技を出せるし、回復魔法も使える♪ タクヤは高い攻撃力とHPが持ち味で、ドラゴンバーンも使える♪」
「な……!?」
ケンジは只々、驚愕していた。一方でノノとタクヤはへーんと、腰に手を当て自信満々に構えていた。
「ノノは高レベルの攻撃魔法を……!? 更にタクヤはドラゴンバーンだと……? あの時、使ってなかったぞ」
タクヤと戦ったときの光景が、ケンジの脳裏をよぎった。
(回想)
「俺はタクヤ。役職は、ドラゴンマスターやってんだ」
ケンジは数秒、目を丸くしたが、すぐに冷静な笑みを浮かべて言った。
「まさかお前が上級役職の、ドラゴンマスターやってるなんてな。その実力、見せてもらおうか……」
「おう! 望むところよ!!」
2分後――、
「ぐえー」
「キュー」
『タクヤ、HP:0 /273、タクヤは倒れた』
タクヤとその乗っていた龍は、目を×印にして倒れていた。
(回想終了)
「タクヤ!! なぜあの時ドラゴンバーンを使わなかったんだ!? 答えろ!!」
ケンジはすぐさま、タクヤに問い掛けた。するとタクヤは右人差し指で鼻の下を擦りながら、はにかみ笑顔で答えた。
「へへっ。なんつーか、本気でケンジを倒そうなんて思えなくてな」
ケンジはその言葉に対し、血相を変えて叫ぶように言う。
「これは……! ゲームの世界だぞ!! 現実世界で死ぬわけではないし……」
「それでも」
「!」
「“アレ”を使う時は、相手が熱いとか恐いとか思っちまうんじゃないかって、たまに心配しちゃうんだ……だから、使わなかった」
「……」
タクヤの根っこにある優しさに触れ、ケンジは言葉を失った。しかしこの発言に釈然としない者が――、
「うーん……」
ノノである。
(確か以前、リーダーは誰か、決める際にタクヤ君はタカヒロ(タケヒコ)君をHP0にして、倒してるし……。あ、でもドラゴンバーンをプレイヤーに対して使ったことは無い――か。それでも、良識的なタクヤ君は、らしくない――)
「ノノちゃん、何考え事してるの♪」
「!」
ここでセルジュがノノに話し掛けた。
「なっ……、何も考えちゃいませんよ!」
「ふーん♪」
何かあるなと、考えるセルジュだった。
また一方で、タクヤとケンジの会話は続いている様で――。
「へへっ」
「……(こんなヤツ、今までの人生で出会ったコトが無い)タクヤ!」
「?」
「今後、ゲームする際はこのパーティに付いて行ってやる。面白いものが見えそうだからな」
「ん? ああ、よろしく」
ケンジとタクヤの二人は、コツンと拳と拳を交わした。
――、
「じゃあ、パーティは基本、四人だから……」
「じゃあ、一人抜けないといけないんだな、ケンジ」
「そういうコトだ、タクヤ。誰が抜けるかだが……」
「じっ」
「じっ」
「じっ」
「じっ」
「ぬらぁー」
タクヤ、ケンジ、ノノ、セルジュは皆、ダイスライムをジト目で見つめた。
「全会一致、だな」
「そーみたいだな」
「ぬっ……ぬら! ぬらぁ!」
ケンジとタクヤは、ダイスライムを牧場へ引っ張って行った。
「で、だ!! 今回攻略していくのは!」
「攻略していくのは!?」
タクヤが目標を切り出し、ノノが合いの手を入れるように質問する。
「それは……!」
「それは!?」
「あの!」
「あの!?」
「まさかの!」
「まさかの!?」
「しつこい♪」
「ゴン☆」
セルジュは装備していた杖で、タクヤの後頭部を殴った。
――、
「――で、なんでこんなに寒いとこに来たんですかー!?」
ノノが文句を言う中、一行は雪山に来ていた。タクヤはノノ対して、一言返す。
「モンスター図鑑を埋めるためだよーっと、あーしばれるのぅ」
「タクヤぁ、おじいさんみたいになってるよ♪」
(あー、懐かしいねぇこの感じ。ノノにセルジュ、ここにタケヒコが居たら……でも今はケンジが居るし、良しとするか)
タクヤがしみじみとしている中、パーティはスモールフットを見つけに雪山を探索する。