96話 映像素材として使います
〜ナステックside〜
全てが地獄のルーレットで唯一の活路を見いだした私は、<豪運のネックレス>を手で包みこみ必死に祈った。
「神様お願いです。敬けんな使徒である私に、どうか”無期限放映”を当てさせてください! 後で寄付を贈りますから、ぜひ……」
その願いが通じたのか、赤黒いルーレットはゆっくりと私が望むところで動きを止める。
「よしっ、当たりだ!!」
<−−− 厳正なる抽選の結果、部屋番号6番の方に課されるミッションは、地獄”無期限放映”に決定しました。準備を行いますので暫くお待ちください −−−>
良かった、やはり<豪運のネックレス>を装着している私は運がいい!!
しかし……クソッ、安全が確保されたら逆にイライラしてきたな。
いきなり「ルール外の危ないルーレット」を始めて、このナステック様を脅かすんじゃねぇよ!
<−−− 部屋番号6番の方には、今から24時間ゴーレムとアブノーマルに交わっていただき、その様子を撮影させていただきます −−−>
「はい?」
<−−− その後できあがった動画……および先ほどのペナルティー動画を、ダンジョン内のモニターで定期的に配信します。期間は定められておりません −−−>
「えっ、ナニソレ? 要するに……私が尻をシバかれ泣いている映像と、ゴーレムに<ピー>される様子が、オアシスフロアに住む貧民の娯楽となる……?」
全然当たりじゃなかった……理不尽すぎる、もう一度ルーレットをやり直せ!
そんな目に遭うくらいなら、<ウ◯コ砲>を顔面にくらう方が100倍マシだ!
この前ハイドン様が、「<恵のダンジョン>のオアシスフロアには、約15000の貧乏人が住みついている」と言っていた。
そいつらに私が辱めを受ける様子を、際限なく見られるなんて……ダメだ、絶対に許されることではない!
「り、リタイアだ! 私はここでリタイアする! 300万ロル払えばいいんだろ? 誰が<ピー>の動画なんて撮らせるか!? 持っていけ泥棒!」
成果一つない状態で逃げ帰ったら、ハイドン様に殴られるのは確実だし……本攻略で、ロミオット・ホムビッツより冷遇される可能性も高い。
だが公衆の面前で、尊厳を潰されるよりはマシだろう。
金ならやる、いくらでも払ってやるから……さっさと私をここから出せ!!
<−−− 申請を却下します。ルールにより、挑戦者がリタイアできるのは、”新たな部屋へ移動してからルーレット代を支払うまでの間”となっております −−−>
「いや、そんなの知らないし……」
<−−− リタイアなさる場合は、無期限放映ミッションをクリアしたあと、” 第6の試練”へ移動してから申し出てください −−−>
そっ、そんな……このままでは私が、税金すら払えず逃げた貧民の笑いモノになってしまうではないか!
<−−− なおミッションルールに従い、使用する道具は全て無料貸し出しいたします。使い回しの品ですが、存分にお楽しみください。ミッション開始 −−−>
「アギャアァァッッッ!!!!??」
「グスッ……私の<ピー>が…………。ヒゥッ…………」
そのあと24時間、散々な目に遭わされた私は……<第6の試練>に入るなり、300万ロルを支払ってリタイアした。
だが傷ついた心はズキズキと痛むし、メグミとオアシスフロアの連中を皆殺しにしたとて、尊厳を取り戻すことなど出来ないであろう。
「あっ、ルール説明のパネルがある。大地獄……」
失意のなか目に入ったソレを読んでみると、たしかに<大地獄ルーレット>の詳細が書かれていた……豆粒みたいなサイズの文字でな。
〜大地獄ルーレット〜
<地獄>と<大地獄>の選択しかない恐怖のルーレット。
発動タイミングは不定期で、その時々の”お題”により挑戦者が一人選ばれる。
ルーレットに挑戦した者は、<地獄or大地獄>のミッションを受ける代わりに、達成後かならず次のフロアへ進める。
なお……ミッションに使われる道具は、全て無料で貸与される。
「知るかよグスッ……こんなの、普通気付かねぇだろ……! せめて大きい字か、赤線で書いておけよ……」
なぜメグミの浅慮に、この私が翻弄されねばならぬのだ!!
やり場のない悔しさに涙しながら、地上部へ戻った私を待っていたのは、「ムダな金使ってんじゃねぇよ! 最後まで行け!!」というハイドン様の叱責。
そして……<天国と地獄フロア>で受けた心の傷をさらに抉る、「敵前逃亡のペナルティー」執行宣言だった。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)