91話 偵察しにきた魔王は
「ただいま! 執事君、状況を教えてくれ。現場はどうなっている?」
「メグミ様、お帰りなさいませ。今のところ被害はございません」
サーシャへ事情を伝えて<未設定のダンジョン>を離れ、自分のダンジョンに戻ると、監視役のオートマタがモニターを指差した。
「警戒区域に入ったのは、今映っている私と同種のオートマタ1体……デザートバード1体のみです。どちらも戦闘力は低いため偵察だと思われます」
オートマタ(執事タイプ)
ランク:A
所属:王佐のダンジョン
維持費:3000ポイント/日
詳細:高い事務処理能力を持つ機械仕掛けの人形。戦闘力は一般人レベルだが、家事や仕事のサポート役には向いている。
デザートバード
ランク:D
所属:王佐のダンジョン
維持費:50ポイント/日
詳細: 砂漠に生息する体長3mほどの鳥。力強い風切り攻撃で、地面の砂を巻き上げ目潰しを仕掛けてくる。また、敵の目玉をクチバシで突く習性があるため、近付かれると非常に危険。
「ふむ。王佐のダンジョン所属ってことは、<負け犬トリオ>の一人……ホムビッツの配下だな。あるいは、名前バレしたくない先輩の代理?」
<オートマタ>と<デザートバード>の組み合わせを選ぶあたり、ホムビッツ一人の考えとは思えないから……
何らかのチカラでモンスターと視界を共有し、こちらの様子を伺っている”新人狩り”が、実質的な偵察者だろう。
「マスター、あの2体を倒しますか? 戦力的には可能と思われます」
「いや、そのままで構わない。下手なアクションを起こして敵に情報を与えるのは嫌だから、どこかへ行くまで放っておこう」
「かしこまりました」
今日は問題ないとして、<負け犬トリオ>がこのダンジョンに押し寄せた場合、オアシスフロアはまた入れ替えとなる。
底意地の悪いロミオットに惨殺されるより、余程マシとはいえ……心の準備ができていないと住民も困惑しちゃうから、一応連絡だけ入れておこう。
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状況を把握したメグミが、オアシスフロアの住民へ手紙を書き始めたころ……”新人狩り”の同盟チャットに、新たなコメントが書き込まれた。
2075 名前:クルス(27期)
ダメだ、全く反応がない!
オアシスフロアに声が届く位置まで行っても、誰一人不審な動きを見せねぇよ。
2076 名前:ハイドン(10期)
ふむ、そうか……。
残念だが、事前調査は失敗だな。
クルス、偵察用のモンスターを引かせてくれ!
2077 名前:クルス(27期)
了解!
ちょいムカつくから、命令ついでにホムビッツ殴ってくるわ。
まったく……新人なら、もっと可愛らしく隙見せろっての!
“新人狩り”を得意とするハイドン・クルス・アリスは、ホムビッツ配下の偵察役と視界を共有することで、<恵のダンジョン>を探ろうとしたのだが……
メグミが一切動きを見せなかったため、0階層と普通の砂漠の境界線を見つけ出すのに失敗。
チョッカイをかけた時の警戒度も、調べる事ができなかった。
2078 名前:アリス(30期)
う〜ん……さすがに、無一文同然の状態から這いあがった男だけあるわね。
ねぇ〜ハイドン様。
やっぱり、メグミ君を狙うの危険じゃない?
中途半端に手を出して恨まれると、後々たたるわよ。
2079 名前:ハイドン(10期)
その危険はあるが……奴が討伐軍から得たポイントを使う前に、<改造阻害>をかけておきたいんだ。
ダンジョンの階層が深くなってからだと、攻略の難度ははね上がるからな。
2080 名前:クルス(27期)
そうそう。
12階層までのフロア情報が筒抜けになり、アイツがダンジョンを拡張していない今がチャンスなんだ!
実際に命を賭けるのは、ロミオット・ホムビッツ・ナステックの馬鹿トリオだから、そこまで怖がる必要ねぇよ。
2081 名前:アリス(30期)
うん、そうよね。
有望な新人は、小さいうちに潰さなきゃ抜かれちゃうもの!
余計なことを言ってゴメンナサイ(^_^;)
三人とも、あえて口には出さないが……
ミッションの順位争いでメグミ・サーシャ同盟に負けている事や、<未設定のダンジョン>襲撃にかかった費用も、撤退をためらう原因となっている。
そう。
サーシャが今相手をしている、サーザンド王国軍……実はハイドンと繋がっている権力者がおり、ソイツが安全地帯から聖女を差し向けたのだ。
とはいえ……聖女の派遣には相当額の賄賂が必要となり、ハイドンをもってして「やり過ぎたか?」と思う出費となってしまった。
2082 名前:ハイドン(10期)
クルス、馬鹿トリオの調子はどうだ?
きちんと煽っておいたか?
2083 名前:クルス(27期)
もちろんっスよ!
魔王サーシャの名前を利用して、ガッツリ嫉妬心を刺激しておいたぜ。
2084 名前:ハイドン(10期)
よし、それで良い。
では……<恵のダンジョン>の具体的な攻め方について、話し合うぞ。
「メグミが腐るほどある金を使い、ダンジョンの拡張を終わらせている」とはつゆ知らず……馬鹿トリオにどう攻めさせるか、真剣に策を練る三人の魔王。
彼らの会議は、結局”明け方”まで続いたのだった。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)