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80話 何重にも張られた罠




 僕は魔王としての通常業務をこなしつつ、5〜6階層にある<クイズ付き分断迷路>の突破を遅らせるため、新しい”問い”を考え続けた。


「ハァ〜。サーシャの協力で良い”問題”は増えたけど、高等学舎に半年通っただけの僕たちと、エリート教育を受けてきた奴らじゃ知識量が違う!」



 残念な話だけど、専門家10人にチームを組まれた以上……難しい問題だけで突破を防ぐのは、半日が限界だ。


「クイズのストックは2000問以上あるから、”正面から誰でも突破できる状態に”という、奴らの希望は叶わないけどね」



 ぶっちゃけた話、好き放題<クイズ付き分断迷路>を突破したければ……今でもトラップを逆手にとり、自爆戦術でスライムプールを潰すのが最善。


 僕も対策は打っているけど、上層階でそこまでコストをかけられない以上、限界があるのだ。



 これを伝えたら、”死んだ駒の連中”は発狂するかもしれないが……アソコでは「ある程度時間をかせぎ、敵の数を減らせればラッキー」と思っているよ。


 だからと言って”管理をサボる”つもりはないし、モチベーションが上がるイベントを利用して、クイズのストックを作るのも止めないけどね。






6639 名前:サーシャ(78期)

 メグミ君、ポイズンスライム送ったよ〜。

 ウチの状況は相変わらずだから、貯まったポイント使い切ったら<恵のダンジョン>へ行くね^^

 一緒に、夜ご飯食べよ♪


6640 名前:メグミ(78期)

 ありがとう!

 万一があると大変だから、ゴーレムへの指示だしは徹底で(^_^;)

 サーシャ、愛してるよ^^


6641 名前:サーシャ(78期)

 私も愛してる♪



 全問正解による、「クイズフロア突破」を狙うのは勿論のこと……


 奴らは「当然」と言わんばかりに、誤回答でスライムプールへ落ちた兵士を自爆させ、スライムを削ってくる。



 そのためポイズンスライムの減りが激しく、対処しないで放っておいたら、2〜3日でプールが枯れてしまう状況だ。


 ゆえにコチラは……下層部にある<モンスターの渦>や、サーシャのダンジョンで余ったスライムを使い、減った分の補填をしているよ。



 今はまだ5階層にいる敵の数が少ないため、<渦>の供給速度をMaxにすれば、追加費用ナシでスライムプールを維持できる。


「敵が”消費と供給”のバランスを崩し、スライムプール6つを全て潰すためには……駒となる”死兵”をあと40人……」


 空っぽにしたスライム部屋の維持・5階層のスタート地点にある拠点の管理等を考えると、最低でも100人くらいの頭数が必要だ。



「うん、平気! <天国と地獄フロア>で泣いている連中が合流するまでは、まだ大丈夫。ギリギリまで奴らを妨害し、少しでも多くお金を稼ぐぞ!」


 それが魔王の仕事だし、僕とサーシャの将来にも繋がるのだから。






「メグミ君、お仕事お疲れさま〜♪ 汚物フロアへの誘導は、まだ使わないで済んでいる感じ?」


「サーシャもお疲れさま! アソコへの誘導は……全ての仕掛けが潰され次第、順次おこなう予定だから……あと7日はかかるんじゃないかな?」



「そっか! はい、ご飯どうぞ〜」


「ありがとう」



 <未設定のダンジョン>で生み出されたスライムを、プールの補填に回してくれたサーシャが、夕食を取るためコチラへ合流。


 ペットボトルに入ったジャスミン茶を、美しいティーカップへ注ぎ……めちゃくちゃ美味しい惣菜、「うなぎの蒲焼」とともに出してくれた。



「メグミ君、たしか……クイズフロアを全問正解で通過した人が、汚物フロアも突破した場合も、罠の行き先を9階層へ変える……って言ってたよね?」


「うん、場合によっては! 追い詰めるためのトラップを利用されると癪だから、敵が9階層をどう突破するか見た後、一番いい案を選ぼうと考えている」



・7〜8階層にある毒スライムプール

・規約に触れないギリギリを攻めた半密室の油プール

・汚物スライダーで行く地獄への旅



 選択肢は3つとも一長一短あるし、ショートカットに利用されると<恵のダンジョン>が誇る、「体力を奪うほどの灼熱地獄」の効果が半減してしまう。


 だから……この”切り替え”は極限まで温存して、敵の策を知ってから、それに合わせて使うべきだと思うんだよね。






「ふふっ、冷徹なメグミ君もカッコイイなぁ〜。もし彼らの勢いが強くて、22階層のオアシスを落とされそうになったら、地上の自販機を消すんだっけ?」


「あぁ、消すつもりだよ。動くとしても三国の本軍が到着して、補給ナシじゃ対処できない状況になってからだけど」



 対策されているであろう9階層までは、突破されてもいいんだ。


 だけど……その下にある難所が落とされた場合、僕は本気で奴らを追い出さなくてはならない。


 そのため、最終手段として「自販機消し」を考えているのだ!



 一度コレを実行すると、お金の発生源がダンジョンから去ってしまう上に、次回以降の襲撃が手強くなるが……


 0階層と1階層の自販機を消し去り、現金で水を買えなくすることで、最初の一回だけは確実に助かるんだよ。



 水の供給源を断たれた軍が、干上がる兵士を多数抱えながら、砂漠の真ん中に留まることなどできないし……


 上層部が対策を講じたところで、喪失感から怒りっぽくなった兵士が、必ずトラブルを起こすもの。



「ペットボトルは猛暑の中で放置すると、水が気化して弾け飛ぶ。だけど……ソレを恐れて封を開けると、水が腐るからこまめに買うしかない」


「マジックバッグで保管しようにも、時間経過のない物は”ダンジョン攻略組”へ渡さざるをえないから、攻略が本格化すると難しくなるし」


「そうそう。時間経過ありのマジックバッグじゃ、普通に腐るんだよ」



 今のところコンダック准将は、自販機の水をアテにしつつも……10日分の予備水を、時間経過のないマジックバッグに保管している。


 だけど本軍が合流して保管の負担が増え、自販機に慣れきってしまったら、徐々に気を抜き自滅するはずだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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