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73話 討伐軍=課金サービスを利用するお客様




 幹部格の近くに、「かくまう旨を書いた手紙」が入った宝箱を出現させると……彼らは慣れた手つきで箱を開け、メッセージを読み始めた。


『ふむ。敵に情報が漏れぬよう、信用できる仲間にしか話さないでね……か。ダンジョンの深部にかくまって、裏切り者が出たら困るもんな』



『あぁ、その配慮は当然だ! 怖いのは一つ……ここの魔王は"俺らを守ってくれる"というが、コイツに命を預けてもいいのか? だってよぉ、魔王だぞ?』


『そりゃあ分からん。”階層入れ替え”とか言われても、バカな俺には想像つかんし……。だが、これだけは確かだ!』



『何だよ?』


『このオアシスで生きると決めた以上、俺らは魔王と心中するしかないって事だ! それが嫌なら、出て行けばいいわけだしな』



 不安そうにしていた人々が、クリークの言葉を聞き決意を固める。


 自分の意思で、<恵のダンジョン>に住み着いた人達だもん……「動く・動かない」は自己責任、って判断になるよね。



『俺は逃げねぇぞ!』


『えぇ。もし魔王の助けがなくても、自分達だけで討伐軍を撃退する! 救いがあれば神……いや、魔王様に感謝。これでいいのよ』


『あぁ、ここのオアシスは俺らの家だ。魔王の思惑がどうあれ、家を守るのは当然だな』



 その後も彼らの会議は続いたが、悲壮感ただよう”お通夜ムード”から、前向きな”戦略モード”に変わったし、僕が介入した意味はあったと思う。


「大丈夫だよ。全員必ず……とは言えないけど、貴方達のことは守るから」



 利害の一致とはいえ、オアシスフロアの住人は<恵のダンジョン>の一部だし、その生命力も認めている。


 毎度助けをアテにされると困るけど、<裏切り者>が続出する展開にならないかぎり、僕は彼らを見捨てたりしない。






 会議が終わるまで集会所を監視して、住民の方針を確認した僕は……今日やる分の仕事を終わらせ、ご飯を食べにきたサーシャとラブラブした。


 今は二人で夕食をとりながら、1階層へ差しこんだ<天国と地獄>フロアについて、情報共有しているところだ。



「なるほど! メグミ君のダンジョンは階層が多いから、1階の<天国と地獄>フロアは”集金特化”にしたんだね」


「そうそう。”振り落とし用”の階層は下にあるから、まず”金よこせ!”と思ってさ〜」



 地上のすぐ下にある<天国と地獄>フロアは、基本的にサーシャのダンジョンと同じ造りだけど……ウチの特性を活かした、オリジナル要素もある。


 一番の特色は、「集金目的の自販機設置」かな?






〜ドリンク自販機&ポーション販売システム設置〜


 僕の懐を潤わせるべく、入り口に<キャッシュポイント>を用意。


 過酷な環境でガンガン金を使わせ、無一文になるまでカモる方針だ。


 なおポーションは、立地的に安値で入手できるサーシャから1本1000ロルで仕入れ、10倍の10000ロルで販売予定。


 砂漠の真ん中にしたって高すぎる、正真正銘の”ボッタクリ価格”だけど……尻が痛すぎて課金するバカも、一人くらいはいるだろう。




〜ルーレットの地獄に<ウ○コマン>追加〜


 当たった瞬間、四方から問答無用で「ウ○コ砲」が発射され、侵入者のやる気を極限まで削ぎ落とす。


 そして、髪に絡まったウ○コを洗い流すため、水を求める連中から自販機で金をむしるのだ!




〜24時間・昼間の砂漠仕様〜


 創造コストを削減しつつ、侵入者を干からびさせることで、自販機への課金を狙う。


 なお……足元は”疲れやすさ”を意識して、サラッサラの砂にしてあるよ。




〜送金ルート完備〜


 1ロルでも多くむしり取りたいので、1階層の<天国と地獄>フロアは、スタート地点から送金可能なシステムにした。


 もっとも、送金手数料が100%かかるので……送った金額の半分しか受け取れない、ボッタクリ仕様だ。


 念のために、サーシャが導入した<100ロル=お尻ペンペン1発>の鬼交換レートも、用意してある。


 ただし水とポーションは、尻叩きじゃ買えないから……ご利用は計画的に……だ。






「ふふっ、よく考えられてるなぁ〜。侵入者にはなりたくないけど、ダンジョンマスター的にはオイシイ仕組みだね」


「でしょ? ちなみに……オアシスフロアと入れ替える予定の22階層にも、ドリンクの自販機は置いてあるから、金と食料が続くかぎり滞在できるよ」



「ねぇメグミ君。それって……討伐軍がダンジョンへ到着したら、炎天下の砂漠に、課金用の自販機がポツンと立っているってこと? シュールだ」


「ううん。自販機と汚物回収用のトイレが、ポツンと立っている状態! 無くなったら足すだけだから♪」


「うわぁ〜」



 たとえダンジョン攻略をもくろむ討伐軍だろうと、ウチの(課金)サービスを利用してくれるなら、大事な"お客様"だ!


 僕にお金が入ってくる状態なら、何日間滞在してくれても構わないから、皆好きなだけ課金してくれ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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