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72話 新生活と外敵襲来の知らせ




 ハンカチにサーシャの顔を刺繍して返したら、彼女はそれを頬にスリスリしながら、「一生大切にするね♪」と言ってくれた。


 手先は器用な方なので、一応形にはなったけど……



 洗練されているわけでもない素人の作品を、無邪気に喜ばれると気恥ずかしいし……それでいて嬉しく思う。


 次プレゼントする時は、女性が欲しがりそうな物をサプライズで贈れるよう、センスのいい男になりたいな。



「……ぅみゅ……ぅ…………」


 先程まではしゃいでいたサーシャは、「メグミ君の匂い好き!」と言って、ハンカチを握りしめたままベッドに入り、スヤスヤと寝てしまった。



「今考えると、合流した時着ていた白いワンピースは、彼女なりの”勝負服”だったんだろうなぁ〜。最初から、ご飯のついでに”食う!”と決めていた?」


 あのとき、サーシャも緊張していたのかな?


 女の子の感情は複雑だから、全てを察することはできないけど……怖い気持ちもあっただろうに、告白してくれて嬉しいよ。



 サーシャは男爵家に引き取られた後、「上級貴族を落とすために育てられた」と言っていた。


 つまり、「金・権力こそ正義!」な教育を受けてきたわけで……それとは真逆の僕にアプローチするのは、理的な障壁もあったんじゃないかな?



「め……ぅみ……く……ん…………。おへ……そ…………」


「おぉ、寝言で僕の名前……。どんな夢見ているんだろう?」



 「育ちが違う」と、心のどこかで”高嶺の花”的なイメージを持っていたが……今のサーシャは、”等身大の女の子”に見えて可愛らしい。


「サーシャ、大好きだよ。勇気を出してくれてありがとう。一生大事にするね」



 人間社会から隔離された、って理由もあるだろうけど……彼女は自分の意思で僕を選び、気持ちを伝えてくれたんだ!


 その決断を後悔させぬよう……僕はサーシャに相応しい、カッコ良く優秀な魔王になる!


 そして生涯、彼女を守り続けるぞ!






 新たなる決意を胸に刻み、夜通し働いた僕は……起きてきたサーシャと一緒に朝食をとり、彼女と二人で生活スペースの改築を始めた。


 今後は、互いのダンジョンを行き来する機会も多くなるから……双方に

“お泊り”の部屋を用意した上で、食器も二セット分揃えたよ。



「じゃあ、また夜7時に来るね! ラブラブしながらご飯食べよう♪」


「うん。敵が来ちゃったらアレだけど……そうじゃなければ、6時30分までに仕事終わらせておくから」


「私も〜♪」



 対面でじっくり話をした結果、サーシャも「グロ耐性が強い」と分かったので……今後は敵が来たら、二人で撃退すると約束した。


 普段は責任を持って自分のダンジョンを守るけど、万単位の人間に攻められた場合など、徹夜での強行軍になる可能性が高いからね。


 そういう時、交代で見張りをしてくれるパートナーがいるだけでも、負担はかなり減ると思う。



<−−− チュッ♪ −−−>


「あっ……!」


「メグミ君、また夜にね〜♪」



 サーシャは「本能で動く思春期男子を籠絡する」ために、少し偏ったテクニックを学んできたようで、僕へのアプローチも”激しめ”だ。


 正直、一緒にいるとカラダが保たないんだけど……大切な恋人の個性だから、慣れるしかないよね?



 手を繋いだりキスをしたりと、積極的に好意を示してくれるサーシャの姿は、煩悩が止まらなくなるくらい愛おしいし……他の奴には、絶対見せたくない!


 だけど、嫉妬に狂う男なんて嫌われちゃうから、僕もスマートに対応できるような、カッコイイ大人になるべく精進するよ!






 少しイチャイチャしてから彼女と別れ、魔王としての業務を行なっていると……


 オアシスフロアのリーダー格が集まる、住民の定例集会が始まり、元冒険者をまとめる男<クリーク>が問題を提起した。


 ついに、周辺諸国が動いたのだ。



『皆、心して聞いてくれ。ヴィッチネント王国の正規軍が、もうすぐロマーニュオアシスへ到着する。それに合わせて、貴族の私兵団も集まっている状況だ』


『『『『『『『『『…………』』』』』』』』』



『奴らは人数が揃い次第、ロマーニュオアシスを起点にココを制圧し……それを足掛かりとして、ダンジョン攻略に挑む方針。当然、俺たちは粛清される』


『俺もあの街に残っている、悪友から聞いたんだが……奴らはマジで、ココの住民を全滅させるつもりらしい。冒険者の惨状を見て、方針を固めたんだと』



『私も、昨晩相手した商人に言われたわ。”ちょっと離れたアムラージュオアシスにも、サーザンド王国の兵が集まっている”って』


『ウチも、行商人から聞いたで! 規模は小さいけど、モートランド皇国も動くみたいよ』



 ふむ……スタンピードの処理を終えた周辺諸国が、ウチのダンジョンに大集結……か。


 それだけ派手に動くってことは、9階層をどうにかする秘策も用意しているだろうし、全面戦争になりそうだな。



 とりあえず軍の姿が見えたら、オアシスフロアは即時「22階層と入れ替え」だ。


 どれくらいの規模になるかは、分からないけど……国3つを相手して生き残れるほど、住民の戦闘力は高くないからね。



「彼らも、それは充分理解しているからなぁ。今のところ逃げ出す気はなさそうだが、皆恐怖で顔色が悪い。今僕にできることは……よしっ!」


 もう一度、「階層入れ替えるから大丈夫だよ」とメッセージを送り、彼らの”悲観ムード”を和らげよう。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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