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65話 帰りも真心込めて<お・も・て・な・し>


〜とある軍人side〜




 あの後俺は2日間かけ、やっとの思いで<天国と地獄フロア>を突破した。


 13回も<お尻ペンペン>を引いたせいで、ポーションは使い切ってしまったし……後半治せなかったケツと、精神もボロボロだ。



「ハァ……。罰金なんてカワイイもんだったぜ」


 もう二度と、捨て駒まがいの先鋒は務めねぇぞ!



 気を取り直して、降りた先の階層を確認する。


「ここが、冒険者共の言っていた<浮雲フロア>か。たしかに、橋のような”雲の道”がある」


 人数的に考えて……奴らがココを発見した時には、まだ<天国と地獄>フロアは無かったのだろう。



 景色だけなら「壮大な自然」という感じで、冒険心をくすぐられるが……目の前の惨状を見ると、そうも言っていられない。


 俺と同じくポーションを使い果たし、"ケツを腫れあがらせた状態"でここへ来た野郎どもが、うつ伏せで寝転がり泣いているのだ。



 “各試練”定員の違いこそあれ、<戻る>と<尻叩き>は必ず入っていたから……平らにならすと、一人1000発くらいシバかれているもんな。


 ポーションの配給数が少ないヒラ隊員が、むせび泣くのも無理はない。



「だがなぁ、お前ら……俺よりずっと早く着いたんだから、先に行って調査しておけよ! 状況が状況とはいえ、給料もらっている以上……」


「無茶言わないでくださいよ、ハンストン隊長! ここから先はマジで死にそうだし、斥候が誰も来ていないから調査できないんです!」



「はぁ!? マジかよ……」


 言われてみれば、ルーレットは完全に運だし……任意の奴を、連れて来られるわけじゃないもんな。



 仕方ない。


 斥候が来るまでココで待機して、ケツの痛みを和らげよう。






「ククッ。サムリーズン中佐。一番初めに突っ込んで行ったのに、無様だなぁ〜。昨日会った時は、随分と情けない姿をさらしていたが……まだ"お尻"は痛むのかい?」


 チッ……来やがったな、性格最悪の”顔だけ男”!



ハンサム・コッペンハート(24)

種族:人間

職業:アスピック侯爵軍中佐

HP:2714/2714

MP:391/391

スキル:剣術B・体術C・絶倫C・火魔法F・水魔法F・土魔法F・風魔法F

ギフト:強運

その他:称号 (お嬢喰い)



 コイツは有力貴族<コッペンハート家>の五男坊で、アスピック侯爵の一人娘……というか侯爵家次期当主の座を狙って、”カマルの街”で働いている。


 イケメンなうえ強運持ちで、俺より年下のくせにスルスルと出世しやがった、鼻につくクソ野郎だ。



「コッペンハート中佐か……。お前と違って、俺は<強運ギフト>を持ってないからな。無傷って訳にはいかないさ。あと俺の方が先輩だ。敬語を使え」


「ふんっ……年上のくせに”中佐止まりの凡人”を、敬う必要などない。そのうち俺の部下になる運命なんだ。お前こそ、今から敬語の練習しておけよ」



 くそっ、相変わらずムカつく野郎だな。


 何かの弾みで、ゴーレムに尻を叩かれればいいのに。






「さてと……サムリーズン中佐、本題だ。准将閣下に先鋒を命じられたのはお前だが、ウチは余力を残している。斥候が来たら、俺たちが先に行っても?」


「別に構わねぇけど……この階層、もしくは次のフロアの調査にとどめるぞ? こういう言い方をするのはアレだが、先行したって大した手柄にゃならねぇよ」



「ん? 行けるだけ進むに決まってるだろ。お前ら”サル尻隊”と違い、俺たちの小隊はポーションを残している。後から来る斥候にも、分けられるくらいにな」


 マジかよ、コイツ……以前から”常識なし”だと思っていたが、本物のバカだった。


 ポーション数本で、この”根性ひん曲がりダンジョン”を攻略できると、本気で思っているのか?



「ハァ……。下階層にも似たようなフロアがあったら、その時点で詰むぞ? 今回は<浮雲フロア>の情報収集にとどめ、回復魔法師を連れて再チャレンジだ」


 俺は帰った時点で「今回の責任をとって謹慎し」、このダンジョンが攻略されるまで、自分のケツを守りきるけどな。



「なるほど、確かに一理ある。貴様に従うのは業腹だが、死んだら”栄達”の夢も終わりか……。仕方ない、<浮雲フロア>の調査だけして戻ろう」


 おぅ、お前は現場責任者として……これからも上司に、「予算と人材の消耗」を責められ続けてくれ。






 隊員たちと、ケツをさすりながら待つこと一日……ついに<浮雲フロア>へ、斥候スキルを持つ男が到着。


 この階層の調査も終わり、撤退できる状況となった。



 また尻をシバかれると思うと泣きたくなるが、留まっていても餓死するだけだし、「戻って報告」以外の選択肢はない。


 “勤め人”とは、誠に残酷なものである。



「ん? <浮雲>フロアからの帰り道は、別のルートも用意されているのか。どれどれ……」




〜多数決の道・ルール説明〜


その1:部屋の中に一人ずつ入り、お金を入れて<多数決>をしてください。二人以上で入ると、生存者が一人になるまで扉がロックされます。


その2:”各試練”一度に30人まで参加でき、10人以上集まれば、定員に満たなくても<多数決>を行えます。


その3:<多数決>で選ばれた者がミッションを完遂したら、参加人数関係なく、全員次の試練へ進めます。


その4:同じ試練を受けている仲間の様子は、部屋に設置されたモニターで常時確認できるよ。励まし合いながら先へ進んでね!


その5:<10の試練>を突破した先に、上層階へと続く階段があります。貴方は何日でクリアできるかな?




「なるほど。皆で先へ進めるのは助かるな。おぃ、お前ら全員部屋へ入れ! 今ここにいるのは27人だから、一斉に行くぞ」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」



 <浮雲フロア>にいた隊員全員で、”多数決の道”を選択し……覚悟を決めて部屋へと入る。


 すると、扉をロックされる音が聞こえ……それと同時に、「投票装置」と書かれた物体が床から現れた。



「ふむ。全員の姿を映し出す、クソ不愉快なモニターは健在か」


 今回、俺に割り振られた番号は……11番だな。



<−−− 第1の試練を開始します。参加者27名の中から、生贄を3名選んでください −−−>


罰金10万ロル:1名

激辛料理完食:1名

お尻ペンペン:1名



「ほぅ……? これはなかなか、オツですなぁ〜」


 俺も、同僚や部下に疎まれているから、餌食になる可能性は高いが……それ以上に……



<−−− 受付終了。投票結果を発表します。対象者は速やかにミッションを遂行してください −−−>


罰金10万ロル:23番(14票獲得/27人中)

激辛料理完食:11番(15票獲得/27人中)

お尻ペンペン:7番(20票獲得/27人中)



「7ハンサムざまぁ〜! 強運ギフトでルーレットは回避できても、”多数決”による罰ゲームは防げねぇぞ!」


 お前も”お尻ペンペン地獄”に落ちて、惨めな姿をさらしやがれ!!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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