64話 費用の他にも心折れるポイントが……
〜とある軍人side〜
俺はハンストン・サムリーズン、29歳。
騎士爵家の生まれであり……サーザンド王国西部にある地方都市”カマル”で、軍人をしている者だ。
今日は街の近くで発見されたダンジョンを、早急に攻略するため、領主の命で風車小屋までやってきた。
「なんだと? 崖と浮雲ではなく、10人以上いないと参加できないルーレットがある? くそっ、冒険者どもめ……デタラメな報告上げやがって!」
討伐軍の小隊長を務める俺の隣では、大隊長の老害<ハムブルク准将>が、斥候部隊の報告を聞き激怒している。
小銭をあさる浮浪者と大差ない、冒険者ふぜいの情報などアテにするからだ!
こういうのは、俺たち正規の部隊だけで処理すりゃいいんだよ。
「ハァ……仕方ない。ハンストン中佐、小隊メンバーとともに突っ込め! 人海戦術で、ダンジョンの内部構造を確認する」
「かしこまりました!」
来たぜ先鋒、出世の大チャ〜ンス!
俺はこの薄汚いダンジョンを踏み台にして、”カマルの街”を治めるアスピック侯爵の目に留まる。
そして、兄貴たちを追い出し……騎士爵領を継承するんだ!
掃除ロッカーの中にある”隠し階段”を、隊員とともに下へ降りると……「天国と地獄フロアへようこそ!」という看板および、ルール説明のパネル板。
そして、ダンジョンの始まりであろう10個の扉が目に入った。
〜ルール説明〜
その1:部屋の中に一人ずつ入り、お金を入れてルーレットを回してください。二人以上で入ると、生存者一人になるまで扉がロックされます。
その2:各試練、部屋の数は異なり……全ての部屋が埋まらないと、お金を入れてもルーレットは回りません。
その3:<地獄>の選択肢を引き当てた者全員が、ミッションを完遂したら、「扉解放」を引いた者だけ移動することができます。
その4:同じ試練を受けている仲間の様子は、部屋に設置されたモニターで常時確認できるよ。励まし合いながら先へ進んでね!
その5:<10の試練>を突破した先に、下層階へと続く階段があります。貴方は何日でクリアできるかな?
「なるほど。准将閣下が顔をしかめたのも納得だ。実際に見ると、厄介極まりねぇ」
ルーレットへの参加料が、一人一回10000ロルなのも痛いが……
それ以上に……次の階層へ進むために、「扉解放」を10回引かなきゃいけない点がヤバすぎる!
上手いことハムブルク准将へ責任を押し付けなければ、経費の使いすぎで始末書を書かされ、俺の評価にケチが付いちまうよ。
つーか……
「ルーレットの内容も酷いもんだ。”アタリ”がほとんど無いじゃねぇか!」
〜第1の試練・ミッション一覧〜
<天国>
・前の扉解放。次のルーレットへ進んでね♪
・返金対応。参加費が返ってくるよ!
・スライムジェル贈呈。ツヤツヤ髪を目指そう!
・ホウキ贈呈。掃き掃除に便利だよ♪
・タワシ贈呈。頑固な汚れもピカピカに!
<地獄>
・罰金10000ロル。魔王ちゃんに貢いでね(^ ^)
・頭上から油。や〜ん、テカテカになっちゃう!
・腕立て100回。目指せ”逆三角” (^ ^)
・スクワット100回。根性・根性・根性!
・お尻ペンペン。くらえ、100叩きだ〜!!
「罰ゲームの内容も、あおり文句も……全てが癇に障る!」
このふざけた仕組みを考えた魔王を、今すぐ地上へ引きずり出して、拷問したい気持ちでいっぱいだ。
「ふぅ〜、落ち着け。このダンジョン攻略は、俺の将来がかかった一世一代のチャンス。プラス思考で考えるんだ」
10個のルーレットが、”全てこんな感じ”と仮定すると……<天国と地獄フロア>は、金と人数さえそろえれば高確率で突破できる。
人員を消耗することなく下層階へ進めれば、俺が一番乗りでダンジョンコアを破壊し、魔王の首を持ち帰ることも可能。
「お前ら、ルーレットの参加費は軍が持つ! 身体的苦痛をともなうミッションは、仕事のうちと諦め……全員で力を合わせて突破するぞ!」
「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」
待っていろ、根性ひん曲がったクソ魔王め。
俺が貴様を”手柄”と”報奨金”に変え、有効活用してやるからな!
<−−− 地獄ミッション・お尻ペンペン、完遂です。扉を解放された者は移動してください −−−>
「グスッ……グスッ…………」
経費を使って10回ルーレットに参加、現在<第5の試練>へ挑んでいる俺だが……もう帰りたい。
普段から鍛えている方だから、腕立てやスクワットはなんて事ないが……ケツ丸出しで行われる<尻叩き>が、言葉にできないくらい辛すぎる!
モニター越しで部下に見られている状態で、部屋に押し入ってきたゴーレムに、泣くまで引っ叩かれるんだぞ?
こんなの、誰だって心折れるだろう!
逃亡しようにも、”小隊長”という立場がそれを許さない。
いや、逃亡以前に……
この<天国と地獄フロア>、”後ろの扉解放”をルーレットで引き当てないかぎり、戻ることすら出来なかったな。
<−−− 参加者7名が揃いました。ルーレットを開始します −−−>
「頼む! 次こそは、”扉解放”か”返金対応”きてくれ! もうケツを叩かれるのは嫌だ!!」
〜第5の試練・ミッション一覧〜
<天国>
・前の扉解放。次のルーレットへ進んでね♪
・返金対応。参加費が返ってくるよ!
・ホウキ贈呈。掃き掃除に便利だよ♪
・タワシ贈呈。頑固な汚れもピカピカに!
<地獄>
・後ろの扉解放。残念、逆戻りです……。
・罰金10000ロル。魔王ちゃんに貢いでね(^ ^)
・お尻ペンペン。くらえ、100叩きだ〜!!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)