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61話 死のメッセージ




 見るからに糞尿と分かる代物が、9階層全体に堆積しており、その上をウジやハエがせわしなく動いている。


 メグミ君がモニターを切っていたのは、食事中に、このグロい映像を見ないようにするためだったのか。



「もし対策なしで突っ込んだら、生還できたとしても変な病気にかかりそう。富裕層出身者が多い魔法師にとっては、天敵みたいなフロアだわ」


 多額の懸賞金をかけられたにも関わらず、未だ<恵のダンジョン>が、8階層までしか攻略されていない理由が分かったよ。



「砂漠の真ん中で、コレを用意できたってことは……生産者は、オアシスフロアに住む人たち……だよね?」


 私にこのフロアの存在を伝えなかったのは、メグミ君なりに「女子だから」と気遣ってくれたのかも。



「ん〜。孤児院で暮らしてた頃は、くみ取り式のトイレ使ってたし……ドブ浚いでお駄賃を稼ぐ年長組もいたから、全然平気なんだけど……」


 蝶よ花よと育てられた良家のお嬢様だったら、卒倒するのは確かだな。



「あれ? 18階層のモニターもOFFになってる。おぉ、なるほど……ここは、”ゴミ溜め”フロアなんだね」


 ここのブツも、オアシスフロア産なのかな?


 いずれにせよ……



「メグミ君のところで余ったブツを買い取れば、ウチのダンジョンの防御力も上がる! さっそく交渉してみよう♪」


 “下品な女”だと思われたら悲しいけど……こんなにコスパの良さそうな防衛策を、私情優先で切り捨てるなんて勿体ないからね。




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〜メグミside〜




 状況確認とゴーレムへの指示出しを終えた僕は、コアルームの空いている場所に寝袋を敷き、横になって猛りを沈めていた。


 ベッドに比べると寝心地は悪いが、乙女の私室に入るのは申し訳ないので……初心を思い出して、ミッション終了まで寝袋生活するよ。



「أغرق شراسة والتنوير. عندما يستعيد عقله، وقال انه سوف تكون قادرة على الأمل في مزيد من النمو كرجل.」


 くそっ……いくら暗唱用の呪文をとなえても、ムラムラが収まらないぞ。


 ミッション終了後に、報告されたら人生詰むから……サーシャに服従しているゴーレムの前で、”ガス抜き行為”を披露するわけにはいかないのに!



「仕方ない。まだ昼だけど、今日はもう寝よう。熟睡して記憶をボヤけさせない限り、この状況を打破する術はない」


 大丈夫、深い眠りに落ちて悟りを開くんだ!



 “絹織物作製”と”アリの巣の管理”は、ゴーレムが自動でやってくれるので、全部任せておけばOK。


 フロアの把握もできているし、侵入者がきたらアラームが鳴る設定にしてあるから……今は全て忘れて、”猛り”が落ち着くまで爆睡しろ!






「ふわぁ〜、気分爽快! よく寝た〜」


 8時間ガッツリ睡眠をとり、欲に打ち勝った僕は……生活スペースの端にあるトイレで用を足してから、モニターの前に座り管理画面を開いた。


 魔王界隈の情勢は、数日で変化することも多いから、ミッション中でも日課の情報収集は欠かさないよ。



「あれ? サーシャからメッセージが届いている。僕が寝ている間に、マズイ事態でも起こったのかな?」


 慌ててモニターの表示を”同盟ページ”へ切り替え、同盟チャットの最上部にある、彼女からの連絡を確認する。



 すると……


「はぁ? 私のダンジョンにも組み込みたいので、余ったゴミと汚物を売ってください……!?」



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5188 名前:サーシャ(78期)


【お願い:私のダンジョンにも組み込みたいので、余ったゴミと汚物を売ってください】


 メグミ君へ。



 さっそく、<恵のダンジョン>の内部を拝見させてもらいました。


 どの階層もコスパ抜群だし……細部まで工夫が盛り込まれていて、改めてメグミ君の賢さが分かったよ。



 特に9階層の”汚物フロア”と、18階層の”ゴミ溜めフロア”が、費用対効果抜群で素晴らしいと思いました!


 そこまで大きな額は払えないけど……ウチのダンジョンにも上記のフロアを組み込みたいので、ゴミと汚物が余ったら売って欲しいです。



 私のダンジョンでは、風の要素を組み込んで……流れる汚物プールと、間違えたら汚物砲が炸裂するクイズ。


 より強烈なニオイをかもしだす、”ゴミ溜めフロア”を創るつもりです。



 図々しい依頼ですが、ご検討よろしくお願いしますm(_ _)m


 サーシャ



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「ギャアァァッッ〜!! 初日でバレた上に、じっくり見られてる〜!? どうしよう、どうすればっ……!?」


 僕の尊厳は、今日死んだ!


 このままじゃ、サーシャが抱く僕のイメージが、”ウ◯コマン”で定着してしまう!



 だってさ……彼女は、傍流とはいえ元貴族のお嬢様だぞ!?


 メッセージには「勉強になった」云々書いてあるけど、内心ドン引きしてるに決まっているじゃないか!?



「うぅ……穴があったら入りたい。なんて返事すればいいんだろう?」


 性欲を鎮火している間に、それより何倍もヤバイ問題が噴出してしまった。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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