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60話 サーシャは禁断のボタンに手をかける




 悶々と悩んだものの、結局いいアイデアは一つも浮かばず……根城交換の時刻を迎えてしまった。


 サーシャと会えるのは嬉しいし、正直”役得”だとも思うが、”ウ◯コマン”襲名だけは避けたいところだ。



「え〜っと……同盟アイテムページから<転移陣>を選択して、1000万ポイント振り込み……っと。これで合流手段は確保できたから、サーシャへ連絡を……」


 ウジウジしていても仕方ないので、約束どおり<転移陣>を購入し、彼女のダンジョンとコアルームをつなぐ。



 幸いにもこのアイテムは、利用者を限定できる仕様だったから……


 もし今後強大な戦力に目を付けられて、僕のダンジョンが落とされても、彼女の方に被害は及ばないよ。



「あっ、サーシャから転移陣接続の承認きた! ふぅ〜、いよいよ根城交換が始まるのか……。緊張するなぁ〜」


 今は”陥落時の安全性”なんかより、”汚物フロアの秘匿問題”の方が、はるかに重要なんだけどね。






「メグミ君おはよう! 来てくれて嬉しいよ。改めまして……78期魔王のサーシャです。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」


 覚悟を決めてサーシャのダンジョンへ向かうと、コアルームに入った途端フワッといい香りが広がり……スリッパ姿の彼女が出迎えてくれた。



 彼女は、ダンジョン内で育てた花をコアルームに飾っているらしく……


 僕の所と同じはずの”四角い空間”は、色鮮やかな花瓶と絹織物が並ぶ、女の子らしいスペースになっているよ。



「朝早く押しかけちゃってゴメンね。こちらこそ、よろしくお願いします!」


 サーシャが、挨拶すると同時に手を握ってくれたので……僕も失礼にならぬよう、笑顔で言葉をかえす。



 正直……この10秒だけで脳内が煩悩だらけになり、カラダも反応してしまったのだが……


 わざわざ高いポイントを払って、アイテム一覧から”パツパツの下着”を複数枚購入し、重ね履きしてきたので、視覚的にはバレていないはずだ。



「じゃあ、積もる話もあるけど……それはミッションクリア後に置いておいて、とりあえず根城交換しようか」


「うん! 慣れないダンジョンで強敵を迎え討つのは、互いに大変だもんね。メグミ君、10日間<未設定のダンジョン>をよろしくお願いします!」



「もちろん。何が何でも死守するよ! <恵のダンジョン>の管理で分からない事があったら、マニュアル読むかサポート役のゴーレム君に聞いてね」


「了解! じゃあ、また10日後に……ミッション達成のお祝いで、一緒にご飯食べようね♪」



「うん! サーシャとゆっくり話せるの、楽しみにしてます!」


 だけど困ったなぁ……彼女が微笑むだけで反応する、この無節操な下半身……どうしたらいいんだろう?




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〜サーシャside〜




 メグミ君と久しぶりに再会した私は、彼のドギマギした様子にキュンとなり……少しでもいい印象を持ってもらおうと、コミュ障なりに頑張った。


 本当は根城交換する前に、もう少し話したかったんだけど……外部環境は刻一刻と変化するので、私情より魔王の仕事を優先するのは当たり前。


 私はこれから10日間、キッチリと彼のダンジョンを外敵から守り……その成果をもって、慰労会の権利を勝ちとるよ!



「ふわぁ〜! メグミ君、相変わらず”尊かった”なぁ〜。ちょっと前かがみになってたから、来る直前まで仕事をしてて背中が凝っていたのかも」


 ミッションを行うため彼と別れ、<恵のダンジョン>のコアルームに入った私は……先ほどの姿を思い出しながら、サポート役のゴーレム君に一礼。


 異常がないか確認したのち、今日から10日間暮らすことになる、メグミ君の私室へお邪魔した。



「おぉ……! シンプルだけど清潔感のある、デキる男の部屋って感じだ! ふふっ。私があげたヌイグルミ、ちゃんと飾ってくれてる」


 飾り気のない棚の上に置かれた、メグミ君と私を模した2つのヌイグルミは、彼の優しさを現しているようで、見ていて幸せな気分になるよ。



「ベッドは……ちょっと失礼! “変態さん”みたいだけど、どうせ夜には入るんだし……いいよね? くふふっ、メグミ君の匂いがする」


 気を遣ってくれたのかシーツは”下ろしたて”だったけど、マットレスにほんのりと彼の香りが残っており、少し生活感を感じることができた。



「メグミ君も、私のベッド嗅いだりするのかなぁ? ちゃんとシーツは変えてきたけど、匂い残ってたら恥ずかしいかも」


 今さらだけど、この”根城交換ミッション”……男女でやるとエッチだよね?






 脳内がピンクに染まると、仕事にならないため……冷水で顔を洗ってから、コアルームに戻って管理モニターを確認。


 今のところ異常はないみたいだけど……いつ何が起きても対処できるよう、各階層の構造やトラップは把握しておきたいからね。



「ふむ。マニュアルにあるとおり、8階層までは人が入っているんだな。あれ? 9階層の様子が見えない。メグミ君、モニター置いてないのかなぁ?」


 いや、オフになっているだけだ。



「冒険者がいない区切りの階層だから、あえて表示を消していたのかも。それ、ポチッとな……!?」


 軽い気持ちでモニターのON・OFFを切り替え、メインモニターに9階層の様子を表示させると……目の前に、「地獄絵図のような光景」が映しだされた。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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