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52話 地獄を見た「坊ちゃん」の他力本願




 改善すべき点が明白になったので、5〜6階層の設定をいじる準備として、新たに組み込む180題のクイズを考える。


 侵入者がいるフロアは更新できないルールなので、仕様変更はタイミングを見て……という形になるが、事前準備なら何時でもできるからね。



「儲かっている大店の商人が、愛人を連れてオシャレなレストランに入りました。その店のスタッフが、一番初めに持ってきたものは何でしょう? ……と」


 ダンジョン深部にある”迷路クイズ”より、悪辣な作品を完成させるため、僕は持てる能力をフル稼働して、意地悪な”問い”を量産しているよ。






「ぷはぁ〜、頭脳労働後のミルクティー最高! 30問作れたから一休憩しよう。しかし……ホント、彼らが”汚物フロア”で止まってくれて良かったよ」


 クソ塗れとなった<グリフォンの牙>の5名は、意気消沈した足取りで、4階層<灼熱の岩石フロア>を移動している。



 先ほどゴーレム君が指摘したように、Aランクパーティーとは思えぬ醜態を晒しているから、その気になればトドメを刺すことも可能だけど……


 作戦どおり僕らは一切手出ししないので、この調子で歩みを進め、自力でダンジョンから立ち去ってくれ。



「”汚物フロア”の噂が広まり侵入者数が減ると、装備や殺害ポイントはゲットできないけど……日々の安寧に比べれば、安い対価だからね」


 僕はこれからも、アリの巣・絹糸生産・オアシスフロアで安定したポイントを稼ぎ、堅実なダンジョン運営を行なっていくつもりだ。



「くくっ。今はまだ汚物の量が足りないから、9階層しか”肥溜め化”できていないけど……今回の件で、有効性は確認できたからなぁ」


 オアシスから供給される汚物が余りだしたら、”汚物フロア”を別の階層にも設置して、水没エリアならぬ”便没エリア”を作ってみよう。



 ハエや寄生虫がうじゃうじゃ湧いている”汚物フロア”は、ポイントを浪費することなく、”恵のダンジョン”と相性が悪い水属性を組み込めるうえ……


 生物の滞在ポイントも稼げるから、とってもコスパの良い投資なんだよ。






 クイズ作りしながら、見守ること2日。


 変わり果てた姿で、地上に戻った<グリフォンの牙>5名は、驚いて近寄った冒険者へ”汚物フロア”の脅威を伝え……



 「何事か?」と集まってきたオアシスフロアの住民に、「ダンジョン側が用意したトイレを使うな!」と命令し始めた。


 どうやら頭がイかれたらしく……今後ダンジョン攻略に挑む冒険者のために、同じ人間として配慮しろ……という考えみたい。



「人間サイドで協力って建前は、まだいい。だけど……いくら綺麗事を吠えたところで、”トイレ使うな”は通らないでしょ」


 冒険者を足止めできればと思って生かしたのに、ここまで斜め上な主張を展開し出すとは思わなかったよ。



「控えめに言って”他力本願”のお坊ちゃん。たぶん……惨めすぎて、帰りの道中で精神病んだな」


 徒歩1分のところにある共同トイレを避け、もよおす度にオアシス外の砂場へ排泄しにいく優等生は、初めから魔王経営のオアシスに住まないって。



『図々しいにも程がある! 自力でダンジョンを攻略出来なかった”ウ◯コマン”が、言い訳してんじゃねぇよ』


『肥溜めの中で、脳ミソまで発酵したんだろ? 頭の中にウジ湧いている、としか思えない暴言だ』



 案の定<グリフォンの牙>5名は、オアシスフロアの住民から”ウ◯コ戦隊”という蔑称をつけられ、「トイレを使うな」という妄言はスルー。


 利害関係の異なる住民はおろか……同業の冒険者にも、「敗者乙」と嘲笑われているよ。



 報酬目当てに集まった冒険者の中には、貯金する余裕がなく大怪我で引退したら食えなくなる、微妙な立場の人も多いから……


 成果を出せなかったエリートの、他力本願きわまりない主張に、反感を抱かないわけがないよね。



「まぁ9階層到達を狙える高ランク冒険者や、生まれの良さそうな連中は危機感を持ったみたいだし、彼らを尻込みさせるキッカケにはなったはずだ」


 彼らには……“臭い”という建前で、短期滞在者用アパートへの出入りを断られた、<グリフォンの牙>5名を反面教師にして……


 ダンジョン外にある衛生的な場所で、クリーンな冒険者生活をおくっていただきたい。






「さてと……。自爆したバカのことは放っておいて、僕は新しいクイズを作ろ……」


<−−− 同盟チャットにメッセージが届いております −−−>



 あっ、サーシャから連絡だ!


 彼女がこの時間に、チャットしてくるのは珍しいな。


 どれどれ……



4613 名前:サーシャ(78期)

 メグミ君。

 今ちょっと時間いいかな?


4614 名前:メグミ(78期)

 もちろん!

 ソッチで何かあったの?


4615 名前:サーシャ(78期)

 うん。

 実は……盗賊が、0階層の風車小屋に住みついちゃってさ。

 出ていく気配がないんだよね(^_^;)


4616 名前:メグミ(78期)

 えっ、大丈夫!?

 ケガとかさせられてない?


4617 名前:サーシャ(78期)

 うん。

 コアルームに引きこもっているから平気だよ^^


 ただ、彼ら派手に活動しているから……

 被害報告を受けた組織が、討伐隊を派遣するのは時間の問題かも。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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