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51話 メグミはAランクパーティーを利用する


〜とある冒険者side〜




「「「「「…………」」」」」


 会話もないまま来た道を戻り、8階層へと続く扉が開くのを待つ。



 ここの魔王は、世界で一番の"クズ野郎"なんじゃないか?


 俺たちは、ダンジョンを攻略しに来ただけなのに、何故ここまで傷付けられなきゃならねぇんだ!



 もう二度と、こんな場所には潜りたくないが……


 俺以外の勇敢な戦士によって、一日でも早く”う◯こ魔王”が討伐され、世界が平和になることを祈るよ。



「よし、3時間経ったぞ。石板も復活した!」


「全員さっさと登れ! 今すぐ、この地獄から脱出する!」



 人生のなかで最も屈辱的な3時間が終わり、ようやく見えた希望の光。


 チームワークなど消え去った俺たちは、押し合うように石板へ乗りうつり……力いっぱい扉の"開閉ボタン"を押した。



 ギギッ、ギギィッ……


「あぁ! 地面にクソが溜まってない、普通の通路がある! やったぞ、俺たちは地獄から生還したんだ!!」



 ここの扉は三重になっており、途中でモタつくと罠の餌食となってしまうため……全員、争うように先へ進む。


 すると、8階層へ直接つながる扉の中央にある、ダンジョン特有の四角いパネルが点滅し……



<−−− 貴方たち臭いです。8階層が汚れるので、身綺麗にしてから脱出してください −−−>


 という、不愉快極まりないメッセージが表示された。



「「「「「ふざけんな! 文句があるなら、こんな”肥溜めフロア”創るんじゃねぇよ!!」」」」」


 やっぱり、このダンジョンの魔王はとんでもないクズだ!




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〜メグミside〜




「ふわぁ〜、アイツ等……ようやく帰ったか! あぁ、疲れた〜」


 破格の報酬に釣られて集まった冒険者を、ゴーレムにマニュアル通り処理させていたら、いきなり突破者が出て焦ったよ。



 引き続き"他の侵入者"を殺させつつ、”監視機能”で彼らの様子を観察したところ……


 パーティーメンバーの一人が、特殊なギフト持ちであると判明。


 その”視覚同調ギフト”で様子を探り、僕が作業をゴーレム任せにしている隙に、メンバー全員で正しい'答え"を導き出したようだ。



「彼らの中にも召喚士が混ざっていた。8階層までのフロア情報は、全て冒険者ギルドへ流れたと見るべきか……。また、対策しないとな」


 僕は"召喚スキル"持ちじゃないから、その応用についても、授業で習った範囲しか知らないけど……



 伝達用モンスターを複数人に従属させ、冒険者ギルドで雇われた召喚士が、一定時間毎にそいつを召喚する仕組みになっているらしい。


 そして現場へ出向いた召喚士が、「メッセージを送りたい」と思ったときは……


 そのモンスターを呼び出し、手紙を持たせて召喚解除することで、”いつでも・好きな時に”情報をやり取りできるそうだ。



 絶対数が少なく貴重な召喚士を、急を要する危険な場所へ送りこむ事になるため、よっぽどの緊急事態じゃない限り、使われないはずなんだけど……


 僕のダンジョンには、"2人目"が来訪。


 しかも、強いパーティーメンバーを引き連れてだし……目の敵にされているとしか思えないよ。



「一応、対処法はあるんだけどね。1000万ポイント払って、特定のフロアに”召喚不可機能”を盛り込めば、その階層でのやり取りは防げる」


 だけど恐ろしくコスパが悪いし、どうせ設置するならコアルームに近い深層の方がいいから……上層階のネタバレは対処療法で済ませるよ。






「今回突破された原因は、部屋ごとに”問い”が固定されており……”全問正解の答案”を作り易かったから。だったら、問題数を増やせばいいよね」


 クイズを”100題”くらい用意して、ランダムで表示される仕組みに変えよう。



 それならカンニングペーパーを用意するのに、途方もない労力が必要だし……定期的に問題を作り替えれば、各人で解くしかなくなるはずだ。


 もちろん今まで通り、"行き"と"帰り"は別ルートで、異なる"問い"が出題される仕様にするよ。



「クイズ迷路は”要改善”だが、9階層の汚物フロアは、目論見どおりの結果を生み出してくれた。お坊ちゃん冒険者には、下品な”おもてなし”を」


 今回みたいな突破のしかたは、予想外だったけど……



 もし全問正解者が現れるなら、ソイツは学業優秀で貴族階級出身の可能性が高い……と思っていたんだ。


 平民出身の冒険者は難しい計算などできないし、それ以前に"字が読めない奴"も多いからね。



 だから敢えて9階層に、”お坊ちゃん対策”の汚物フロアを置いた。


 今回のゲストは、1/4ほど進んだ辺りで全員リタイアしたし、もう二度とこのダンジョンには潜らないと思う。



「マスター。キュウカイソウ……キタ、ニンゲン……ヨワッテマス。シマツ、シマスカ……?」


「ううん。ゴーレム君、あの5人は攻撃しないで。彼らは大事な”生き証人”……。悪臭がこびり付いた、惨めな姿で地上へ戻り、”汚物フロア”の威力を宣伝してもらわないと」


「カシコマリマシタ」



 Aランクパーティーが、”汚物フロア”での実体験を話せば、他の冒険者も恐怖でダンジョン攻略をためらうはず。


 殺害ポイントは惜しいけど……それよりも今は、リアリティーのある”足止め役”になってもらうよ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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