<< 前へ次へ >>  更新
5/165

5話 初めての獲物・初めての部下




 お茶が入ったペットボトルと、初期装備の<木の剣>を持ち、ダンジョンの外へ出る。


 外は相変わらず強い日差しが照りつけ、焼けるような暑さの地獄だった。



「もし砂漠の真ん中で強いモンスターに遭遇したら、攻撃魔法を使えない僕はおしまいだ。いつでも逃げ帰れるように、ダンジョンの近くで獲物を探すぞ!」


 砂漠の生物は隠れるのが上手いと、本で読んだ記憶があるけど……丁寧に探せば、夜までに見つかるだろうか?



 それとも、気温が下がる夜になってから動いた方がいいのかな?


 そんな心配をしつつ、<木の剣>で砂をほじくり返していると、獲物との出会いはすぐに訪れた。



「あっ! この変な黒いのは、サソリ……だよね? たしか尻尾に毒がある生物で、きちんと調理すれば食べることも出来たはず」


「…………!?」



 手のひら程の大きさしかないサソリは、僕を見て驚いたのか、ジワジワと後退し始めたが……コッチだって、生活がかかっているので見逃せない。


「サソリ君、僕の糧になってくれ! やあっ! えいっ!」


 毒がある尻尾を<木の剣>で切り落とし、もう一発打って半殺しの状態にした僕は、サソリをダンジョンの中へ持ち帰り、砂漠フロアでトドメを刺した。



ダンジョン名:めぐみのダンジョン

属性:土

順位:30/30(311/311)

保有ポイント:90869→90870

地脈ポイント:2ポイント/日

階層:1






「う〜ん……。増えるには増えたけど、コスパが悪すぎるな。人が来ないこのダンジョンは、外の生物を狩ってポイントにするしかないのに……」


 これだけ時間をかけても、たった1ポイントしか得られないなら、コアルームの中でHPを削っている方が余程いい。



「だとすると……コスパが合うモンスターを呼び出し、仕事を任せるのが一番かな」


 このダンジョンの特性上、砂漠に住むモンスターなら格安で買えるから、その中でアタリを探してみよう。



「とりあえず……維持費の安い小型モンスターに狩りを任せ、収入の足しにするところから始めるか。それなら初期費用もかからないしね」


 殺した虫を食事として与えれば、モンスターも飢えずに済むはずだ。



 “安さ”優先で探したところ、30cm程のムカデモンスターが一番良さそうだったので、手始めに”1匹=1ポイント”で10匹召喚。


 僕の前で服従の意を示す彼らへ、ダンジョンの周りで獲物を探し、半殺しにして持ち帰るよう指示を出した。



イッシャクムカデ

ランク:G

維持費:0.1ポイント/日

詳細:体長30cmほどのムカデ。噛まれると痛いが、初級回復魔法で治せる程度の毒しか持たない。



「そこら辺にいる小さなムカデと違って、召喚したモンスターは24時間寝ずに働いてくれる。疲れない身体って便利だよなぁ〜」


 狩りの成果を見てからだけど……収支がプラスなら、もう少し数を増やしてみよう。






 イッシャクムカデの帰りを待つ間に、HPをポイントへ2回交換した僕は……小さな生物を狩り、戻ってきた彼らを笑顔で迎えた。


 初めてできた部下が成果をあげ、嬉しいのもあるけど……


 自販機の飲み物を調査しているとき、150ポイントで売っている”ジュース”を使った、いいアイデアを思いついたんだよね。



「お帰りなさい。どれどれ……皆よく頑張ったな! 殺した獲物は今日のご飯にしていいよ。それと君……このアリは、どこで見つけてきたんだい?」


 殺すのと比べると見劣りするが、ダンジョン内に生物がいる状態だと、それだけで多少の収入になる。



 だから、その仕組みを利用して……


 ジュースに含まれる糖分を餌に、アリの群れを飼育できれば、安定した収入源になると思ったのだ。



「キッ、キ〜……」


「ふむふむ。なるほど……」



 僕の問いに対し、一生懸命答えてくれるイッシャクムカデ君。


 知能が低いため、細かなコミュニケーションは取れないが、おおよその位置とアリの強さは分かったよ。






「ダンジョンから出て、階段と逆の方へしばらく行った場所。丘の真ん中くらいって話だから……たぶん、この辺かな?」


 今日は転生初日で疲れたので、巣の場所だけ確かめておき、女王アリの確保は明日の朝から行う。



 ここは砂漠だから違うかもしれないけど……普通の”アリの巣”は、内部でいくつもの部屋に分かれており、深さ1mを超すモノもあるって話だからね。


 掘り起こす途中で体力切れしてしまい、女王アリに逃げられぬよう、万全の状態で挑むのだ。



「ふふっ。ペットボトルの中に砂とジュースを入れて、フタを開けたまま幾つか放置する。この場所に働きアリがいたってことは……」


 餌を入れた状態で置いといてやれば、夕方にはペットボトルにアリが集まり、巣までの道筋を把握できるだろう。






 働きアリが罠にかかるまで時間があるので、一旦ダンジョンの中へ戻り、買っておいた黒パンを胃に収める。


 黒パンは「安かろう・悪かろう」を体現している、貧乏人ご用達の格安食品だが……今日は疲れていた事もあり美味しくいただけたよ。



「ポイントへ交換したHPが回復したら、巣の場所を確かめに行く。それが終わったら、明日に備えて爆睡するぞ」


 安定した収入源確保のため、絶対に女王アリを確保してやる!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

<< 前へ次へ >>目次  更新