49話 苦労した先に待っていたのは
〜とある冒険者side〜
“視覚同調”で判明した問題文を隅々まで吟味して、メンバー全員で正しい答えを考える。
<−−− 第1問 親を困らせてばかりの、15歳の不良少年がいます。彼は10年後どうなっているでしょう? −−−>
「死んだ奴は、犯罪奴隷になっている……と答えていたな。間違いではないんだろうが、更生した可能性も微かに残っているから……」
「あぁ、適切な回答とは言えないだろう。どんな状況でも、違和感のない答えとなると……」
「俺、分かったかも! 答えは、”25歳になっている”だよ。10年の間に何かあって、”死んだ”かもしれねぇけど」
「なるほど。それなら合致する範囲も広いし、正しい回答と言えるかもしれん。”25歳になっている”と”死んだ”を、ゴーレムで試してみよう」
<−−− 第5問 紙に円を描くとき、必ず使う文房具はなんでしょう? −−−>
「コンパスだろ? 死んだ奴の正答率と問題を見るかぎり、この回答じゃダメなんだろうけど」
殉職した冒険者は学のあるタイプで、10問中3問あったストレートな計算問題は、全問正解していたからな。
それで正答率30%ってことは……残りの7つが、全て不正解だったということ。
この第5問も、我々の不意をつく”謎かけ”なのだろうか?
「あっ! ルイス、この問いの答えは”ペン”だ。フリーハンドで丸を書くだけなら、筆記具一つあれば充分だからな」
「なるほど。カンデンは相変わらず賢いな、頼りになるよ」
「へへっ。これでも高等学舎次席卒業のエリートだからな」
10問全ての答えが出揃った段階で、ゴーレムを謎解き部屋へ送りこみ……全問正解できるまで、くり返しチャレンジさせる。
「ふ〜、ようやく終わった! 5階層通過だ!」
「ハナグール、お疲れさま。良くやってくれた! お前の召喚スキルのおかげだよ」
どの問題が合っているかの検証も含めて、50回以上もゴーレムを”スライム部屋”へ落としてしまったが、ついに全問正解の解答を手に入れることができた!
「皆もよく頑張ってくれた。普通に解いていたら、全問正解など不可能だっただろう」
かわりに茹だりそうな空間で、丸一日頭脳労働するハメになったが……命に比べれば安いものだ。
「くくっ、チームワーク抜群の俺たちに死角はない! 皆行くぞ。解答を暗記し終えた奴からクイズに挑め。必ず、6階層で会おう!」
「「「「あぁ!」」」」
その後5階層を攻略したら俺たちは、さっきのエリアが5〜6階層にまたがった立体迷路と知り、山場を越えたと確信。
延々と続く干からびそうな暑さに、体力は限界だったが……「あと少し、あと少し……」と、死にものぐるいで7,8階層を突破した。
この2階層は、フロア全体に毒ガスが蔓延した地獄だったが、解毒アイテムと回復魔法を併せ持つ、Aランク上位の俺たちには通用しない!
5〜6階層のクイズを間違えた連中が、落とされたと考えられる、スライム部屋さえ開けなければいいのだ。
「よしっ、下層階への階段発見。8階層突破だ!!」
「やったな! この階段を降りれば、次は9階層……。また砂漠の暑いフロアが来るのか……? おぃルイス。なんか、ちょっと臭くないか?」
たしかに、言われてみれば下品なニオイが漂っている気がする。
「新手の毒ガスじゃないよな? ってことは……誰か、屁をこいた奴はいるか? 粗相した場合は、せめて自己申告しろよ〜」
「あのなぁルイス。俺たち一応貴族出身だぞ。そんな、はしたない真似するか!」
「万一やらかしたら、手持ちのニオイ消しで誤魔化しているわ」
「だよなぁ〜。スマン、疑っちまった。でも……そうすると、このニオイの正体は……?」
まぁいいか。
移動しても悪臭が追ってくるなら、新手の毒ガスと仮定しよう。
違和感をスルーして、9階層へ向かった俺たちを待っていたのは、分厚そうな扉と無機質なメッセージだった。
<このドアは3時間に1度しか開きません。通りますか?>
先ほど感じたニオイは、ますます強烈になっており……不気味な気配を彷彿とさせる。
「ルイス、どうする? いったん引き返すか?」
5〜6階層のクイズフロアで通った道は、一方通行だったから、帰路で出題される問題は分からぬまま。
それを考えると……ハイデンが言うとおり、無理せず引き返すのもアリだ。
情報提供報酬で小金は稼げるし、今なら安全に退却できるからな。
「チッ、進むに決まっているだろ! 俺たち<グリフォンの牙>を、脅し程度で折れるような腰抜け扱いするんじゃねぇよ!」
だが……ハナグールやカンデンは熱いところがあるから、モチベーションが上がっている今のうちに、もう1階層調べる方がいいかもしれん。
「ふむ……。行こう! もしヤバそうなら、扉を抜けたところで待機して3時間後に引き返す。フロア内の探索は、ハナグールの召喚に任せる方針で」
「「「「了解」」」」
いずれにせよ……毒ガスが降りてきているこの場所を離れ、安全地帯へ移動すべきと思った俺は、仲間とともに<進む>を選択。
扉の先にはまた新たな扉があり、一定時間その場に留まるとトラップが発動する仕掛けと分かったため、導かれるまま先へ進んだ。
すると、3つ目の扉を開けた先には……
「オエェッッ……!! これ、まさか……肥溜めエリア……か!?」
足元の沼に、既視感のある汚物が積み重なっており……無数のハエとウジがそれに集る、地獄絵図が広がっていた。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)