<< 前へ次へ >>  更新
48/165

48話 貴族系冒険者に襲いかかる試練


〜とある冒険者side〜




 同郷の冒険者と協力して、住民の夜襲を防いだ俺たちは、翌日すぐに迷宮の地下へと足を踏み入れた。


 取り繕ってはいたものの……ナイフ片手に夜間巡回していた住民が、何を考えていたかなど明白だからな。


 他のパーティーも同じことを思ったのか、我先にとダンジョンの中へ入っていったよ。



「くっそ〜、ダリィな! 分かっていても、この暑さと砂……イライラするぜ!」


「これも金のためだ、諦めろ。ダンジョン攻略の暁には、税金ナシの3億ロルを山分けだぞ」



 少し前、ここで殉職した<砂中の白鳥>というBランクパーティーが、召喚モンスターを使って、ギルドに情報提供していたため……


 4階層までの造りは、おおよそ把握できている。


 「5階層=クイズフロア」という報告を最後に、彼らは消息を絶ったから、本当に過酷な戦いは其処からになるだろう。



「チッ、また宝箱ハズレかよ! 聞いてはいたが、ここまで冒険者のやる気を削ぐダンジョンは初めてだ」


 メンバーのサボタージュが愚痴っているとおり、俺たちにとっての旨味がなさすぎて、前哨戦すらやる気が起きねぇけど。






「ふぅ〜、5階層到着! 温度調節機能がついたローブで、ある程度対策したとはいえ……もうヘトヘトだ。ルイス、ここ何階層まであるんだろうな?」


「さぁ? 分からんが、出来立てのダンジョンだし深くはないだろう。とりあえず食事と水分補給だ。くれぐれも、他のパーティーに見せるなよ」


「「「「おぉ!」」」」



 貴族家出身で財力もある俺たちは、全員がマジックバッグを持っているから……ソレさえ盗まれなければ、水や食料に困ることはない。


 ダンジョンが深すぎて、攻略に100日以上かかる場合は除くけど。



「だが……暑さ対策もせず、気合いでここまでやってきた連中は、すでに精根尽き果てている。ソイツ等に、俺たちの食料事情を知られると危険だ」


 きっと奴等は集団で俺たちを襲い、マジックバッグの中にある水と食料を奪い取ろうとするだろう。



「よしっ、飯休憩終わり! リーダーどうする。5階層も突っ込むか?」


「いや。Bランクパーティーが全滅している以上、ここからは慎重さが求められる。仮眠休憩を装いつつ調査だ。半日待つぞ」


「「「「了解」」」」






 根性で突き進む冒険者パーティーを、5階層の入り口で観察し続けたところ……誰一人戻ってこないことが分かった。


 全員6階層以降へ進んだ可能性もあるが、ここからは未踏破フロアだし、もう20人以上入ったんだぞ?


 常識的に考えて、1チームくらいは戻ってくるはずだ。



「現在の状況から考えられる説は2つ。帰り道が別の通路になっており、出口も他の場所と繋がっている。または全員死亡」


 1問目から、パーティーを分断させる仕組みのクイズを用意してくる、ダンジョンマスターの性格を考えれば……可能性が高いのは後者だろう。



「ルイス、どう動く? いったん引いて、情報が集まるのを待つか?」


「いや……この階層の攻略情報だけでも、多少の金と手柄にはなる。ここはリスクを取ろう! ハイデン、賢そうな奴に”視覚同調ギフト”を使ってくれ」



「いいのか? 俺のギフトランクじゃ、対象者を定めると10日は解除できねぇ。今使うと、後々不利になるかもしれないぞ?」


「あぁ。前情報なしで突っ込むと、足を掬われて死人が出そうだからな。それよりはマシだ」



「了解。良さそうなターゲットが定まり次第、”視覚同調”をかけて追跡する。ついでに見張りもやっておくから、お前等は休んでおけ」


「「「「おぅ」」」」






 交代で仮眠をとり、周りに冒険者がいないタイミングで、飲み食いしていた俺たちは……


 突如叫び声をあげ震えだした、視覚同調中のハイデンから、待ち受ける地獄の詳細を知らされた。



「〜〜〜〜〜。って事で、ソイツは10問中3問正解。床が開いて遥か下にあるスライム部屋へ落とされ、ドロドロに溶かされちまった。しかも……な…………」


「なんだよ?」



「スライム部屋の底には、俺たちの前を通っていった奴らの装備が、バラバラと散らばってやがったんだ。間違いない、全員分断され殺されている!」


「マジか……。ここの魔王、性格悪すぎるだろ……」



 念のため、ここで手札を切っておいて良かった。


 もし何も考えず突っ込んでいたら、今ごろ俺たちも装備品だけを残し、ポイズンスライムに溶かされていたかもしれない。



「ルイス。俺は以前……どんな鬼畜ダンジョンでも、100%通れないような造りにはなっていない……と聞いたことがある。きっと活路はあるはずだ!」


 ハイデンの情報共有でどんよりした雰囲気を、最年少メンバーの召喚士”ハナグール”が払拭した。



「そうだな。10問のクイズには、全て何かしらの正解があって……それを導くことさえできれば、俺たちは6階層へ進める」


 とりあえずメモした問題を、<砂中の白鳥>と同じやり方で冒険者ギルドへ送付。


 情報提供ボーナスをゲットしよう!



 あとは……


「全員で問題を解いて……ハナグールが召喚したゴーレムに解答を覚えさせ、クイズへ挑ませてみないか? 全問正解で突破できたら、俺たちも後に続く」


「分かった。ルイスさんの判断に従うぜ!」

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

<< 前へ次へ >>目次  更新