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47話 報酬に釣られる冒険者


〜とある冒険者side〜




 俺の名前はルイス・ユーリフォン。


 モートランド皇国所属の冒険者であり、Aランクパーティー<グリフォンの牙>を率いるリーダーだ。


 前回のクエストが終わったあと、3日間の休養日でリフレッシュし……今は新たな案件を探すため、冒険者ギルドにある掲示板をながめている。



 スタンピード関連の仕事をこなしたばかりだから、懐は潤っており無理する必要もないが、停滞していてはいつまで経ってもSランクに上がれぬからな。


 父上が亡くなったあと兄上からユーリフォン家の家督を奪い、第二の人生を貴族家当主としておくるためにも、私は走り続けねばならんのだ!



「なぁルイス、これ行ってみないか? 危険はありそうだが、もし達成できれば報酬はデカイぞ」


「どれどれ……へぇ。スクレーン砂漠の真ん中にできた、凶悪なダンジョンを攻略せよ……ね」



〜特別クエスト〜

スクレーン砂漠の真ん中にできた、凶悪なダンジョンを攻略せよ。

このダンジョンは暑さと乾きを武器に、我々の侵入をはばむうえ、通常のダンジョンと運営形態が異なる。

スタンピードの発生は確認されていないが、放置すると周辺諸国に害をもたらす可能性が高いため、優先攻略対象となった。


攻略難度:不明(Bランク〜と推測される)

達成報酬:コアの破壊で3億ロル。有力な情報提供100万ロル〜

不達成時のペナルティー:なし

詳細説明:あり。受注希望者はカウンターへ






「コアの破壊で3億か。出来立てのダンジョン討伐にしては、やけに羽振りがいいな。ハイデン、お前はサブリーダーとしてどう思う? 受注すべきか?」


「あぁ。スタンピードで痛い目にあいすぎて、神経質になっているだけだろ。詳細を聞いてみないと、なんとも言えないけど……受ける価値はあると思うぞ」



 サブリーダーを務めるベテラン冒険者のコイツも、俺と同じ考えか。


 特別クエストだから、不達成時のペナルティーはないし……達成できれば金だけでなく、跡目争いで有利な立場も手に入れられる。



「他の奴らも注目しているな。ロマーニュの街だけでなく、周辺諸国全域で募集がかかっているということは、相当な人数が動く。早い者勝ちだぞ」


「そうだな、ルイス。だけど俺たちはSランクを目指す、Aランク上位パーティー。このタイミングで動けば、相応の成果を持ち帰れるはずだ」



 よし、覚悟は決まった!


 サボタージュ・カンデン・ハナグールにも連絡して、パーティーメンバー全員で”砂漠のダンジョン攻略”へ挑もう!


 そして俺たちは……”複数ダンジョン攻略者”の名誉と、ソレに伴う実益を得るんだ!






 パーティーメンバーも賛同してくれたので、俺たち5人は冒険者ギルドで説明を受けたあと、ダンジョンのあるスクレーン砂漠へ。


 このダンジョンは地上にオアシスを持ち、周辺一帯の貧困層を味方に付けることで、人間による攻略を阻んでいるようだ。



「ルイス、住民の目を見たか? 部屋こそ貸してくれたが、明らかに歓迎されてなかったぜ。ボケッとしてたら、寝ている間に殺されるかも……」


「あぁ、魔王もうまく考えたものだ。住民から見りゃ俺たちは侵略者。ダンジョンコアが破壊されたら、居心地のいい住処を失っちまうんだからな」



 ロマーニュ軍が惨敗した件を考えても、このオアシスで気を抜くわけにはいかない。


 最低でもパーティー単位で動き……モートランド皇国出身の冒険者と協力して、夜間の見張りも行おう。



「とりあえず……まずはこのダンジョンの名物、<自動販売機>を使ってみるか。住民にとっての生命線みたいだし、魔王の考え方も分かるだろう」


「「「「おぅ!」」」」






 5人で宿所のロビーへ移動し、そこに設置された自動販売機を使ってみると……貴族が食べるものより美味しい、数多のパンが出てきて驚いた。


 こんな飯が銅貨数枚で食べられるなんて、価格崩壊が過ぎるだろう!?



「うまっ! この”唐揚げ”っていう料理、肉汁たっぷりでジューシーだな。原価は安そうだが、砂漠の真ん中で食うのには贅沢すぎる」


「たしかに。熱々の飯が食えるだけでなく、栄養バランスも悪くない。俺らのパーティーハウスにも、1セット欲しいくらいだ」



 他のメンバーも、充実したラインナップと質の高さに驚いている。


 貴族出身者が集まっているウチで、このリアクションなんだ……貧困層出身の奴らが住み着き、死守しようとするのも当然だな。



「しかし、攻略って点を考えると厄介だ。この住民カード一つとっても、魔王の知能が高いことが分かる」


「あぁ。居住者を優遇することで特権意識を植え付け、部外者に対する優越感を持たせている。恩恵に見せかけた分断政策だ」



 自動販売機の横に設置された装置で、発券できるポイントカードという代物は、色ごとにサービス・発券料・有効期限が異なっており……


 住民じゃないと使えない”白カード”が、ダントツで好条件。


 発券料こそかかるが、商人もそれなりに優遇されており……攻略狙いの我々には、”短期滞在者”としてうまみの少ない”赤カード”が用意されていた。






〜短期滞在者カード〜

発券料:無料

有効期限:10日

特典:部屋にある金庫にカードを登録すると、簡易鍵として使える



「ポイント還元こそ受けられないものの、地味に役立つから発券しない選択肢はない。鍵すらない部屋に物資を置いておいたら、盗まれちまうからな」


「あぁ。それでいて”部屋の鍵”じゃなく、あくまでも”期間限定の金庫の鍵”。住民による夜襲は防いでくれない……ときた。ここの魔王、絶対性格悪いぜ」



 そうだなサボタージュ、俺も同感だよ。


 入り口からコレってことは……攻略狙いの人間しか入らない地下フロアが、どうなっているのか……ある意味恐ろしいぜ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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