46話 メグミは人間サイドの動きを探る
その後もルーキー達のポイント推移が、搾取モードに戻らなかったため……なんらかの変化があったと仮定し、サーシャへ外出自粛するよう連絡。
僕自身も<転移陣>購入は一旦あきらめ、貯金と情報収集に専念する日々に戻った。
「使ったことないから、詳しい仕様は分からないけど……もし僕とサーシャ以外の魔王も、設置した転移陣で移動できるとマズイからね」
サーシャのダンジョンが攻略され、彼女のコアルーム経由で襲われるなら潔く諦めるが、逆になったら申し訳なさすぎるもの。
「ふむ……。ここ最近ルーキーの扱いが変わったのは、スタンピードの後始末を押し付けるため……かもしれないな」
僕は諜報技術持ちのモンスターなど、一体も囲っていないため……情報収集はランキング等の確認と、オアシスフロアの盗聴任せだ。
それゆえ昨日までは、明確な理由が分からなかったけど……
今日になって潰れそうだった先輩魔王が持ち直し、一部のルーキーが掲示板で助けを求め始めたので、敗戦処理要員にされたと見ていいだろう。
「にしてもさぁ、エグすぎ……」
昨日まで「頑張ります!」と意気込んでいた元クラスメイトが、時間を追うごとに弱音を吐きだし、今は恥も外聞もなく「庇護してくれ!」と叫んでいる。
学舎時代の彼らを知っているので、「ざまぁ」としか思わないけど……調子に乗って彼らの二の舞にならぬよう、僕は謙虚にふるまっていきたい。
僕自身に関係するニュースはというと……討伐隊を返り討ちにしたことで、人間サイドが<恵のダンジョン>を本格的に警戒。
戦力の大部分を失った”ロマーニュの領主”に代わり、冒険者ギルドと商業ギルドが動いてきたよ。
商業ギルドは”自動販売機で得た商品”の売買を禁じ、「ルールを破った者には罰金を科す」と、近場の都市でふれ回っているらしい。
もっとも……ギルドの支配が及ばない闇市で売りさばけば良いだけなので、今のところ規制の効果は薄く……
むしろ「警戒されるほど儲かるビジネス」だと、金のニオイを嗅ぎつけた商人が、続々とオアシスフロアに押し寄せている状況なんだけどね。
「今のところ、収入は右肩上がりで増えている。警戒すべきは……商業ギルドではなく、まともな手を打ってきた冒険者ギルドだ」
冒険者ギルドは、<恵のダンジョン>攻略に莫大な懸賞金をかけるとともに、上層階のフロア情報を一般公開した。
僕のダンジョンは「稼げない」をモットーに、冒険者が帰りたくなるよう設計しているから……
「それでも攻略したい」と思わせるほどの報酬を、他者に提示されるのは痛い。
「今はまだ、スタンピードを起こしたダンジョン狩りで、高ランク冒険者が拘束されているからいいが……」
それらの区切りがつき次第、金目当ての連中が群がってくるのは確実だろう。
人間サイドの動きが分かってきたので、僕もそれに合わせて対抗策をねった。
まず、各方面から押し寄せる冒険者対策として……見つかるリスクが高い”アリの巣掘り”は、全面的に中止!
アリの繁殖は、羽アリによる自然交配に任せ……能動的な収入源獲得は、シルクスパイダーの養殖に切り替えたよ。
また掌握している地上の砂漠に、ダンジョン産と思われない種のモンスターを放ち、24時間体制で敵が来ないか監視している。
今のところ冒険者ギルドは、オアシスフロアの住民と争わない方針なので、0階層と地下フロアの入れ替えは考えていない。
念のため、自販機に付いているポイントカード機能を利用して……住民・一時滞在の商人・部外者用の、色分けしたカードを作ってみたから……
余裕があるうちに、ソレを識別票として使えるか試してみるつもりだ。
あと……汚いもの慣れしている冒険者に、別角度からダメージを与えるため、<オバケフロア>を追加してみた。
仕掛ける側にとっては、ただの子供騙しだけど……初めて体験する冒険者は、恐怖で絶叫するんじゃないかな?
〜オバケフロア〜
冷たい風が吹きつける夜モードの砂漠で、不意に奇妙な音が鳴ったり、皿を数える幽霊が現れるフロア。
大半の仕掛けは、イタズラ好きなモンスターの仕業だが……レイス等、本物の幽霊もふらふらと彷徨っている。
他にも<迷路フロア>の難度を上げたり、脳筋が苦手とするクイズを増やしたりと……我ながら頑張ったと思う。
とんでもない規格外が襲ってきたときのために、防衛用のポイントは残してあるし、油断する気もないけどね。
「あとは敵が来るのを待つだけ。奴らは、どんな段取りで攻めてくるんだろう?」
殺されるかもしれない恐怖と、頑張った成果を確認できるワクワク感が混ざり合い、なんとも言えない気分だよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)