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44話 火中の栗を拾う者


〜ロミオットside〜




 また……だ。


「ぅぅ……グスッ…………」


 また俺は、モンスターごときに屈服させられ……屈辱的な思いをしている。



 今回はベッドの下に貯めていた軍資金まで、ケンタウロスに見つかり奪われてしまった。


 いつか再起してトップへ返り咲くために、奴らの目を欺き、死体からコツコツ回収した俺の物なのに!



 世界を統べるために生まれたこの俺が、なぜただの魔王や配下である下等生物に、踏みにじられなければならないのか?


 こんな理不尽、絶対に許さない!


 また奴らの目を盗んで金を貯め、いつか蹂躙する側にまわってやる!



「へぇ〜、良かったなお前。ゴミ同然の状態から、自由になれるチャンスがきたゾ」


「はっ?」



 この馬人間は、今なんと言った?


 俺をこんな目に遭わせた直後に、「自由になるチャンス」などと……。



「ロミオット、主人からの指示だ。ホムビッツ・ナステックと同盟を結び、モンスターを率いてダンジョンを攻略してこい。それが出来たら解放してヤル」


「はぁ? どういう事だ? なぜそんな事を突然……」



「ん〜? ”メグミ”って奴の居場所が掴めたからだろ。お前等みたいな搾りカスより、上位ルーキーを食いたいと、主人が判断しただけだ」


 なっ……元底辺のメグミが、俺より”上位扱い”だと!?






「あぁ、そうだ。”細かな指示は追って伝える”とあるが……状況的に見て、準備期間は30〜50日ってところか。もちろん、負ければお前らの命はない」


 俺の気持ちなど知ったことかと言わんばかりに、上から目線でしゃべり続けるケンタウロス野郎。



「ふざけんな、誰がそんな話受けると思っているんだ!」


 卑怯なやり方で俺を貶めたコイツ等の言葉など、一切信用できないし……大切な時期に裏切ったホムビッツ達と、同盟なぞ組むものか!



「別に、嫌ならイイ。他の下僕に同じ話を持っていき、代わりが見つかった段階で、お前の命と連動しているそのダンジョンコアを砕くだけダ」


「ぐぅっ……卑怯だぞ!」


「知るか。敗者は搾取されてしかるべき。一発逆転に賭けて戦うか、下僕のまま生を終えるか……さっさと決めろ」



 悔しい、不愉快極まりない……。


 俺がメグミを倒したとて、戦果は魔王ハイドンに奪われるだろうし……約束どおり、この地獄から解放される保証もないのに。



 だが”惨めな平民”だったくせに、今じゃ俺より安全圏で生活しているメグミが、気に食わないのも事実だ。


 アイツの居場所に相応しい、この地獄に叩き落すことができれば、俺の鬱憤も少しは晴れるかもしれない。


 そうやってモチベーションを上げれば、俺自身の復活もいつか可能に……。






「ふむ。原資が不足している今の状態だと、勝負にすらならないか。よし決めた、没収した金は返してヤル。ロミオット、とっとと準備に取りかかれ」


「…………」



 ちょっと待て、なぜ今コイツは譲歩したんだ?


 腸が煮えくり返る態度は相変わらずだが、ケンタウロスが搾取をやめたという事は……本気でメグミを狙っている?


 地獄を見せられたルーキーの中には、少しずつポイントが回復している奴もいるし、メグミを引きずり下ろせば俺も……。



 迷うな、腹を決めろロミオット。


 不満しかない状況でも、これは神が俺に与えた試練なんだ!



「分かった。このロミオット様が、あの雑魚を叩き潰してやろう」


 ホムビッツ・ナステックと手を結び、泥を啜ってでも、メグミをハイドンの下僕に叩き落としてやる!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 ロミオットが決意を固める数時間前……とある同盟チャットでは、スタンピード&ルーキーの扱いについて、会議が開かれていた。



8725 名前:ハイドン(10期)

 不定期ミッション<スタンピードを起こして街を滅ぼそう>終了。

 その関連で、44期のハルマンから救援要請がきている。

 人間の猛攻で消耗したため、回復する時間を稼ぎたいそうだ。


8726 名前:クルス(27期)

 報酬は? 結構近いし、ウマそうなら受けるぜ。


8727 名前:ハイドン(10期)

 ミッションで得た報酬全てと、現金300万ロル……だとよ。

 良くも悪くもないな。


8728 名前:クルス(27期)

 ふ〜ん。

 アリス……<モンスターの渦>1つと、魔法のスクロールくれてやるから手伝え。

 Cランクの方な。


8729 名前:アリス(30期)

 分かったわ。

 下僕にしている78期”ルージュ”に、スタンピードを引き起こさせて、時間を稼ぎましょう。

 あの子……そろそろ処分しようと思っていたし、距離的にも身代わりは務まるはずよ。


8730 名前:クルス(27期)

 サンキュー!

 俺も近場にいるルーキーを、処分がてら叩き込むぜ。

 放置して力をつけられると、反逆の恐れがあるからな〜。


8731 名前:アリス(30期)

 えぇ、力なんてつけさせない。

 人間の恨みの受け皿となる、惨めな最期を遂げさせましょう。


8732 名前:ハイドン(10期)

 クルス・アリス。

 分かっているとは思うが、処分するルーキーはこれ以上食うなよ。

 あまりにも弱すぎると時間稼ぎにならねぇ。


8733 名前:アリス(30期)

 もちろんですよ、ハイドン様!

 ところで……この減り方だと、あと半年くらいで79期が来るわよね?

 それまでに、もう数人78期を狩らない?


8734 名前:ハイドン(10期)

 あぁ、ちょうど気になっている奴がいる。

 砂漠の真ん中に突如生まれたオアシスダンジョン。

 管理人は、おそらく78期のメグミ。

 現状、ランキングはそれ程でもないが……住民から怨みを買うことなく、金を回収する手段があるらしい。


8735 名前:クルス(27期)

 なるほど。

 そりゃあ、放置したらデカくなりそうだな。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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