41話 ある意味、工夫を凝らしたダンジョン
オアシスフロアの住民たちが、さっそく新しい商品を”最寄り街”へ売りに行ったので、心の中で「頑張れ」と声援をおくったあと監視を中断。
魔王の仕事である、ダンジョンの拡張作業に戻った。
「え〜っと……普通に進んだらこの岩に足を置くから、ツルツルかつ油を塗った表面を、幻影でゴツゴツに見せかけて……。この場所の構造だと……」
ダンジョンづくりは創造性が求められるから、すごく頭を使うけど……”オンリーワンの作品”を創っている感じがするし、やり甲斐はあるよ。
ダンジョン名:恵のダンジョン
属性:土
順位:22/22(288/288)
保有ポイント:54
地脈ポイント:147ポイント/日
階層:27
16階層:サボテンフロア
17階層:リズムフロア
18階層:ゴミ箱フロア
19階層:凹凸フロア
20階層:中ボス部屋(ナイトメアバード・アントリオン担当)
21階層:砂漠フロア(オアシスフロアとの入れ替え用)
22階層:モンスター部屋フロア(避難用)
23階層:徴収フロア(細々と通行料を徴収する)
24階層:浮石フロア(サーシャの”浮雲フロア”を真似た)
25階層:学識迷路フロア(学力テスト)
26階層:ボス部屋(ミスリルゴーレム担当)・アリの飼育場・居住空間
「よしっ。現金の残りが300万ロルを切ったし、拡張作業はこれくらいでいいか。ふわぁ〜、疲れた〜!!」
各フロアに、僕の”性格の悪さ”が滲み出ている気がするけど……魔王襲来に備えて工夫した、渾身の自信作だ!
この構造なら、確実に侵入者を排除できる!
〜16階層:サボテンフロア〜
一日中”夜モード”で真っ暗なフロア。
数多のサボテン型モンスターがはびこっており、侵入者を針で攻撃してやる気を削ぐ。
また、このフロアに生息するサボテンは全種類、茎を割っても水を回収できないタイプである。
「15階層でキンキンに冷えた身体を温めようと、階段を降りたら……16〜20階層も全部、氷点下のフロアでした〜ってね」
侵入者に配慮する必要などないので、ウチのダンジョンは全階層で彼らを絶望させ、メンタルを削っていくよ!
〜17階層:リズムフロア〜
侵入者の、音感・リズム感を試すフロア。
ランダムに鳴らされる音を、正しく認識して再現する試練……楽譜を見ながら即興で歌う試練などがある。
各試練には、一人(または一体)ずつしか参加できない。
「17階層は、ゴーレムや知性あるモンスターを、排除するためのフロア。音楽の概念がない連中は、ここで立ち往生することとなる」
ウチのボスを務める、ミスリルゴーレムもそうだけど……耐久系ダンジョンと相性がいいゴーレムは、総じて”リズム感”ないからね。
〜18階層:ゴミ箱フロア〜
オアシスフロアの住民が捨てたゴミを、溜め込んでいるフロア。
制限時間内にゴミの中から、”鍵”となるオーブを探して台座に置かないと……天井からゴミや、9階層で余った汚物が降ってくる。
「このフロアは、魔王の心を折るために用意した。日頃モンスターに傅かれている彼らにとって、独力でのゴミ漁りは屈辱だろう」
動くたびに、ガラス瓶やペットボトルの破片が、装備の隙間から肉体に食い込み……オイルスライムの残骸が、服の布地に染み込んでくる。
サーシャに確保してもらった”ゴキブリ”も、暗闇の中でカサカサしているから、色んな意味でゾッとするフロアだよ。
〜19階層:凹凸フロア〜
上下にうねるツルツルした細長い道が、侵入者の進路をさえぎるフロア。
道の幅は約1m、高低差は約3m。
フロアの底には油が溜まっており、床の摩擦係数を極限まで小さくしているうえ……定期的に、モンスターが引火させる。
「心身ともに限界の状態で、18階層を抜けた侵入者には、物理的な障壁をプレゼント。火属性のダンジョンには及ばないけど、”炎”の要素もプラスしたよ」
ここでは20階層側にいるモンスターが、火・風・油の要素を組み合わせて、フロア内にいる者を焼き殺そうとするから注意が必要だ。
「18階層でオーブを漁っているうちに、火薬の粉が付着していたりもするしね」
〜20階層:中ボス部屋〜
アントリオンの”巨大アリ地獄”が其処彼処にある空間で、上空から攻撃してくるナイトメアバードと戦うフロア。
当然”夜モード”の砂漠なので、フロア全体が暗闇に包まれており、かじかむほどの寒さが全身を襲う。
「21〜22階層はオアシスフロアの避難用だから、その障壁となる20階層には相応の強敵を仕込んだ」
サーシャに頼んで購入してもらった、ナイトメアバードの群れは……暗闇で戦うことに長けており……
辛うじて中ボス部屋までたどり着いた、ボロボロの侵入者にトドメを刺してくれるはず。
僕自身が、この布陣を抜く術を思いつかない以上……もし20階層を突破されたら、素直に”負け”を認められると思う。
「避難させたオアシスフロアの住民が、コアルームへ侵入しないように……23階層から下にも、対策用のフロアを用意した」
使わないに越したことはないけど、万一のときは最後の壁になってくれるはずだ。
「さて……サーシャの方は、どうなっているかな? ちょっと連絡してみよう」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)