39話 生物の特性を利用したフロア
ダンジョン改良の方針をかためた僕は、ポイントと現金を注ぎ込み、脳内にある構想を現実のものとしていった。
「ふわぁ〜、とりあえず一段落! 悪目立ちしていたポイントも使い切れたし、ある程度は形になったかな」
ダンジョン名:恵のダンジョン
属性:土
順位:22/22(289/289)
保有ポイント:38
地脈ポイント:109ポイント/日
階層:17
0階層:地上部。オアシスフロア
1階層:砂漠フロア
2〜3階層:クイズ付き立体迷路
4階層:灼熱の岩石フロア
5〜6階層:クイズ付き立体迷路(分断仕様)
7階層:毒ガス砂漠(イッシャクムカデ担当)
8階層:毒ガス迷路(スライム担当)
9階層:汚物フロア
10階層:中ボス部屋(オイルスライム担当)
11階層:鉄板焼きフロア
12〜13階層:クイズ付き立体迷路(分断仕様)
14階層:宝探しフロア(オイルスライム・アースバード担当)
15階層:夜の砂漠フロア
16階層:ボス部屋(ミスリルゴーレム担当)・アリの飼育場・居住空間
侵入者や、ソイツが連れている飛行系モンスターを、とにかく油まみれにしたかったので……
10階層に中ボス部屋をつくり、オイルスライムの大軍を配置した。
オイルスライムはランクFの弱いモンスターだから、数で攻めたところで突破される可能性が高いけど……
戦闘中に弾けたスライムの残骸で、敵がベトベトになるのは確実だ。
中ボス部屋の下にある”鉄板焼きフロア”では、熱せられた砂漠の上に鉄板を乗せ、ファイヤースライムも配置しているので……
“油まみれの肉”が自ら入ってきたら、いい感じに焼いてくれるだろう。
また14階層の”宝探しフロア”も、活動しにくさ抜群の”油ベトベト仕様”となっており……
油がたっぷりと染み込んだ砂の中で、見つけたヒントを元に問題を解かない限り、先へ進めない構造。
そして……14階層の油は中ボス部屋と違い、”ハッカ油”みたいな揮発性の高いものだから……
次の階層にある”夜の砂漠フロア”で、氷点下まで冷やされたとき、より体感温度を下げられるはずだ。
「個人的に一番嫌なのは、9階層に組み込んだ”汚物フロア”だけどね。あそこは”地獄”だ! 僕は絶対に入りたくないよ」
9階層は”下水道”をコンセプトにつくられており、幅3m・高さ約1mしかない曲がりくねった道が、延々と続いている。
それだけなら大したことないけど、オアシスフロアのトイレを改造し、汚物をそのまま9階層へ落とす仕組みにしたから……
定期的に頭上から汚物が降ってくるし、古いブツも発酵して、フロア全体が”肥溜め”みたいになるのだ。
一定の空間はあけないと、ダンジョンとして成立しないから、フロア全体がブツで埋まりそうなときは、スライムに一部回収してもらうけど……
基本的に回収機能のないフロアなので、ここを攻略するのは、想像を絶する苦痛だと思うよ。
もちろん、”稼ぎ”になるような宝箱は一つも置いていない。
せいぜい……汚物まみれの身体を拭くとき、「ハズレ」と書かれたノートの切れ端が使えるくらいだ。
「あまりにも品がなさすぎて、サーシャには教えられないな」
もし彼女に聞かれたら、”生物の特性を利用したフロア”とだけ伝えることにしよう。
ミルクティーを飲んで一休みした僕は、ボス部屋の前に新たなフロアを差し込むべく、再び管理画面とむき合った。
ポイントは全て使っちゃったけど、現金はまだ残っているので……「稼げず・不快で・生きづらい」ダンジョン目指して、より一層精進するつもりだ!
「ん〜。15階層で気温を下げているから、新フロアも夜モードにしよう。揮発性油で体温を奪うとともに、凍えるような風を吹き付けてより過酷に……」
<−−− パッパラ〜♪ −−−>
構想をもとに設定を行い、必要ポイントを現金で支払ったとき……ランクアップを知らせるファンファーレが、頭の中で鳴り響いた。
「あぁ、そっか! 18階層目の追加は、”自販機作製ギフト”のランクアップ条件だったね。色んなことが起こりすぎて忘れていたよ」
メグミ(16)
種族:魔人族(魔王)
職業:ダンジョンマスター(ルーキー)
HP:169/334
MP:11098/11098
スキル:火魔法F・水魔法F・風魔法F・土魔法F・回復魔法B・物理耐性C・精神耐性D・アイテムボックスF
ギフト:自販機作製D→C
その他:称号 (蟻マスター・異端児)
ステータスを確認したところ、予想どおり自販機作製ギフトのランクが、D→Cへ上がっていた。
「ダンジョンの改造が終わってからだと、明後日になっちゃうから……先にギフトの確認をしよう。さて、今回はどんな自販機が追加されたのかな?」
期待に胸を膨らませた僕は、ステータス画面に表示された説明を読みすすめ、そこに載っている呪文をとなえる。
「クリエイト」
すると目の前に、”飲み物”や”パン”の自販機とは少しデザインの異なる、四角い箱が現れた。
「おぉ……! 今回は“お惣菜”の自販機か」
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)