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37話 勝者と敗者


〜ロマーニュオアシス・領主side〜




「コクッ……コクッ……。うむ……相変わらず、ソルフォーニュ地方のワインは風味豊かで良いな。さて、もう一杯……」


 オアシスダンジョンへ討伐軍を差し向けた私は、一足早く勝利の美酒を飲み、己が栄達を祝福していた。



 どうせ我らの”勝ち”は決まっているのだし、兵士が戻ってきたら戦後処理で時間を削られるからな。


 祝うなら一人の時間をゆっくり取れる、今を置いて他にないのだ。



「コクッ……コクッ……。ふぃ〜、美味い……」


「領主様、大変でございます! オアシスダンジョンへ派遣した正規兵が、惨敗いたしました!」


 なにっ!?



「どういう事だ、コーネン。詳しく話せ!」


「はい。それが……」



 執事のコーネンから聞いた報告は、惨敗と呼ぶにふさわしい……悲惨なものだった。


「正規兵300人中、帰ってきたのが100人弱。其奴らも、四肢の欠損やストレス性疾患で使いものにならぬ……とは」



「申し訳ございません。ポーションで復帰可能な正規兵は、50名に満たないかと」


 クソッ!


 それでいて貧民共には、わずかな被害しか与えられなかったなんて……。






「奴らが武器を持っていたのは予想外だったな。コーネンよ、軍の立て直しには幾らくらいかかる? 予算は足りるか?」


「難しいかと。生き残りで使えそうな者をポーションで癒し、新規兵を育てるとなると……費用は、少なく見積もって3億ロル。育成の期間もかかります」



 なんという事だ!


 オアシスダンジョンの支配権を得られないばかりか、軍事費を私財で賄わねばならぬとは。



 先ほどまで風味豊かだったはずのワインが、口の中でエグ味を主張し、私の滑稽さをあざ笑っている気がする。


 不愉快極まりないが、今は冷静に対処せねば……。



「諸々の上納金を差し引くと、今期は完全に赤字だな。手持ちの現金で賄えぬ分は、絵画や宝飾品を売って用意せよ」


「かしこまりました!」



 だが、この敗戦による財政難は一過性のものじゃない。


 討伐軍が破れたという事実が広まれば、我がロマーニュ軍はナメられ、貧民共の流出はますます加速する。



 反逆のリスクも上がり……税収も、今よりさらに2〜3割落ちると見た方がいいだろう。


 それどころか、王家やライバル貴族に敗戦を知られれば、領主の座そのものを追われる可能性も……。



「クソッ。この恨みは生涯忘れぬぞ! 私の立場を脅かした卑劣な魔王め。必ずダンジョンから引きずり出し、八つ裂きにしてやる!」


「り、領主様! ワイングラスが壊れ、お身体が傷ついております! 落ち着いて……御乱心。領主様が御乱心だ〜!!」




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〜メグミside〜




3822 名前:メグミ(78期)

 防衛戦終了〜!

 やったよサーシャ、僕たちの勝利だ!!


3823 名前:サーシャ(78期)

 メグミ君おめでとう!

 お疲れさま^^


3824 名前:メグミ(78期)

 ありがとう。

 君が手伝ってくれたおかげだよ。



 ダンジョンの支配領域外へ仲間を見捨てて逃げていく、ロマーニュ討伐軍の後ろ姿を見て、自分たちの勝利を実感する。


 住民・モンスターともに、犠牲が出たのは痛ましい事だが……それ以上に敵を屠れたし、大きな意味を持つ戦いだった。



「殺戮ポイントは約4万。支配領域を拡張したことで、紛争による犠牲者の多くを、ポイントに変えられたのが大きかったな」


 また襲来時……支配領域外の砂漠で、モンスターに討伐軍を襲わせた結果……微妙な評価ではあるが、不定期ミッションも達成扱いになったよ。



〜不定期ミッション・スタンピードを起こして街を滅ぼそう〜

現在の評価:C

獲得報酬:ハイポーション・マジックバッグ・メタルリザードの渦


〜メタルリザードの渦〜

Cランクモンスター<メタルリザード>を、一日一体生み出す渦。必要ないときは、稼働停止させることもできる。



「ふふっ。自分から街を攻め滅ぼす気はないけど……避けられない戦いがあるなら、利用しない手はないもんね」


 ダンジョン機能で回収できた正規兵の装備や、彼らの財布に入っていた現金含め、報酬はガッポリ得られている。






〜今回の戦いで獲得したもの〜

・討伐軍300人の滞在ポイント(概算150P)

・殺害ポイント(約40000P)

・討伐軍の装備一式

・各種ポーション

・兵士が持っていた現金(約600万ロル)

・軍事物資の干し肉etc.


〜損失〜

・イッシャクムカデ34体

・オアシスの住民8人

・支給した軍事物資



「”メタルリザードの渦”は、防衛ラインが充実している僕より、サーシャに使ってもらうべきだな。獲得した現金も半分回そう」


 兵士の血と汗が染み込んだ干し肉は、ちょっと遠慮したいから……半分はスライムの餌に。


 もう半分は……労いのメッセージと一緒に宝箱へ入れ、オアシスフロアの住民にプレゼントしようかな。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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