32話 オアシスフロアに住みついたのは
「ハァ〜、ようやく出て行ったか。疲れた〜! 豚骨ラーメンでも食べて、一休憩しよう」
オアシスフロアの調整を終えて2日……予想していたとおり”ヤシの木”を見つけたカモが引っかかり、ダンジョンに現金と滞在ポイントを落としてくれた。
今回のお客様は、商人と冒険者の計11名。
戦闘力は大したことない相手だったが、商隊だけあり人数が多かったので……欲を出して階段を降りてこないか、少し緊張しちゃったよ。
「ドキドキした分、実入りも大きかったけどね。まさか彼らが、あそこまで現金を使ってくれるとは……」
水の補給は予想していたけど、ラクダの背中に乗せられるだけ、パンを積むとは思わなかった。
いくら仕入れ値が安いとはいえ、かさばるパンで利益は取れないと思うが……背に腹は変えられなかったんだろうな。
「道中でサンドガーゴイルに襲われ、逃げ延びるために積荷をほとんど破棄した」と話していたし。
「まぁ、人様の事情はどうでもいいや。僕は自分のことだけ考えよう!」
え〜っと、昨日・今日の売上は……
〜水〜
販売量:ペットボトル160本
売上:16000ロル
収入:8000ロル
〜その他ドリンク〜
販売量:ペットボトル30本
売上:4800ロル
収入:2400ロル
〜パン〜
販売量:372個
売上:38600ロル
収入:19300ロル
〜滞在ポイント〜
かすかに増えた
〜合計〜
現金:29700ロル
ポイント:約100P
自動販売機の商品を、他者が現金で買ってくれた場合……その売上の50%が、僕の取り分となる。
支払い先をアイテムボックスに指定しておいたら、チャリンチャリンと銅貨が入ってきて、その度に幸せな気分をあじわえたよ。
残りの50%は、どこへ消えるのか謎だけど……おそらく商品の仕入れ先から、天引きされているのだろう。
まぁ設置するだけで50%も貰えるなら、喜びこそすれ文句はない。
誰が、在庫を補充してくれているのかは分からないけど……ありがたく設置料を頂くことにするよ。
「常識的に考えて、”パンの大量買い”は今回だけの例外。だが……商人たちは、”オアシスの存在を商業ギルドへ報告する”と言っていた」
つまり今後、水分補給目的の商隊が定期的にオアシスを訪れるはずだ。
高ランク冒険者に比べると滞在ポイントは劣るけど、彼らは沢山お金を使ってくれるから……第二の収益源としては嬉しい展開だな。
「なんて思っていたけど、まさか……こうなるとはなぁ。いや、別にいいんだけどね」
僕は商人の来訪を予想していたのだが、情報が広まってすぐオアシスフロアへ押し寄せたのは、最寄り街に住む貧民たちだった。
彼らの会話を盗聴したところ……ここから歩いて2日ほどのところにある、ヴィッチネント王国の最寄り街”ロマーニュ”では……
“泉の利権”が領主のものとなっており、お金を払わないと水を飲めないことが判明。
税金すら納められない貧しい人々は、食事どころか日々の水分補給すらままならず、飢えと渇きに苦しんでいたようだ。
また住環境も劣悪だったため……タダで雨風しのげて水と食料を安く買える、このダンジョンの噂を聞きつけ押し寄せたみたい。
それでも1日200ロルはかかるから、身体の丈夫な男性が協力して、数日おきに最寄り街とダンジョンを往復し……
オアシスフロアで仕入れたパンを高値で転売して、生計を立てているみたいだけどね。
〜1日あたりの収入〜
現金:約60000ロル
ポイント:約900P
「ふふっ。誰であろうと、僕に利益があるなら”お客様”だ。歓迎するよ」
“貧民”と聞くと、ガラが悪そうに思うけど……彼らには彼らなりの秩序があり、決められた掟にしたがって生活するので治安はいい。
時々殴り合いのケンカは起きているが、今のところ死人は出ていないし、オアシスを訪れる商人とも揉めていないよ。
初めて居住目的の人が訪れてから、10日が経つ現在も、毎日100名以上の貧民が押し寄せているから……
アパートの空室が無くなれば、住居を巡って殺し合いが起きるかもしれないけどね。
「今はまだ放置でいい。だけど、空室が少なくなったら適宜アパートを追加しよう。費用は彼らの滞在ポイントで賄えるし、無駄な殺し合いはゴメンだ」
あっ、また保有ポイントが増えている!
ふふっ……予想外の幸運、天の恵みだなぁ〜。
ダンジョン名:恵のダンジョン
属性:土
順位:20/28(268/307)
保有ポイント:349825
地脈ポイント:80ポイント/日
階層:10
〜オアシスフロア〜
収容人数:514人/3600人
運営開始時からの現金収入:約30万ロル
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)