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30話 砂漠の真ん中にオアシスをつくる




「う〜ん、外観はリゾート風がいいかな。だけどコスパを考えると、コッチの方がお得だし……」


 購入可能なオブジェクトを見比べながら、僕は地表部に設置する、<オアシスフロア>のデザインを考えている。



「よし決めた。設置するのは、この”安アパート風住居”にしよう! 砂漠の真ん中に建っていれば、粗末なアパートでも喜ばれるはずだ!」


 消費ポイントが同じなら、質より数にこだわりたいしね。



「次は、緑地の設定。ヤシの木を何本植えるかだけど……。これは多めにしたいな」


 オアシスも砂漠を構成する要素ではあるが、基本的に乾燥地帯と緑地は相性が悪い。



 ダンジョンがあるスクレーン砂漠・中央部には、水源となる地下水脈もないから……


 見た目重視で、”無限に水を汲めるような泉”なんて創った日には……人間に水を奪われ続け、補給でポイントが枯れ果てるだろう。



「くくっ。だけど僕には、この”自販機作製ギフト”がある」


 地表部に”水の自販機”を置いてやり、現金で飲み物を買えるようにしておけば、その内水源代わりにしてくれるはずだ。


 人間は、適応能力の高い生物だからね。




 “ご飯”も”飲み物”と同じように、パンの自動販売機だけ置いておく。


 砂漠の真ん中で、安価な食料が手に入るなら……たとえ種類がパンだけでも、文句は出ないはずだ。



「自動販売機の設置場所は、利権云々でもめないように、離れた場所に複数つくるほうがいいかも」


 出し入れ自由な僕のギフトだから、破壊・盗難で損害が出ることはないけど……1カ所だけだと、強欲な人物に囲われる可能性がある。


 行動力のある金持ちって、たいがい強欲だもん。



「宿に関しては……従業員として奴隷を使うこともできるが、人間が大人しく金を払うとは思えない。面倒だから、無人宿をタダで解放しよう」


 ダンジョン機能を利用して、3階建ての安アパートを量産すれば、あとは人間サイドが勝手に使うさ。






「え〜っと、ココをこうして……。いや、そうじゃないよなぁ〜。もっと、こう……」


 保有ポイントと手持ちの現金をつぎ込み、0階層を何もない砂地から、人が住めるオアシスへとつくり変える。



 イメージ戦略のために、ヤシの木をたくさん生やしたこともあり、ポイントは全て無くなったが……


 砂漠のダンジョンと相性最悪な水を、”自販機作製ギフト”で賄ったため、現金は約40万ロル残せたよ。



「うわぁ〜凄い! ただの砂漠だった入り口が、ヤシの木に囲まれたリゾート空間になった! これは目立つな〜」


 緑豊かなヤシの木が、砂漠の真ん中に生い茂っていたら……遠くから見ても、ここがオアシスだと一目で分かる。


 そして、”自然の恵”を求める旅人が集まるはずだ。



「住み心地もそれなりに良さそうだな。コスパ重視で、アパートは全棟同じ造りだけど……利権争いの心配がなくて、かえって良かったかも」


 少しでも違いを作ると、人間はより良いものを求めて同族と争うからね。


 僕は紛争地帯で、殺戮ポイントをネコババしたいわけじゃないから、用意するのは必要最低限の設備で充分だ。



 アパートの各部屋は、ベッドが2つ入る程度の広さになっている。


 初期投資がかさむから、寝台や棚などの家具はゼロ!


 多くの人が滞在するほど、僕の手元には家賃代わりのポイントが入るので、だだっ広い”金持ち用の豪華ルーム”……なんてモノも存在しないよ。



「くくっ。あとは各棟の共有部分に、自販機をセットして……よっしゃぁ、出来た!!」


 メグミ作、<なんちゃってオアシス>の完成だ!






ダンジョン名:恵のダンジョン

属性:土

順位:28/28(307/307)

保有ポイント:13

地脈ポイント:80ポイント/日

階層:10


〜オアシスフロア〜

棟数:50

部屋数:各棟36

収容可能人数:3600(1800部屋×2人)

その他施設:自動販売機・獣舎・ゴミ捨て場・トイレetc.……



「う〜ん、改善した方がいい所はあるかな? モンスターが出現する怖い場所だと思われたら、旅人が来ないから……適当に看板でも立てておくか」


 “アリの巣”探しもしばらくは続けたいから、運営サイドが使う出入り口も、少し離れた砂漠地帯に増設して……



「あっ、そうだ! トイレの注意書きも、用意しておいた方がいい。”勝手に回収されます。汲み取らないでください”……と」


 支配区域外にウ○コを捨てられると、ダンジョン機能による自動回収ができず、気分的に嫌だからね。



「他に至らない点は……。念のため、自販機の使い方も近くに表示しておくか。理解力のない脳筋冒険者に、透明な板を壊されると迷惑だ」


 その後も、細々とした問題を解決しつづけた僕は……丸2日かけ、0階層<オアシスフロア>を納得できるものにした。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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