3話 ポイント最下位をおぎなう策
マップが表示されている画面を覗き込み、世界に散らばる候補地の中から、自分に合った条件の場所を探す。
画面をタップしても、情報開示されない地点が幾つかあったので……先に動いたクラスメイトが、選んだ場所かもしれないな。
「う〜ん。ピムバット大地は、街から遠く離れているから制圧されにくいかも。でもあの辺りって、ワイバーンが根城にしているから……。却下だ、次!」
「フルーレット島は見晴らしが良さそうだし、海に浮かぶ孤島だから安全性も高いと思う。だけど授業で、数十年後には水没するって……。却下だ、次!」
残り30分を切った表示時間に焦りを覚えながらも、一つ一つ丁寧に見ていくが、候補地はなかなか見つからない。
「他の魔王にポイントで劣る僕が、この状況下で生き延びるためには……他者が考慮に入れないほど、過疎った場所にダンジョンを構える必要がある」
そして万一見つかっても、攻略しにくいカタチへ持っていくのがベストだ!
何処かにないのか!?
目立ちにくいけど最適化すれば旨味がある、僕が求めているような候補地は……
「おっ! スクレーン砂漠のド真ん中? むせ返るような暑さで有名だし、人が攻めてこないって意味ではアリかも」
冒険者や討伐隊が好むのは、大きな街の近くにあって、滅ぼすと民に称えられるダンジョンだからね。
「なにより安い! よほど不人気なのかなぁ? 都市の近くや保養地の選択権が100万ポイント以上するのに、ココはたった3000ポイントって……」
砂漠にダンジョンを建てたがるタイプの、同級生もいないから……水と食料の問題さえ解決すれば、安全な住まいをゲットできるだろう。
第一候補の場所は決まったので、ギフト一覧の中から、水と食料に繋がりそうなものを探す。
手持ちポイントに余裕があれば、食料はもとよりベッドやソファー、贅沢品まで購入できるんだけど……小遣いスタートの僕には関係ない話だからね。
節約できるところは節約し、ポイントが余ったらダンジョンの強化に使うのだ!
「ん? 自販機作製ギフト? 水・食料などを、ダンジョンポイントまたは現金で買える、自動販売機を創り出す能力……ねぇ」
聞いたことないギフトだし、交換レートによっては無駄になるかもしれないが、僕のニーズとは合っている。
「獲得に必要なポイントは50000。安くないけど、珍しいギフトの割にはお得なレートだ」
僕は”自動販売機”という物を知らないので、実際に使ってみないと評価できないが……賭ける可能性はあると思うから、コレにしよう!
「耐えてさえいれば、2年半後には”エリートの証”が手に入った、先程までとは状況がちがうからね」
こういう場面でリスクを取れない人間に、魔王としての将来はない!
「そういえば、”ギフトの発現は性格・才能・血筋次第”だと、謎の声が言っていたな」
僕自身に思い当たる節がないのだから、父さんが言っていたことは案外本当で……僕には、異世界から来た勇者の血が混ざっているのかもしれないな。
「あと決められるのは初期装備。残りポイントは134462か……。念のため10万ポイントは残したいから、必要最低限の物だけ揃えよう」
え〜っと、交換レートの一覧は……
水:10000ポイント/L
白パン:3500ポイント/個
黒パン:700ポイント/個
干し肉:3000ポイント/枚
タオル:100ポイント/枚
木の剣:15000ポイント/本
木の棒:10000ポイント/本
木の盾:30000ポイント/個
マナポーション:5000ポイント/個
「う〜ん。最下級の装備でも痛い出費なのは、いつもの事だから無視するとして……水と食料品のレートがやけに高いな。市場の10倍以上する」
試しに、ダンジョンの位置を街の近くに変えると、交換レートがガクンと下がった。
どういう仕組みかは分からないけど、その場所で取引される場合の市場価格が反映されているのだと思う。
「だけど裏を返すと、スクレーン砂漠ではそれだけ水と食料を得にくい……とも言える。この条件で、自販機作製ギフトが狙いどおり機能すれば……」
他者から攻められる事のない、”家賃タダの自宅”を手に入れられるかもしれない。
「見直し完了! 残り時間5分、残りポイント約10万。これで決定だ!」
メグミ(16)
種族:魔人族(魔王?)
職業:ダンジョンマスター(仮)
HP:298/305
MP:10687/10687
スキル:回復魔法B・物理耐性C・精神耐性D
ギフト:自販機作製
その他:称号 (サンドバッグ)
ダンジョン名:
属性:土
順位:30/30(311/311)
保有ポイント:100862
所有物一覧
水:1L
黒パン:5個
タオル:1枚
木の剣:1本
マナポーション:1個
最終確認をしてから決定ボタンを押し、一息つくと……
『承認完了。これより其方を正式な魔王として、スクレーン砂漠へ送る。ミッションをクリアし、己がダンジョンを強化せよ』
という謎の声が聞こえ……何もなかった空間に、ボール大の碧玉と一つのドアが出現した。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)