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25話 元皇太子vs新米潰し




 魔王襲来の知らせを受けた俺は、下ろしていたズボンを上げ、最新鋭の監視用モニターを確認した。


 不本意な事情で猛りを鎮められ、イライラするが……ここで上位の魔王を殺せれば、俺とダンジョンの名声も高まるからだ。



「はぁ? この冴えないオッサンが、俺より上位なのか? ステータスは……チッ! 鑑定阻害系のアイテムが使われているな」


 だが、才気のカケラもない中年男に攻略されるほど、俺が創りあげた”皇帝のダンジョン”は甘くない。



 見たところ、連れてきた配下もわずかに10体。


 次々と襲いくるモンスター、歩くたびに体力を削られる灼熱の大地に、奴等が骸を晒すのは時間の問題だ……って、おい!?



『シルフィー。頼んだぞ』


『はい。マスター♪』



 このクソオヤジ……他のモンスター共々、飛行タイプの背に乗り……大地の熱をかわしやがった!


 それにコイツ等……空を飛んでいるからか、移動スピードが異常に早い。



「くそっ! 浅い階層に配置したモンスターじゃ、雑魚すぎて奴等を囲めねぇ。もし追いつけても、上空から一方的に攻撃されちまう」


 不本意だが仕方ない。


 10階層まではトラップで敵の進路を妨害し、そこを突破されたら本格的に迎撃を行おう!






 3日はかかると思っていたのに、あろうことか奴等……5時間で10階層を突破しやがった!


 中ボスとして置いていた、Bランクモンスター<不死鳥>も瞬殺。



 それに……


「あぁっ、イライラする! コイツ等、なぜトラップに引っかからないんだ!? 俺は最善タイミングで、手動トラップを当てているはずなのに!」



 魔法で生み出す水を飲みながら、スルスルと空中を移動する奴等のスピードは、20階層を過ぎても落ちることがない。


 巨額のポイントを投じ、中ボスに指定していたAランクモンスター<ワイバーン>まで、戦闘開始5分で倒されてしまった。



「はぁ……はぁ…………。こうなったら仕方ない。大量のポイントを消費するが、高ランクモンスターをごっそりと買い……数で奴等を押しつぶす!」


 オッサン魔王が連れているモンスターは、たったの10体。



 しかも……その内1体は、背中に仲間を乗せているから戦えないはず。


 手痛い出費だが、高ランクモンスターでぐるりと取り囲めば、奴等を滅ぼすことができるだろう。



<−−− 改造阻害ギフト持ちの侵入者がいるため、新たなモンスターの購入はできません −−−>


「はぁ!? どういう事だよ! まさか……」



<−−− 改造阻害ギフト持ちの侵入者がいるため、新たなダンジョン機能の追加はできません −−−>


<−−− 改造阻害ギフト持ちの侵入者がいるため、新たなフロアの追加はできません −−−>



 まるで狙いすましたかのような、卑怯極まりないギフト。


「もしかしてアイツ、”魔王潰し”に特化している……? いや、まさかな……。そんな不条理があってたまるか……!」



 つい弱気になってしまった俺は、配下のモンスターへ敵を滅ぼすよう命令し……


 皇帝としての覇気を取り戻すため、コアルームの隣に設置した居住スペースで、白パンとステーキを食べることにした。






「えっ? いや、そんなバカな……。そんな筈はない! ズルだ。コイツ等は卑怯な手を使っている!」


 なぜ俺が、食事と睡眠で覇気を取り戻していた9時間の間に、ボス部屋の前まで来ているのだ!?



「だ、大丈夫……。さっ、さすがに……ボスモンスターは倒せないはず……」


 この俺が、”皇帝のダンジョン”を守るに相応しいと判断した、Sランクモンスター<レッドドラゴン>だぞ!



 ボス部屋補正も加わるんだ。


 あんなちっぽけな奴等に、傷一つ付けられるはずが……



「へっ? 変体……?」


 今まで魔王に抱きかかえられていた、特にヘボそうな50cm程の小龍が、突如として光を放ち、レッドドラゴンよりも大きくなった。



『くくっ。無能な魔王、SSランクモンスターの水龍は初めて見るか? 今すぐソッチヘ行くから、首を洗って待ってろよ』


 奴の言葉を理解している間に、巨大な水龍は俺のレッドドラゴンに巻きつき、アッサリと殺してしまった。



「なっ、なぜだ……? なぜ俺が、こんな目に遭わなきゃならない……」


 まだ転生して100日の魔王を、力で押しつぶすなんて卑怯だろ?






 卑怯な手段でレッドドラゴンを倒した敵は、ボス部屋を通過し……ノックすらせずに、コアルームへ押し入ってきた。


 逃げねばならぬと分かっているのに、腰が抜けてしまい動けない。



『おぃおぃ、第49位のルーキー様。”小”はともかく”大”まで漏らすんじゃねぇよ。汚ねぇな〜』


 この野郎……!!



『まぁいいや。それじゃあ、お楽しみの”躾タイム”といきますかね♪』


 嫌だ、おっ……俺の命は…………。



ハイドン(248)

種族:魔人族(魔王)

職業:ダンジョンマスター

HP:40692/42875

MP:6852/13528

スキル:剣術B・格闘術B・火魔法E・水魔法A・風魔法C・土魔法F・回復魔法E・物理耐性B・精神耐性C・偽装B

ギフト:改造阻害

その他:称号 (新米狩り)

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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